第85話 10神王
「10神王」は、天魔王ルル・ルーンが最も信頼する、最強の側近たちの総称である。彼らはそれぞれ、大モンスター連合国に住むさまざまな種族の王という位置づけであり、
ドラゴン族を統べる「竜王ファフニール」
ゴブリンやオーガ、鬼人族を統べる「鬼王ミレナ」
獣系のモンスターや獣人を統べる「獣王ギルガメオン」
エルフや精霊を統べる「精霊王ナイア」
ドワーフを統べる「鉄王ゴードン」
「大モンスター連合国」の海に住む全ての生物を統べる「海王ネレス」
虫を統べる「蠅王バール」
天使族を統べる「熾天王セルフィム」
ゴーレム族を統べる「石王バーバラ」
そして、「大モンスター連合国」における最高位の種族である魔人族を統べる「魔人王ベリアル」
彼ら10人によって構成され、そのわずかな人数に、広大にもほどがある「大モンスター連合国」のほとんどすべてが支配されている。そして、そのような圧倒的かつ絶対的な支配が可能になってしまうほどに、彼らは強かった。それこそ、まさに「異次元」と言い切ってしまってもいいほどに。
「ロディニア帝国」は、強力なチートスキルを得た幹部がその力でもって各地を支配するという体制であり、そのチートスキルを得た者たちはいずれも人知を超えた強者である。
彼らの中には、拳の一振りだけで複数の宇宙を粉砕できる者、ブラックホールさえも押しつぶせるほどの重力を操れる者、人の理解の範疇では数えきれないほどの範囲を焼き尽くす魔法を扱う者など、まさに神をも超えた力を持つ者も少なくない。
しかしながらそんな彼らの力も、転移者が直接支配する「12世界」にいる「転移者の側近」クラスと比べると「無」に等しい。
かつては転移者とともに活動していた者であっても、力不足と判断されれば容赦なく辺境に送られる超実力主義の「ロディニア帝国」において、「12世界」を任される側近たちはまさに選ばれし者。
仮に無限に存在する各地の幹部たちが一同に集結して一斉に襲い掛かったとしても、まず間違いなく側近たちにはかすり傷1つつけることができず、反対に側近が小手調べで放った攻撃で幹部たちは全員が一瞬で跡形もなく無限に無限をかけたよりも多い次元を巻き添えにして消滅してしまう。
彼らの力を見た者全員にそう確信させる、転移者本人以外にはどうすることもできない埒外の存在。
「、、、それが「転移者様の側近」、それが「10神王」。そんな御方たちに逆らうということは」
「分かった分かった。ちゃんと理解したから。」
現在、署長を人質にしたレイスは空港を訪れていた。空港の周囲にはたくさんの警官が隊列を組んで武器を構えていたが、最高位種族の「魔人」である署長を痛めつけて人質にしている様子のレイスを恐れているためか、自ら動こうとする者はいなかった。
一方でレイスはその空港で一番性能がいい飛行機に乗り込んで署長に目的地の設定をさせていた。その最中、署長はひたすらにレイスがこれから戦いに臨もうとしている相手がどれほど強大な存在なのかということを訴えかけていたが、当然レイスはそれを聞いたところで臆するような性格ではない。にもかかわらず先ほどから何度も何度も同じ話を聞かされて彼は内心辟易していた。
「お前は知らないのだ、あのお方たちの力を。」
「そうかいそうかい。それで?できた?」
「ああ、これでそのまま自動運転で飛んでいけばファフニール様の城に着く。」
「よしよしOK、ありがとう。お前もう降りてもいいぞ。ここからは一人で行くから。」
そう言うとレイスは署長を連れて飛行機を出て、滑走路に降ろすと署長を解放した。署長はとにかくレイスから離れようと、もつれそうな足取りで警官隊のほうへ向かっていく。
その様子を少し離れた場所から注視していた警官隊の指揮官は、襟につけたマイクを使い、離れた場所にいる部下に指示を出す。
「ルイ署長が解放された。彼ごと撃ち落とすのもやむをえないと思っていたが好都合だな。飛行機が飛び立ったら俺の指示でミサイルを発射しろ。」
『了解。』
警官隊のたくらみを知ってか知らずか、レイスは警察署から拝借したメガホンにスイッチを入れた。
「あーあー、みんなどうも。言いたいことが二つだけある。まず最初に、騒がしくして申し訳ない。そして二つ目、これが最後。」
レイスがそう言った時、彼から放たれた殺気によってその場の空気が変わった。
息をすることもできないほどの圧倒的なプレッシャー。
署長だけでなくその奥にいた警官隊全員が全身の血が凍りつくような感覚に襲われ、武器を落として顔を真っ青にしながらへたり込む。
「他国のあれこれを否定する気はないしその権利も俺にはない。俺は別にこの国で生まれたわけでもないし王様でもないからな。だが、それを考慮しても腹に据えかねることがあったから言わせてもらう。「誰かを遊びで傷つける文化」なんてあっていいはずがない。今後二度と人間を遊びで殺すんじゃない。もしやったら全身の骨がバキバキに砕けるだけでは済まないぞ!」
その場にいた全員が死人のような顔になってレイスの話を聞いていた。中には恐怖のあまり胃の中のものを吐き出したり失禁しているものもいる。
「、、、まぁ、このくらいでいいか。別にこれしきでこの国が変わったりしないんだろうが、、、言いたいことは言わせてもらった。」
レイスは彼らの様子を見るとメガホンを投げ捨てて飛行機の扉を閉める。
「えーと、、、フレイヤさん、どこを押すんでしたっけ?」
(もう忘れたの!?ここよここ!)
「あ、そっか。」
ボタンを押してしばらくすると、飛行機が走り出してスピードを上げていきやがて宙に浮きあがった。
『隊長、撃ち落としますか?、、、、、、隊長?』
ミサイルを発射する役割を与えられた部下は飛行機が浮くのを確認して隊長に指示を求めるも、その隊長からの返事はない。彼は署長や大勢の部下たちとともにレイスの殺気にあてられた結果完全に放心状態となり命令などできなかった。
結局、部下はミサイルを発射することなく、困惑したまま飛び立っていく飛行機を見送ることしかできないのであった。
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