第四話 大切なのは現有勢力を最大限に活かすこと
会議室の空気は、昨日よりも重かった。
同じメンバーで、一度失敗した依頼を受ける。
次は負けられない。
だからこそ、全員が分かっている。
――やり直しは、簡単じゃない。
「役割を決めます」
カイは、机の上に簡単な地図を広げた。
「今回の再挑戦では、皆さんは役割を変えてもらいます」
マックスが腕を組みながら言う。
「俺が前に出りゃいいだろ」
「リリアが噛まずに詠唱さえ成功すれば、何の問題もねえ」
「いいえ」
即答だった。
「マックスは、“盾役”としてリリアを守ってもらいます」
「突っ込む役ではありません」
「なら誰が敵をやっつけるんだ!」
カイは返事をせず、地図に視線を落としたまま続ける。
「リリアさんは後方」
「詠唱に集中してください」
リリアは小さく頷いた。
「問題は、前に出る攻撃役です」
一瞬、沈黙。
カイは、グレンを見る。
「グレンさん。今回は――」
「断る」
被せるように、グレンが言った。
「斥候とアタッカーの兼任は無茶だ」
「前も後ろも見なきゃならねえ」
正論だった。
マックスも、リリアも、何も言えない。
「分かっています」
カイは頷いた。
「ですが、他に適任者がいません」
「あなたたちのパーティーの今いちばんの課題ですね」
「本来なら、斥候、アタッカー、タンク、後方、ヒーラー」
「五人いて、ようやく安定します」
グレンは、舌打ちする。
「仕方ねえだろう」
「俺たちみたいなはみ出し者の寄せ集めのパーティーじゃな」
それを聞いたカイは言う。
「まあ、はっきり言うとその通りですね」
「今から不足を補充することはできません」
不満を露にしてグレンが言う。
「……だからって」
「今回の依頼は、さほど難易度が高いものではありません」
「今のあなたたちの力で、十分対応できます」
それでも、グレンは首を振る。
「失敗したら、俺の責任になる」
カイは、少しだけ間を置いた。
「そうですね」
否定しない。
しばらく、沈黙。
やがて、グレンが息を吐いた。
「まあ……俺が一番、年食ってるしな」
「どの道ペナルティを受けたら、食っちゃいけねえんだ」
誰も口を挟まない。
「若いのに、これを背負わせるわけにはいかねえ」
視線が、マックスとリリアをかすめる。
「今回だけだ」
「簡単な依頼だからな」
「はい」
カイは、深く頷いた。
「無理はさせません」
グレンは立ち上がる。
「……次は、ちゃんと補充しろ」
「アタッカーと、回復役だ」
「ええ」
カイは即答した。
「そのつもりです」
マックスが、ぼそっと言う。
「……いざとなったら、俺が守ってやる」
「馬鹿にするな、そこまで衰えちゃいねえさ」
短いやり取り。
だが、昨日より空気は軽かった。
カイは、三人を見渡す。
「では、同じ依頼に再挑戦してください」
「配置を変えて」
――同じ場所でも、
同じ失敗はしない。
そう信じられるだけの理由が、
今は、確かにあった。




