第79話 召集
第3章の最終話となります。
統一帝国ロディニア
その神都カエラムにある皇帝ユウヤの居城は混乱に包まれていた。
「被害に遭った都市の数は!?」
「全く分からん!数千億か数兆か、、、多分もっとだ!!」
「原因は!?」
「バカ!この段階で分かってたまるか!!」
ロディニア帝国の南端で突如発生した未曾有の規模の大爆発。それの報告を求められた男は何もわからずもうお手上げだと言わんばかりに叫ぶ。
そもそも、このロディニア帝国自体、その広大にもほどがある土地すべてを直接的に統治しているわけではない。
ロディニアは創造神がこれまでに作ったすべての次元を無理やり結合させて「1つの超大陸」としたものであり、転移者の支配が直接的に及ぶのは彼らが気に入った世界だけ。
それ以外の世界の人たちは転移者の魔法によってただ漠然と脳内に転移者の偉大さを刷り込まれるにすぎない、いわば間接的な支配であった。
今まではそれだけで十分であった。
直接支配を受ける者たちも、脳に刷り込まれた者たちも、誰も彼もが転移者の偉大さと強大さを思い知って反乱を起こそうなど微塵も考えることができない。
もしいたとしても、それらは転移者の信奉者によって即刻駆逐される。今まではそれで何一つ問題なく成り立っていた。
しかし、今回起こった大爆発はこれまでの反乱とは文字通り次元が違った。爆発によって消滅した範囲は、創造神の天地創造百万日分であり、滅びた都市の数はこの世に存在する数学上の最も巨大な数を遥かに超えている。
そんな異次元の事態を、普段平和すぎて仕事らしい仕事がない彼らに正確に理解しろというのは酷な話であった。
このように現場が混乱の極致に達している中、会議室の扉がゆっくりと開かれた。
事実だけを言えば「扉が開いた」ただそれだけでありそれ以上でも以下でもない。
本来であれば、この緊急事態の中では誰一人扉のほうを見ようとはしない。何もない時であったとしてもおそらく数人がそれに反応する程度の出来事。
それにも関わらず、扉が開いた瞬間、その場にいたすべての人間が一斉に扉を見た。
部屋に入ってきた人物の存在の大きさを直感したのである。
「へ、陛下、、、!」
彼らは一瞬見間違えかと思ったが、部屋に現れたのは紛れもなく彼らの主であり全宇宙の絶対的な頂点、13人の転移者の中でも最大の力と権力を持つ男、ロディニア帝国皇帝ユウヤその人であった。
その存在を認識した役人たちは顔を蒼白にした。
ユウヤが現れるのはまさに予想外だった。彼は普段は転移者以外は決して入ることが許されない「創生の間」という部屋の中にいて、めったに人前に出てこないのである。
この部屋の責任者である「主任」は慌ててユウヤの前に進み出て跪いた。それに続くように他の役人たちもその場に一斉に跪く。
「陛下、、、まさかおいでになるとは思いませんでした。なんの準備もできておらず申し訳ありません。これは全て私の不手際で、、、」
「構わん。」
ユウヤは無表情のまま部屋の中央に移動して、資料が散乱した部屋全体を見渡すとハァとため息をついた。
「、、、随分苦戦しているようだな。」
「も、申し訳ありません、、、!」
「いいだろう、少し暇だし手伝ってやる。」
ユウヤはそう言うと探知魔法を発動させた。ユウヤが発動させた魔法は瞬く間に範囲が広がっていき、あっという間にロディニア帝国の南端を捉える。
「、、、なるほど。黒焦げになった大地くらいしか残っていないな。」
「おっしゃる通りです。組織的な同時多発テロを視野に入れて捜査を」
「違う。」
「え?」
即座に否定されて、思わず主任は素っ頓狂な声を出す。
「魔力の痕跡がある。魔法だ、それもたった1発。」
「!!まさかそんなことは、」
「ありえない」と言いそうになってしまい主任は咄嗟に口を閉じた。
ロディニア帝国に住む人々にとって、転移者を否定することは死を意味する。
また、それ以上に転移者、特にユウヤは彼らにとってはまさに「全知全能」の象徴。
ユウヤが誤ったことを言うなど、彼らには想像することもできなかった。
(しかし、ということはあんな巨大な爆発を引き起こす魔法使いが転移者様以外に存在するというのか、、、!?)
敵の存在に戦慄する役人たちを放ったまま、ユウヤは爆心地付近の探知を続ける。
(破壊の跡から見て炎系魔法なのは間違いない。)
部下からは全知全能の絶対神のように扱われるユウヤにもできないことはいくつかある。
そのうちの一つが「過去を見ること」。
ユウヤは口元に手を当てながら当時の状況を予測した。
(この威力、、、おそらく相当高位の魔法に尋常ではない量の魔力を込めているな。一体どんなやつがこれをやったのか、、、ん?)
探知を続けていると、上空を超高速で飛ぶ物体を感じ取った。
(なんだこれは?)
その物体が気になったユウヤは探知魔法の精度を高め、飛ぶ機体とその内部の様子を探る。
中にいたのはレイス・ビネガー、グレゴリー・グラッドストン、そしてもう1人の謎の男であった。
(なるほど、こいつらか、、、!)
ユウヤの中ですべて合点がいった。レイスたちが乗っている飛行機は転移者の1人ウォーレンがナロパニアンの統治者ソニックにあげたもの。
レイスがソニックを殺害し、その余波で大破壊を引き起こしたに違いない。
ユウヤは脳内でそう結論づけた。
(この方角は、真っ直ぐ神都に向かっているのか?、、、いいだろう。総督どもに始末させるのはつまらんと思っていたところだ。)
ユウヤは柄にもなく興奮していた。絶対神を殺害して宇宙の覇権を握り10年以上、彼の人生からは刺激が失われ、退屈で仕方がなかった。
そのためレイスがコウガの側近であるタマを殺害してナロパニアンに向かったと聞いた時、実力者として知られているソニックに始末されるであろうことを内心勿体無いと思っていた。
そして今、レイスが生きていると知ったことは、むしろユウヤにとっては喜ばしいニュースであった。
「命令を下す。よく聞くように。」
「は、はい!」
ユウヤから突如「命令」を下されて、主任は緊張により全身を強張らせる。主任以外の役人も全員がそうであり、部屋全体が緊張の空気に包まれた。
「「12都市」にいる転移者を全員呼べ。いいな?全員だ。今すぐに。」
「承知いたしました!!」
主任は敬礼をすると部下たちを全員連れて急いで部屋を出て行く。
1人部屋に残ったユウヤは珍しく笑みを浮かべていた。
「俺たちとの戦争がそんなにお望みなら相手をしてやろうじゃないか。徹底的にな。」
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