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不運の集大成で死んだら、悪神のミスで絶対死なない豪運おもちゃにジョブチェンジしました  作者: 社会不適合者
素敵な生卵編

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第三十六話 武闘都市ヴァル

『これはまずいわ!今すぐヘルに連絡しないと!ハジメ、あんたと話している暇はなくなったわ。じゃね』

 慌ただしいやつだな。

 ロキと会話しながらも俺達は歩いていたから、それなりに進みはしたのだが、少し空腹を感じてきたな。


「ハジメ様、このあたりで休息と食事にしましょう。思ったより早く進んでいるので、この分なら夕方には着くと思いますので」

「そうだな、休めるうちに休んでおこう」

 どのみちこのあと大会に出場とか考えると忙しくなるだろうし、休息は貴重だな。


「では、このあたりで食事をご用意しますね」

 アリスはテキパキと準備を開始した。

 焚き火をつけながら、リュックからバスケットを取り出し中のパンを取り出す。

 そんなものまでリュックに入ってたのね。

 俺達にパンを渡しながら鍋でスープを作り始める。

 その手際は素晴らしいものなのだけど、ここだけ見ればいいお嫁さんになれるね、なんだけど、残念王女だからなぁ。


「そういえばラグちゃん」

「何?」

「ラグちゃんはもう剣の姿にはならないの?」

「剣のほうがいい?」

「いや、そうじゃなくてだな。戻ったとしたら折れた状態なのかなぁとか思ったりしただけだよ」

「多分大丈夫。折れたときは痛かったけど、ハジメから痛いことされるのは嫌いじゃない」

 よしこの話もうやめよう。


「ラグちゃんこの話はもう終わりだ。武闘大会楽しみだなー!!」

「ラグもっとお話したい」

「うんうんそうだね。武闘大会のお話しようね」

 なんとなくラグナロクが頬を膨らませている感じがした。

 あれ、なんかちょっとかわいい気がするぞ?


「ハジメに褒めてもらえるように、参加者皆殺しにしてくる」

 勘違いだったな。

 可愛くないわ。


「ハジメ様、ラグちゃんさん。スープも出来上がりましたよ」

 アリスから手渡されたスープとパンを俺達は口にして、一時休息となった。

 それから一時間ちょっとが過ぎて、そろそろ出発となり、このほかスムーズに目的地であるヴァルに到着したのだった。


「ハジメ様。あの門がヴァルの入口です」

 アリスが指先が指し示すのは、街というより要塞という表現が似合うような頑丈そうな門を構えた武闘都市ヴァルだった。


「おお。なかなかの迫力だな!」

「そうですよね。ずっと昔にはここは魔族と人間の戦争の中心地だったので、どうしてもこうした都市になったと言われています」

「そうなのか、それでか。うぉっ!」

 すると、急にラグナロクが歩くのをやめる。

 後ろにくっつかれて、なおかつ腕が首に回ってるもんだから、俺も連動して急停止する。


「ラグちゃんどうしたんだよ」

「ハジメ気になるって言ってた」

「なにがよ」

「ラグ、剣にもどったら折れてるんじゃないかって」

「あぁさっきの話か」

「みてて」

 ラグナロクはそう言うと、普段よりも強く俺を抱きしめた。


「おい、ラグちゃん!苦しいって!」

 ラグナロクの声は聞こえない。


「おい。返事ぐらいしろよ!」

 すると、首に慣れた感触がする。

 ハジメの体の前に、見慣れたさやとフリフリのスカート。


 ……ガリッ。

「「折れてないでしょ?」」


 久しぶりに感じるこの感じと、ガリガリ音。

 首に感じるラグナロクの腕の体温。

 数日感じてなかった首にかかる重み。

 剣に戻れるのね。


「ラグちゃん剣に戻れるのね」

「ラグちゃんさんすごいです!さすが魔剣ですね!!」

 魔剣だからなのか?

 にしても、しばらく感じてなかったこの感じだけど、よりによって新しい場所に行くときにこのキモいネイル魔剣モードでいくのかよ。


 ……ガリガリッ。

「「ラグすごい??」」


 うんうん。すごいね。

 できれば街中では人型のほうがありがたかった気もするけど。

 にしてもやっぱ腕生えてる剣ってキモいな。

 結局ラグナロクはそのまま定位置に戻ったものの、人型と剣を行き来できることがわかっただけでなく、特殊能力まで身につけていた。

 シュルシュルという音がしてふと体を見ると、ラグナロクの鞘から伸びるクロスしている紐が動いている。

 あー。ヘパさんが言ってたラグナロク縛り付ける用のやつがあったなそういえば。


「ちょっとまってラグちゃん。それめっちゃキモいんだけど」

 なおもシュルシュル動く紐が俺の胴体をた亀甲縛りのように縛り付けてきている。

 痛くはないよ。痛くはね。

 でも考えても見てよ。これ、完全に亀甲縛りみたいな感じになっちゃってるよ?

 俺通報されちゃうよ?


「ハ、ハジメ様、それは流石に……」

 ほら、あのアリスだって引いてるもん。


「ちょーっとそれはやめてくれないかなラグちゃん」

 ラグちゃんからの返答はなく、なおも強力に俺を縛り付けてきていた。

 まさか物理的に束縛というか、緊縛されるとは思わなかったよ俺。

 とはいえ、言うことをきかないラグちゃんに時間をかけるわけにも行かず、俺達はそのままヴァルに入ることになった。


「うわ!!キモっ」

 門番に言われた第一声だった。

 そりゃそうだよね。


「なんか、すいません……」

「い、いやいいんだ。それ、魔剣か?」

「そうですね。懐かれちゃいまして」

「ここは武闘都市だから、変な装備のやつはそれなりにいるが、あんたはピカイチだな」

 嬉しくないピカイチだな。


「ここに来た目的はクエスト受注とかか?」

「いや、武闘大会に参加しようと思ってきたんだ」

「そうだったのか。なら急いだほうがいい。今月の大会の受付は今日までだ。冒険者ギルドでできるから早く行きな」

「丁寧にたすかるよ。じゃあ急いで言ってみるわ」

「そうしたほうがいい。それと、間違っても街中で剣を抜いたりするなよ?」

「やっぱあれか?すぐに衛兵がくるとか?」

「いやいや、この都市は血の気が多いやつしかいないからな。不用意に剣なんか抜いたら、即どっかから喧嘩ふっかけられるぞ」

 ったく。血の気多すぎんだよこの世界。


「それはめんどうだな。気をつけるよ」

「あと、ギルドに入るときは入口に武器を預けるところがあるからそこに預けてから入れよ。一応ルールだからな」

 なんだか、背中のラグナロクがガタガタと震えている気がするし、首の腕が更にきつく締まった気がする。


「そういえばこの都市は入るときに税とか、検閲とかないんだな」

「あぁ。ここだけは特殊だな。都市内の人間は大なり小なり戦えるやつしかいないし、ここを納めてる人がここで一番強いぐらいだからな。変なのが入ったところで怖くないってのがあるんだよ」

 なるほど。悪さできるもんならやってみろってか。


「そういうことね。わかったよ、ありがとうな」

「おお!大会頑張れよー!」

 俺達は門番に迎え入れられて無事に武闘都市ヴァルに到着したのだった。

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