第四十五話 うち、殺される!?
「今まで何回か生まれ変わったけど、今回は結構早かったなぁ」
うちの感覚だと百年も経ってないんやないか?
今回の主さんは、かなり体力多そうやったし、それもあってなんかな?
思えば前回はようわからん爺さんに拾われて、生まれるまでに爺さん死ぬギリギリまで時間かかったからなぁ。
まだ目の前真っ暗やけど、じきにって感じやな。
お、誰か部屋に帰ってきたみたいや。
「おいしい夕食でしたねハジメ様!どうでしたかぁ?口の中をズタズタにするあのサラダ!目玉が半壊したあのドラゴンゾンビ!おいしかったですよね?」
「だからごめんってば。アリスにゾンビ定食食わそうとしたのは謝るってば」
「許しません。ですが、あの苦痛、いや、修行を共にした身ですからね。このままギルドで婚姻届けを出すというのなら許すこともやぶさかではありません」
色気あるんだかないんだかわからん会話やな……。
あのハジメってのがうちを抱えてた男かいな。
まだ姿は見えへんけど、なんや女に流されるタイプなんか?
「んっ。うぅぅ……?」
「おーラグちゃん起きたか!どうだ?体調は」
「もう大丈夫。傷も塞がったし、痛いところもない。でも服破けちゃった」
もう一人おるんかい。
こっちも姉ちゃんの声ってことは、このハジメって兄ちゃんは二人姉ちゃん周りにおいてるってことかいな。
こりゃ今回は生きるのも楽そうやん。
兄ちゃん誑かして、気楽な食っちゃ寝していけるんとちゃうか?
「ラグちゃんさん……。明日は服買いに行きましょうね」
「やだ。ハジメのくれたこの服じゃないと、嫌」
「ラグちゃんそうは言ってもなぁ」
「明日、あの武器屋行きたい」
「へパさんのところか?」
「そう」
「あぁ、ラグちゃんの服は、鞘でもあるもんなぁ。下手な服だけ着替えたら、剣に戻った時どうなることか」
「そうなんですか?」
「そうなんだよ。ラグちゃんの服は鞘そのものだから、鞘の中を仮想環境にしておかないと、ラグちゃん自身が鞘を切っちゃうってへパさんが言ってたんだわ」
「それなら、仕方ないですね」
剣に戻ったら?
鞘ごと切れる?
鞘が服?
ちょ、ちょっとまってや?
どうにも話が変な方に行ってへんか?
そうやったら、今話してる姉ちゃんはそもそも剣が喋ってるってことなんか?
なんや怖いなぁ……。
「そういえば、この巨大卵、なんか倒れてるけど転がっちゃったのかな?」
「確かに、まっすぐ置いておいたはずなんですけどね」
あかん、うちが動いたのバレた!?
「この卵、ハジメ、どうするの?」
「どうってそりゃ、卵かけご飯にして食べるつもりだったんだけどさ」
食べる!?
この兄ちゃんうちのこと食う気なんか!?
「ハジメ様が卵が食べたいっておっしゃったときは、驚きました」
「なんでだよ」
「だって卵ですよ??普通食べたいって言っても、ケイランはそこそこ流通してますけど、ハジメさんが言ってたのは卵じゃないですか」
「……アリス。ちょっと待って。この世界には鶏卵ってのがあるの?」
「ありますよケイラン。鶏の卵です」
「そっち!!!俺食べたいのそっち!!!なんだよ!卵って言ったら鶏とか、そういう鳥の卵じゃないの!?」
「ちがいますよ。基本食卓に出てくるのはケイランで、鶏の卵です。ハジメ様が言っていたのは、卵で鶏の卵じゃない超高級品です」
「じゃあ俺が言ってた卵って、なにの卵なんだ!?!?」
「卵とだけ言った場合はですね……」
ピシッ!!!
パキパキッ!!
アカン!うち生まれてまう!
もうちょい状況把握しないで生まれたら食われてまうんやないか!?!?
トントントン。
誰か近づいてくる?
「さっさと割る」
「ラグちゃん待て!その振り上げた拳を下すんだ!」
……ズボッ!
う、腕が中に入ってきよったで。
ラグちゃんとかいう姉ちゃんうちの卵の殻に腕突っ込みよった!!!
「あー。もう、待てって言ったのに。ラグちゃんー??」
「だって、ハジメが待ってるから」
「待ってないよ!むしろ、これが俺の求める卵じゃなくて困惑してたよ!?」
「いいからその腕抜け!!」
「……む~」
「むくれないの!ほらっ」
突っ込まれた腕が、抜かれたのはいいんやけど、その穴から姉ちゃんと目が合ってもうた……。
「ハジメ。卵の中はもう出来上がってるみたい」
「出来上がってる!?もう料理になっちゃってるってこと?」
んなわけあるかい。
「ハジメ様違いますよ、ラグちゃんさんが言ってるのは、もう生まれるところだって意味です」
そうそう。
アリスとかいう姉ちゃんわかっとるやん。
あ、やばっ。
穴の外からうちを凝視してる黒い姉ちゃんめっちゃ変なオーラでとるやん。
ほとんどオーラが殺気そのものやで。
これ、このまま丸腰で、しかもうちは生まれたて。
全裸で出たら、即殺されて次の転生待ちの列に並ぶことになるんちゃうか!?!?
「ラグちゃん中見える?」
「見えるし、目が合ってる」
みえとるよこっちからも。
感情も何もない、冷たい目がこっち向いとるもん。
「目が合ってる!?そこまで中身出来上がっちゃってるの?」
「出来上がっちゃってる。あと、女の子だね。ハジメが好きそう」
「なんですって!?ハジメ様に余計な虫がつくってことですか!?今なら卵の中身と言えど幼体のはず、先に始末してから調理にしますか」
女の子いいやないかい!
めっちゃうち可愛いで!?
「わぁぁぁ!アリス!ちょっと剣を抜くな!っと、ラグちゃんも改めて拳振り上げないの!!!」
ちょちょちょちょっと待ってや!!
生まれる前に殺された挙句食われるんか!?
そんなんごめんやで。
うち、なんか考えるんや。
この、長いこと転生してきた知識を総動員させて頭を回せぇぇぇぇぇえ!!!
「だって、ハジメ様はお優しいですから、幼女なんて見たら庇護欲と父性本能で、うちの子にしようとか言い出すに決まってます!」
なんやて?
それしかない!
もうこの際、黒い姉ちゃんとハジメってのがこの場の主導権もってそうやし、これに賭けるしかないな。
生まれてすぐ、こんな強制イベント勘弁してほしいわぁ。
いくで?うち、いくで!?
バキバキバキッ!
「う、生まれるぞ!みんな一旦離れろ!!」
「生まれる前に殺すんですーーーー!」
「アリスもラグちゃんももういいから!ステイ!!!」
まるでコントやな。
しゃあっ。一気に殻割って出るで!
「う、生まれたぞ。確かに幼女だ。耳と尻尾があるけど」
「以外と可愛い?」
「これは、殺して食うってのは厳しいだろ」
「だから言ったじゃないですか。任せてください。情が移る前にここで仕留めます」
「お、おとーちゃん?お、おかーちゃん?お、おねーちゃん?はじめましてやなぁ。うち、なまえつけてほしいねん」
どや!
うちの渾身の上目遣いとロリッ娘攻撃は!
これで、うちの命運が決まる!!
どうか、誰でもいいからうちの魅力で靡いてくれぇぇぇ。




