堀田氏
第七十四章~武器・装備受領証明証の巻
鳳{おおとり}研究所の装備課は、地下一階の射撃レンジの傍にあった。
鉄格子越しに気難しそうな初老が新聞を読んでいた。
「おっす! 堀田{ほった}さん、ご存命だね」
「んん? ほう、誰かと思えば鳩羽の嬢ちゃんか。久しぶりじゃねーか。どうした? ベッセルを焼き付かせたか?」
くくく、と堀田氏は笑う。見た限りは用務員といった風だが、鉄格子から物騒なものが幾つも見え隠れしている。
「まさか! ダリルもベッセルもすこぶる健康よ。蘭子{らんこ}ちゃんか乾{いぬい}さんから聞いてないかな? リボルバーの弾丸を受け取りに来たんだけど?」
「ああ、乾の小僧がそんなことを言っていたな。どれ、待ってな」
堀田氏にかかるとあの屈強な乾氏も小僧呼ばわりであった。少し待つと堀田氏が奥から戻ってきた。
「こっちがダリル用で、こっちがベッセル用。どっちも儀礼処置済みだ」
「て、一箱五十発もいらないって! ダリル二発にベッセル一発だぜ? 堀田さん」
「バラ売りは在庫管理が面倒なんだ、いいから箱で持っていけ。なんだったらクイックローダーでも使うかい?」
「んー、ローダーて案外とかさばるから、便利だけど遠慮しとくよ。じゃあ弾丸を二箱、確かに受け取ったから。サインとかいるんだっけ?」
「ああ、こいつだ」
堀田氏が鉄格子の小さな受け渡し口から書類を出す。武器・装備受領証明証とかナントカ書いてあった。
ミサキ氏がサインをしていると、大道少尉が横から割り込んできた。
「堀田老よ、吾輩に合うナックルダスターはなかろうか? 最近タロンと続けざまで遭遇したが故、少々傷がついておってな」
「あるにはあるが、少尉、あんたは今の装備を気に入っているんだろう? 愛着てのは大事だぞ? もう少し使って割れでもしたら顔出しな。在庫はいつでもあるからな、くくく」
ミサキ氏がサインを終え、二箱の弾丸、割と重たいそれは僕に渡された。
装備を詰めるリュックにそれを入れ、ここでの用事は終了となった。
「んじゃ、堀田さん。あたしらはもう行くよ。また顔出すから、達者でね」
「お前さんもタロンに喰われるなよ、くくく」
「さらばである、堀田老よ!」
僕も何となく会釈などしてみる。
堀田氏とは結局一言も喋らなかったが、第一印象は偏屈、しかし話すと割合とフランク、そんなイメージだった。




