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竜の娘  作者: 飛鳥弥生
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シュゼット風クレープいちごソース

第六十五章~また遅刻したら金山ハゲ教頭に怒られてまうわの巻


「ほな、そろそろうちはお仕事やから、片づけるでぇ」

 露草氏が言い、僕はスマホを見た。午前七時半、まともな人ならば活動開始の時間である。

「えー、葵{あおい}ちゃん! もうちょい遊ぼうぜー!」

「無茶言うなや。また遅刻したら金山{かなやま}ハゲ教頭に怒られてまうわ。これでももうギリギリなんやから、さ、トースト食べてしもうたらお開きやで」

 言いいつつ露草氏は既にフルフェイスを片手のライダースジャケット姿だった。今日は上だけジャケットで下はジーンズだった。

「んぐっ、もごっ! んー、……ぷはぁ! 良し! 朝食終了である! では露草よ、世話になったな! 行くぞ! 少年とアホの鳩羽よ!」

 未だぶーぶー言うミサキ氏を強引に連れて僕らは露草邸の玄関を開いた。

「暑っ! なんだこの暑さ! ヤバいって絶対に!」

「うちかてフルフェイスや、我慢せえ。今日もまたどっかで涼むんやろ? そこまでの辛抱や」

 しかし僕とミサキ氏の手持ちは合計しても二千円弱といったところ。大道少尉もタロン討伐の報酬が振り込まれるまでは似たようなもの。

 一人当たり千円くらいで涼める場所というと、安い喫茶店かコンビニのイートスペースか、それくらいだろう。

 宛てもなくサンバーバンに乗り込む僕ら三人の前をオレンジ色のカフェレーサー、露草氏のラベルダSFCがすっ飛んでいった。

 車内は直射日光でじわじわと熱くなって行く。とりあえず風を入れようと発進させるが、途中の自販機で止まる。水分補給しないと洒落にならない気温だったので。

 そして懐具合に見合うものが出そうな店、毎度の喫茶店・ビーンズへと車を向ける。

 露草邸からはやや距離があり、また朝の渋滞に飲まれたこともあって、五十分ほどかかってしまった。ビーンズの駐車場に到着した頃にはミサキ氏は完全に溶けてしまっていた。後部座席の大道少尉は? と見ると、寝ていた。いや、本人曰く瞑想だったか。ともかく静かだった。

「え、エアコン~」

 それではまるでゾンビだ、僕は思った。きっちりピンクのカーディガンを腰に巻いている。あの前村歩{まえむら・あゆむ}巡査部長から借りているものだ。

 まだ朝の八時だったがビーンズは営業していた。きっと通勤前のOLさんなどがメインなのだろう。

 僕らが席に着くと早速店員がオーダーを取りに来た。

「僕はペプシで」

「吾輩は、待て、財布を……ふおっ! モーニングセットを貰おう」

「あたしはこれにする」

「ペプシとモーニングセット、シュゼット風クレープいちごソースですね。少々お待ちください」

 何だか一人だけ予算と違うものを注文している気がしたので、いちおう尋ねる。

「美咲さん、シュゼットナントカて何です? 会計、平気なんですよね?」

「いやー、何だかいちご食べたくなってさ、思わず注文しちゃったよ、てへぺろ」

 これはもう確信犯だな、僕ら二人がミサキ氏の分を支払う羽目になるんだな、と項垂{うなだ}れた。

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