げふげふげふ!
第四十章~アメリカン・エキスプレスの巻
大道少尉の元に運ばれてきたのは、本当に通常の三倍はあろうかというカツカレーだった。僕もミサキ氏も啞然としてしまった。
「ふはは! 鉄の胃袋を持つ吾輩には、これくらいが具合良いのである!」
スプーンで豪快に口に放り込み、そして咳き込む。
「げふげふげふ! ごげばがずいでばだいが!」
「うるさい上に何言ってるのか分からん。とりあえず水飲めよ」
ほれ、とミサキ氏が差し出したコップを受け取り、大道少尉はそれをゴクリと一口。
「ふぅぅぅぅー。予想外の熱さであったが、もう安心せよ。必殺のぉ! ナァァイフ・エンド・フォォォーク!」
「だからぁ、うるさいんだってば」
とりあえず大道少尉は今日も元気らしい。夏バテもしていないらしく、普段通りだった。
僕はソフトドリンクとフルーツ、ミサキ氏はチョコパフェ、大道少尉はカツカレー三倍盛りをもくもくと、或いはがつがつと食べ進めていた。
空調の効いた快適環境の上、まだ午前ということもあり客もまばらだった。殆ど貸し切り状態である。
すると、口を開いたのはカツカレーをほぼ平らげていた大道少尉だった。
「少年。ちと聞くが、このカツカレー三倍盛り。値段もやはり三倍なのであろうか?」
それはそうだろう、と僕は頷く。
「九百円の三倍……二千七百円! ふおっ! 待て! 待つのだ吾輩!」
慌てて財布を尻ポケットから出す大道少尉。これは……。
「店員よ!」
手を挙げずともその大声で伝わるだろうに、すぐに店員がやってきた。
「ここの会計だが、アメリカン・エキスプレスは使えるのであろうか?」
アメックス? 僕は驚いた。そんなものを持っているのならさっさとエアコンを設置すれば良いものを、と。
「はい。ご利用になれますよ」
店員は笑顔で応え、大道少尉もまたぎこちない笑顔で返した。
「ならば良い。カツカレー三倍盛り、お替りを頂こうか」
「ぶっ! まだ食うのかよっ!」
チョコパフェを吹き出しつつ、ミサキ氏が突っ込む。
その気持ち、良く分かります。




