実に三か月ぶりに見たミサキ氏のガンさばき
第六十六章~儀礼処置済みの純銀弾頭、五十口径の巻
僕のペプシと大道少尉のモーニングセットはすぐに運ばれてきたが、ミサキ氏のシュゼット風クレープいちごソース、どんなものかは知らないが、それはなかなか出てこなかった。
「まあ、ちょいと手間のかかるメニューだからね。お先にどうぞー」
ミサキ氏は氷をがりがりと齧っていた。と、先ほどの女性店員がやってきた。トレイ片手に。
なんだろう、と思っていたら、
「シャァァ!」
奇声を発していきなりトレイで殴りかかってきた。驚いて硬直する僕。対してミサキ氏はトレイをかわして、すっくと立ちあがった。
「クレープの代わりに「これ」かよ。おい!」
言われた僕ははっとして役割を開始する。
「皆さん、下がってください!」
幸い客は一組二人だけだったので誘導は簡単だった。
と、スマホに着信。鳳蘭子{おおとり・らんこ}氏である。
「タロンアラートが――」
「分かってます! 今、美咲さんが対処して――」
ぶん、と風を切る音は女性店員の持つトレイ、金属製のそれがミサキ氏のおでこをかすめる音だった。
「アホの鳩羽よ!」
「手出し無用! さあ、出てこいよぅ!」
左ホルスターからリボルバー、ダリルを抜いて、ステップで距離を取る。
「まずは! 一撃ぃぃ!」
ゴン! 大きなマズルフラッシュの直後、女性店員は吹き飛んだ。
別の店員から悲鳴だかが聞こえるが、その後の光景を見ると絶句した。
吹き飛んだ女性店員は気絶し、更に後方に……タロンがいたからである。
ミサキ氏はダリル・リボルバーを収め、右のベッセルを抜き放つ。
「へいへい! カモンカモーン……それっ!」
ゴッ! と再びの轟音でタロンは壁に叩きつけられ、沈黙した。
「見たか、バカ少尉! 闘いはこうスマートにやるもんだぜ? ひひ」
ベッセル・リボルバーをホルスターに収めつつ、モーニングセットと格闘中の大道少尉に言う。
「美咲さん! タロン、まだ動いてますよ!」
僕は慌てるが、ミサキ氏は涼しい顔で返す。
「そりゃ、少しくらい動くさ。体のど真ん中に儀礼処置済みの純銀弾頭、五十口径をくらって、まともなタロンが無事で済むかってんだ。ほら?」
見ると、タロンは四肢から灰化を始めていた。
実に三か月ぶりに見たミサキ氏のガンさばきは、微塵も衰えていなかった。
ただただ関心する僕であった。




