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十龍城砦  作者: 月ーん
第二章
37/37

挿話 弍

「くっ...」

「じっとしてるんです。治療を受ける気がないんですか」

「随分と...手厳しいじゃない」


暗い密室、した鉄柵で覆われた檻の中。

うつ伏せで呻く安藤の脇腹には穴が開き、とろとろと血が流れ出ていた。

「肺まで届いてないのは流石というかなんというか。」

五十嵐はピンセットを掴む。

転がっていた酒缶をひっくり返し、中身をその先にかけた。

「伊達に管理局員やってなかっただけありますね」

「それは...褒め言葉かしら?」

「喋らない。」

額に脂汗を滲ませる安藤を黙らせ、五十嵐はかけていた眼鏡を外す。

レンズを叩き割れば、暗闇に散る透明な破片。

その中から一番鋭いものを選んで手に取れば、指先の柔らかな皮膚に赤い線が走る。


「そこまでしなくても」

「喋るなと言ったはずですが」

破片を鉄骨に擦り付ければ、火花が小さく散る。

赤い花はピンセットに触れ、青白い炎をあげた。

「気休め程度の消毒です。いいですね?」


「ぁぐっ...」

噛み殺した悲鳴、こもった沈黙。


──カラン

軽やかな金属音とともに、丸い鉄塊が落ちる。


数十分前、泡を吹いて死んだ浮浪者の女。

女が吐いた血に気を取られていれば、背後を取られていた。

引き金が引かれるのと、安藤が盾になるのは同時だった。

彼女は既の所(すんでのところ)五十嵐を庇い、撃たれた。


「取れました。」

「そぅ...」


痛みに消耗したのか、安藤は消え入るような声を出す。


「撃たれたらその場で動かずじっとしておく。まさか撃ち返す馬鹿がいるとは。

傷が広がる上に流血量も増える、常識ですがね。」

己の青いマントを裂き、傷口を抑えながら五十嵐は言う。

「しょうがないでしょう?あそこで銃を撃ち落とさないと、貴方まで撃たれてたかもしれない」

「あのとき盾になるべきは貴女じゃありませんでした。肉体担当が負傷してどうするんです?

対して僕は自分で治療できますし、負傷しようがしまいが戦力にはならな──」


そこまで言って、五十嵐は口を閉じた。

聞こえてきたのは、こちらに近づく何人かの足音。

音の重なりから推測するに、無傷が二人、負傷者が二人。

紫に変色してきた青布を抑える腕に、さらに力が籠る。

無傷の方はおそらく、自分達をとらえた組織の人間。

そして負傷者は、管理局か、灯徽会(仲間)か。


ギィ


重い柵扉が軋む音。

薄く揺らぐ光が、鉄格子の隙間に差し込んだ。


「入れ!」


ピントの合わない視界のなか、

荒い声とともに投げ込まれてくる人影二つ。

同時、濃くなる苦い匂いに、

五十嵐は眉を顰めた。

灯徽会

一般衆による自警団でありながら、民衆の人気・信頼を集める。

青いマントが目印。

平和主義。殺さずの理念。


安藤麻里 39歳 171cm 人間 灯徴会所属 中梁層出身

緋褪色の長いストレートの髪 吊り目 筋肉のついた体

元均衡管理局所属


五十嵐春人 26歳 170cm 人間 灯徴会所属 閑黄朝出身

黒髪 眼鏡 筋肉はあるが痩せ型 喘息持ち

少し嫌味な性格。

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