チーズと生ハム
第六十一章~オールド・グランダッドの巻
露草氏はいつの間にかスウェットの上下に着替えて、バドワイザー片手に僕のやっているゲーム画面を眺めていた。
大道少尉はオールド・グランダッドとか言うウィスキーとまだ格闘しており、時折あのむせる咳払いが聞こえていた。
「ふーん、器用なもんやな。ライフル撃ちながら壁作ったり、飛んだり跳ねたりしたかと思えば車乗るとか。ダンナもやけど、あんたも凄いやん。うちな、これちょっとやったんやけど全然やったわ。何しとるんか解らんうちに後ろから撃たれて終いやったわ」
バド片手の露草氏の髪は少し湿っていた。いつの間にかシャワーを浴びたらしい。僕はと言えば、ゲームの腕を褒められて、実は簡単なステージなのだが、いい気分で出されたオレンジジュースをあおっていた。
やはり人間、一つくらい取柄があったほうがいいな、とか思ったり。たかがゲームですけどね。
「げふっ! う、旨いのだが、露草よ。何かつまみでもないだろうか? いや、決してこのウィスキーが不味い訳ではなくだな……」
「ええよ。確か冷蔵庫にあった筈やから見てくるわ」
絶対に味が合わなかったのだろう、そう確信しつつ、三人目、キル。ヘッドショットが綺麗に決まった。
「ほれ、チーズと生ハム。合うかどうか知らんけど、つまみにはなるやろ」
と、大道少尉はチーズの一つと生ハムを一枚口に詰め込む。
「……ふはは! 復活の吾輩! どうれ、オールド・グランダッド、再び勝負! ……おぇぇー!」
完全に負けているではないか。もうどう突っ込むか考えるのも面倒なので、オレンジジュースを片手にゲームを続ける。
露草氏は露草氏で完全リラックスモード。お酒には強いようでバドワイザー三缶程度は水のように飲み干して、四缶目を空けつつゲーム画面を眺めていた。
寝室に放り込んだ筈のミサキ氏は起きるどころか益々深い眠りに入っているようで、寝言の一つも聞こえない。
時刻は、スマホを見るともう二十二時を回っていた。
さて、どうしたものかと思案していると露草氏から思わぬ提案があった。
「なんやったら泊まっていくか? 美咲、どうせ起きんのやろ? せやったらみんなで泊まって、明日目覚めてから、どっか行ったらいいんちゃう?」
予想外の提案に僕は全力で頷く。
「良いのか! 露草おぇぇぇ!」
大道少尉の体調はともかく、僕らは露草邸で一泊することにした。
聞き飽きたでしょうけど、露草氏はとってもいい人です。




