No.12 アイラ:温かいシリコンのAカップ
「一肆はそのまま、私の中でまあるく漂っていればいいの……。またいつでも呼んで、一緒に浮かびましょうね……」
ティアの水上ヘッドスパで完全に癒やされた俺は、彼女が光の粒子となって消える前の、そんな呆れと母性に満ちた別れの言葉の余韻に浸りながら、古代の魔法端末が眠るという遺跡の深部へと足を踏み入れた。
しかし、知識の宝庫であるはずの遺跡は、理のバグによって引き起こされた深刻なシステムエラーに見舞われていた。
エラー・ウィンドウズ。
空間を埋め尽くすように、無数の鋭角なエラー画面とギザギザのホログラムがけたたましい警告音と共に空中に現れ、俺の視界と脳を無慈悲にハッキングしようと迫ってきたのだ。
俺の脳内のデータ分析プロセスが、絶え間ない通知とタスクの山による情報過多の暴走を警告する。
前世で俺の精神をすり減らした、深夜に鳴り止まないアラート音や、処理能力を超えて次々と叩きつけられる鋭利な業務メールの嵐というトラウマそのものだった。
あんな尖ったノイズと情報の山に、俺の脳を再びパンクさせられてたまるか。
俺は空間を埋め尽くす鋭利なエラーの群れに向かって、魂の呪文を叫んだ。
「出でよっ、ぱいぱいっ! ナンバー12!」
ぼよよぉん!
遺跡の冷たい空気を震わせ、次元の弾力境界が突破される音が響いた。
デジタルの光の中から静かに現れたのは、銀色のツインテールを揺らし、タイトで無駄のない秘書風の服を着た自動人形の少女だった。
関節部分にわずかに機械のラインが見える彼女の胸元は、無駄な質量を完全に削ぎ落とした、高効率で平滑な装甲となっている。
Aカップ。
俺の脳内データが瞬時に弾き出す。
過剰なふくらみはないが、だからこそダイレクトに伝わる、人肌に限りなく近い温かいシリコンの奇跡を秘めた双丘だ。
「お呼びと推測します。ナンバー12、記録係のアイラです。あのような不快なノイズとトゲトゲの画面、私がまあるく最適化いたしますね」
アイラは淡々とした声で自ら名乗りを上げ、精神を切り裂こうとするギザギザのホログラムの前に静かに立ち塞がった。
空間全体から鋭利なエラーデータが襲いかかってくる中、俺はすかさずスキルを発動する。
「万物円満!」
俺の『π=314』の力が、アイラの丸いエネルギーを百倍に増幅させる。
「球体圧縮プログラム、開始します」
アイラが両手をかざすと、彼女のAカップの奥に秘められたコアから、百倍に増幅された丸く温かい最適化の波紋が空間全体に広がった。
波紋に触れた鋭利なエラーウィンドウたちは、ギザギザの角を強制的に削り取られながら瞬時にデフラグされ、次々と無害で温かく発光する丸いデータボールへと圧縮変換されていく。
戦闘は一瞬で、そしてシステムは完全に正常化し、光るアロマキャンドルのような球体が漂うまあるく平和な空間へと収まったのだ。
「システムのエラー解消を確認しました。……ですが、一肆様の精神の摩耗とストレス値の上昇を検知しました。直ちにシステム・スリープモードへ移行します」
アイラは空中に漂う大量の丸いデータボールを間接照明のように周囲に配置し、遺跡の床にふかふかの光のマットを展開した。
俺が促されるままにうつ伏せで寝転がると、彼女は俺の背中に跨るように乗り、その平滑な胸部を俺の肩甲骨の間にぴったりと押し当ててきた。
システム・スリープモード。
それはただの添い寝ではない、温かいアロマキャンドルのような光の空間で、Aカップのフラットな胸部を密着させて規則的な心音を聞かせながら、精密機械のような正確な指圧マッサージで全身の力みを強制的にシャットダウンさせる特技だ。
「あのギザギザのエラー画面を見たら……前世の絶え間ない通知や、処理しきれないタスクの山に押し潰されていた記憶が蘇って、脳がショートしそうだったんだ」
俺がマットに顔を埋めながら息を吐き出すと、アイラの冷たい指先が俺の首筋から肩にかけてのツボを、寸分の狂いもない正確さで押し始めた。
「一肆様に過負荷をかける元上司の思考ルーチンは、完全にマルウェア、すなわち悪性ウイルスと認定します」
アイラの感情の起伏の少ない声が、静かな遺跡に心地よく響く。
「あのような非効率で有害な通知を送りつける者たちのデータなど、一肆様の貴重な記憶領域には不要です。私がファイアウォールを構築し、永久に遮断します」
「アイラ……。そっか、あいつらの無茶振りは、ただのウイルスだったんだな……」
「肯定します。ですから、一肆様はもう何も処理しなくてよいのです。エラーはすべて私が弾きますので、どうか思考を停止してください」
背中からはアイラのAカップが隙間なく密着し、質量がないからこそ、装甲のすぐ奥にある温かいシリコンの感触と、トクトクという規則正しく力強いコアの鼓動がダイレクトに伝わってくる。
間接照明のように光る丸いデータボールの温かい色合いと、過去のトラウマをウイルスだと論理的に切り捨ててくれた彼女の言葉が、俺の脳にこびりついていたタスクの呪縛を完全に初期化してくれた。
「アイラの指圧と、この規則的な鼓動……それに、背中の温かさが心地よすぎて、もう情報なんて一つも頭に入ってこない……」
「スリープモードへの移行を確認。一肆様はそのまま、私の鼓動に合わせてまあるくおやすみなさいませ……」
「やはり、世界は丸いほうがいい……」
感情の少ない自動人形が与えてくれる完璧な論理的遮断と、温かいAカップのフラットな密着感に完全に自我を溶かされながら、俺は賢者タイム気味に平和を噛み締めていた。











