強化型タロンもきっと一撃だろうさ
第九十九章~スプリングフィールドM1903の巻
僕とミサキ氏、乾{いぬい}氏は揃って研究所地下一階、装備課へと向かった。
「なんだい、また鳩羽の嬢ちゃんか。どうした? もう弾切れってか?」
「それがさぁ、まさしくその通りなのよ」
鉄格子越しに会話する様子は、まるで収監中の犯罪者との面会のようだった。
「それで? 嬢ちゃんはいいとして乾よ、お前さんまでどうした?」
「よう、堀田の爺さん。蘭子{らんこ}がうるさくてな、三十八口径用のローダー、あるかい?」
「そりゃあ勿論あるが、お前さん、まだニューナンブか? そろそろオートに乗り換えたらどうだ? 今時はSPだってP230辺りだぞ?」
「引き金引いて弾が出れば、俺は何でもいいんだよ」
「しかしなあ、ローダーはあるが五発なら使うまでもないだろうに」
「そりゃあこっちの科白だよ、爺さん。ともかく出してくれ」
堀田氏は、ああ、と言い残して奥へと消える。
「乾さんてば、きちんとナンブのメンテやってる? 撃ちっぱなしじゃあバレルが汚れるよ?」
「暴発しない程度にはやってるさ。しかしここは灰皿が無くて不便だな」
装備課、火薬の塊のような場所で無茶を言う乾氏。もう暫く待つと堀田氏があれこれ抱えて戻って来た。
「ほら、こっちが嬢ちゃんの弾薬二ケース。こっちが乾用のスピードローダー二つだ。どうだ、足りそうか?」
「あたしのほうはこれで数日は平気。乾さんは?」
「いきなり三倍かよ。全く物騒な話だな。爺さん、サインするから受領書をよこしてくれ」
鉄格子の下、小さな開きから書類が出てきて、それに乾氏がサインをする。ミサキ氏の分と合わせて二通。
「じゃあ俺らは行くが、堀田の爺さんよ、たまには日なたに出てこいよな。こんなところに籠ってたらカビでも生えちまうぞ?」
「言われんでもそうしとるわい、小僧が」
「んじゃ、堀田さん、また後日世話になるよ……って忘れてた! あのさ、いきなりで悪いんだけど、こいつに合うスナイパーライフルとかあったりするかな?」
穏便に終わると油断していたら、こうだ。
「ん? そっちのやせっぽちの兄ちゃんかい? ちなみに射撃経験はどのくらい?」
ゲーム内なら軽く数百時間です、とは言わず、ありません、と素直に返す。
「だったら、スナイパーライフルなんて大袈裟なもんより、これなんかどうだい」
鉄格子の中にあるラックから一丁のライフルを取り出して、こちらに見せる堀田氏。
「スプリングフィールドM1903。旧式だがボルトアクションで、扱いやすさならこれがお勧めだ。弾丸は30-06弾をベースに儀礼処置してある。噂になってる強化型タロンもきっと一撃だろうさ。余程不器用でなければまず当たるだろう」
「おい、爺さん。そいつはあんたのコレクションだろうに、いいのかい?」
「銃は飾り物じゃあねえんだ、使われてこそってな。リボルバーだろうとライフルだろうと同じさ。ひとまず弾丸を一ケース預けておくから、無くなったら俺んところに来い。おっと、飯を食いそこなっちまったな。三人とも無事でな」
ライフルケースと一緒に渡されたそれはなかなかの重量だった。きっとエレキギターくらいあるだろう、と。
それにしてもだ。いきなりライフルを渡されてかなり困惑する。ボルトアクションのライフルは映画で観たことはあるが、所詮はその程度の知識しかない。
タロン以前に誰かに当たらないよう、ひたすら祈る僕だった。
というか、使わずで済むことを強く願っていた。




