二十二時にはチェリー・ビーンズに
第八十四章~アクロスの喫茶店、トワイライトに集合の巻
「さて諸君、そろそろお開きの時間やで」
キャメルを咥えてパソコンに向かったまま、露草氏が言う。スマホを見ると十八時前だった。
「そうだぜ、学生諸君」
「あんたもや、美咲。それに僕と少尉もな?」
「えー!」
とはアヤちゃんから。
「すまんけどや、今日中にやらなあかん仕事があるんや。せやからみんな帰りい」
「露草よ、呑みはどうするのだ?」
「それはまた別の話。当然行くで? ちょいと遅うなるけどや、真実{まなみ}連れて行くわ」
「露草先生、またお酒ですか? そのうち肝臓痛めますよ?」
久作くんが言うが、露草氏は、
「バドなんぞで壊れるほどやわい肝臓やあらへんて。そういうんは真実に言うてえや。あいつウィスキーばっかやからな」
「天海真実{あまみ・まなみ}、学園理事が確かそんな名前だったな」
大して興味もない、と言う調子で須賀恭介{すが・きょうすけ}くんが付け足した。
「そうなのか? 全く知らなかったけどよ」
「方城、お前は知っていないと駄目だぞ? バスケ部に特別予算が先月だかに出ただろう? あれは天海理事の尽力らしいからな」
「ああ! あれか。キャプテンがそんなこと言ってたな、そういや。バッシュとユニフォームを新調出来たとか何とか」
なるほど、と手を打つ方城護{ほうじょう・まもる}くん。
天海真実氏とはショットバーのチェリー・ビーンズで謁見しただけで、会話らしい会話はなかった筈だ。少なくとも記憶にはない。単にお酒に強い、清楚な美人だ、とだけ。
「ともかくだ、もういい時間だし、これ以上露草先生を困らせるのも気が引ける。全員撤退と行こう」
須賀くんはどうやら人を動かす術に長けているようで、皆、ミサキ氏も含めて、それに従った。例外はアヤちゃんと……大道少尉。
「あたしまだ少尉から聞きたい話が山ほどあるぞ?」
「吾輩、金はあるがアホの鳩羽が消えるとちと厳しいのう」
だったら、と提案してきたのは久作くんだった。
「アクロスの喫茶店、トワイライトに集合ってのはどうだろう?」
アクロスとは桜桃{おうとう}学園を下った駅前ロータリーにある商店街アーケードの名称である。
「きっとリカさんも来れるだろうし、なあ、須賀?」
「リカくん云々はともかくとして、俺に異存はないが、皆はどうする?」
「あたしらはそれでいーよ、なあレーコ?」
「いーよ!」
アヤちゃんとレイコちゃんの後を継いだのはミサキ氏だった。
「ならあたしらも行くか、な? バカ少尉? 当然あんたの奢りでな」
「ふん! 今の吾輩に喫茶店なぞ朝飯前の夕食後である!」
「二十二時にはチェリー・ビーンズに集合やから、忘れんといてえや?」
了解、とミサキ氏は返して、腰かけていたベッドから立ち上がる。
「いざ! 喫茶店へー!」
「おー!」
一人、レイコちゃんだけが乗ってきた。




