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【祝・追放100回記念】自分を追放した奴らのスキルを全部使えるようになりました!  作者: 高見南 純平
第1部 追放からの旅立ち

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第20話 無人島

 漁師用の船なので、観光用とは違って少し進みは荒かった。

 船乗りはだいたい【酔い耐性】を持っている。そのため、酒などにも強い。海賊たちがビールなどを片手に宴をしているイメージが広まっているのは、その影響ともいわれている。


 そしてこのスキルはララクも所持している。大酒のボダーズという冒険者が所持しているスキルだった。

 ボダーズの所属する冒険者パーティー【荒波】には、遊泳槍デューンと釣り師アバンジャが籍を置いていた。


 【酔い耐性】というパッシブスキルは、何も酒を飲む際に活用できるものではない。モンスターの中には、地震などを起こして揺れを起こすものや、強力な打撃で直接脳を揺らすものもいる。そこでこれがあると、意識を保ちやすいのだ。


 港町バルミューを囲む近海は海が澄んでいることで有名だ。ゴミなどが流れることも少なく、海洋生物たちはすくすくと育つ。これは、バルミューをはじめとした近辺に住む人々が、海を大切にしている表れでもある。


「もうすこーし掛かるが、暗くなる前にはつきそうだ。ほんとに、迎えはいらないんだな?」


 ララクが漁師を訪ねたのが昼過ぎだったので、船に乗っている時間を追加すると、つくのは夕方の少し手前ごろと行ったところか。

 行きは問題なくとも、帰りは確実に夜になる。真っ暗のなかでの移動は危険がつきものだ。


「はい。【テレポート】があるので」


 改めて瞬影忍者カケルの持つ【テレポート】の便利さに感心するララク。


 しばらく海を眺めながら漂っていると、無人島がいくつか見えてきた。そして船の方向線上に、目的の場所が見えてくる。


 背の高い木々が多く、全体が緑で覆われているようだった。広さは有人島と比べるとこぢんまりしており、この距離からであれば全体的な大きさを確認できた。


「ここが、魔狼島ですか?」


「まぁ、魔狼が本当にいるならそうだな。今はただの無人島さ」


 漁師は無人島の浜辺へと船を近づけ、ぴたりと止めてみせた。


「ありがとうございました」


 ララクはハシゴを使うことなく、ひょいっと船から飛び降りる。そして、船に乗ったままの漁師を見上げた。


「良いってことよ。おまえさんに、海の加護があらんことを」


 彼は胸のペンダントを握りしめ、神に祈る。


「そちらも、お気をつけて」


 ララクは船が発車するのを見守ると、魔狼島と思われる未知の場所へと足を踏み入れていく。


(いたって普通の島だよなぁ)


 背の高い木々が多い、という点以外はぱっと見は何の異常もなかった。

 天を見上げると、雲一つない絵のような青が広がっていた。この島を外から見た時は緑に囲まれているという安易な感想を持ったが、入ってみると空からの光が多く差し込む地形をしていた。日陰は少なく、長時間入れば日焼けをしそうだ。


「【アーマークリエイト・ハード】」


 彼は武器を作り出す【ウェポンクリエイト】ではなく、防具などを作れる【アーマークリエイト】を使用する。防具というと物騒だが、簡単に言えば衣服を作ることが出来る。その範囲には、頭部に着用するものも含まれている。

 早着替えのマリーカという冒険者が愛用するスキルだ


「ふぅ、【日焼け耐性】はないからなぁ」


 彼が作り出したのは、小さな頭にすっぽりと入る麦わら帽子だった。日焼け防止のスキルは持っていないので、こうするしなかった。

 【日焼け耐性】というピンポイントなパッシブスキルは存在する。皮膚が焼けないということで炎の熱にも強い。しかし、それならば【炎耐性】で事足りる。それゆえか、希少スキルの1つではあった。


 ピクニックにでも来たかのような様になった彼を、迎えるものがいた。


「キュキュ??」


 モンスターの鳴き声だ。凶暴性はあまり感じなく可愛らしい声だ。


「あ、ジャンプラビットだ」


 ジャンプラビットはその通り跳躍力に優れている。見つけたその兎は、雑草の上を小刻みにジャンプしている。おそらく、ララクの首あたりぐらいまで跳ぶことができるだろう。


「っえ、こんなに?」


 ジャンプラビットが跳ぶのは習性的に何ら不思議はないが、群れで活動していたようで数十匹が一気に宙を舞っているのだ。


「モンスターは多いんだな」


 ゴブリン並みに大群でいるジャンプラビットだが、攻撃をする気配はなかった。かれらは草食動物だ。こちらから攻撃しない限り、襲撃されることはない。


 少しずつだが、魔狼島についての情報を頭に書き留めておくララクだった。


         ◇◇◇


 ララクは草木をかき分けながら、無人島を進んでいく。すると、新たなモンスターたちが次々と顔を出してくる。


(あれは……クワトロホーン)


 不規則に曲がった角が4本ほど生えており、見た目は完全に鹿だった。こちらも、数匹の群れで活動している。


「キャキャラッ」


 幼児のように高い声を出して、木の上を登っているのはウッドモンキーだった。茶毛をしており、木系統のスキルを扱うと言われている。ウッドモンキーは小さな赤子もいて、家族連れのようだ。


(ほんと、野生のモンスターが多いな。でも、どれも温厚な生き物だし、危険はなさそうだ)


 消息不明者が出た原因は、これらのモンスターの影響である可能性は薄い、と考えていた。


(それなのに、全然いないな)


 辺りを見渡せども、目に映るのは草食動物ばかりだ。それに伴い、木の実や雑草は潤沢に育っている。

 上級モンスターどころか、ゴブリンのような低級だが凶暴なモンスターさえ存在しない。


 ララクは先ほどから地面の土も注意深く観察していた。しかし、巨大生物の足跡らしきものは確認することが出来なかった。


(これなら、異常がないと判断するのも納得だ)


 この島はいたって平和的だ。人間がいないだけで、それに危害を加える存在はいない。日当たりもよく、動植物はすくすくと育っている。


(モンスターにとっては楽園だなぁ、ここは。……ん、待てよ)


 肉食獣が存在しないので、小動物には暮らしやすい。そう考えていると、ここにいるモンスターたちの共通点に、ララクは気づき始めた。

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