第21話 島の謎
「【サーチング】」
まずは、ジャンピングラビットを調べることにした。飽きないのか、と言いたくなるほど常にジャンプしている。
名前 不明
種族 ジャンピングラビット
レベル 12
アクションスキル 一覧
【ジャンピングキック】【スケットラビット】
パッシブスキル 一覧
【跳躍力上昇】【俊敏性上昇】
思った通り、レベルが低くスキルも少ない。これでは、初心者冒険者でも倒すことが可能だろう。
ララクはもっと情報が欲しいと、スキル画面にある種族の欄をタッチする。
ジャンピングラビット
詳細……兎の仲間で、跳躍力に優れている。群れで活動している。繁殖力が高い
「やっぱりそうだ。今度はこっちを【サーチング】」
ララクは周囲にいたクワトロホーン、そしてウッドモンキー2体をまとめて【サーチング】する。そして、種族の説明を閲覧した。
クワトロホーン
詳細……鹿の仲間で、特徴的な角を持っている。突進スキルで相手を迎撃する。群れで活動している。繁殖力が高い
ウッドモンキー
詳細……猿の仲間で、木系統のスキルを所持していることが多い。群れで活動している。繁殖力が高い。
(どのモンスターも繁殖力が高い。この島には、まだまだたくさんいるかも)
種族情報を見て、野生生物の多さに納得する。しかし、ここで新たな疑問が浮かんできた。
(天敵がいないわけだし、モンスターはどんどん繁殖するはずだ。その割には、植物がしっかりと育ってる。
溢れるほどはいないし、少し数に違和感があるような)
育ちの早い植物たちが多い、と言ってしまえばそれまでなのだが、ララクは何か異質なものを感じ取っていた。
繁殖力が高い、という説明が入っている一番メジャーなモンスターはゴブリンだろう。ああいった類のモンスターは、数が増えすぎないように定期的に駆除される。放っておいたら、とんでもない数になるからだ。
しかし、ここは人が立ち寄らない場所にもかかわらず、調和が取れているように感じていた。食物連鎖がしっかりと成り立っている。
(人間以外の誰かが、その数を調整しているとすれば納得がいく。そしてそれが、噂の魔狼。だけど、その形跡は全くない)
いまだにここが、危険地帯と安全地帯の両方の側面を持っている理由が分からなかった。
この場所が、魔熊の森ならばそれが成立する。
例えばある冒険者が「魔熊の森に行って帰ってこない」とすれば、それは森の主に出会ってしまったと考えるのが普通だ。そして「無事にクエストを成功した」という冒険者がいれば、ケルベアスのエリアには立ち入らなかった、と判断する。
(ここは無人島。1日あれば、ある程度は調査できる。長くても2,3日だと思う。冒険者がパーティーならなおさら早く済むはずだ。
魔狼の住むテリトリーのようなものがある、っていう線は薄いかな)
船から眺めた島の全体像を思い出し、仮説を立てるがすぐに断念する。
彼が無人島の謎を考え込みながら歩いていると、少しずつ日が沈んでいく。
(ちょっと歩き疲れたかなぁ。夜の生態系も気になるし、今日はここに泊ろうっと)
固まった体を伸ばしながら、ララクはキャンプの準備をする。キャンプは冒険者にとっては日常的なことだ。ララクも経験者だが、ソロは初めてだ。
少し心細くなりながらも、使えそうな物を探していく。
◇◇◇
ララクがキャンプの準備をして時間を潰していると、すっかり辺りは暗くなっていた。
木を切って用意した焚き火と、丸太の上に座り、ララクは夕食の準備をしていた。
【ポケットゲート】からフライパンを取り出して、モンスターの厚切りの肉を置いて焼いていた。
焼いているのは、クローモールというモグラのモンスターの肉だ。夜になり姿を現したので、それを狩って食べることにしたのだ。
「美味しい」
クローモールの肉は、脂身が少なく小さいながらがっつりと肉の味を楽しむことが出来る。こちらも繁殖率の高いモンスターで数は多いが、地中にいるため捕まえるのは難しいのであまり市場などには出回らない。
こういった食材を手にできるのも、冒険ならではだ。
(クローモールは夜行性だけど、他のモンスターを捕食するようなタイプじゃない。地中のミミズなどを食べるはずだ。
他にもイノシシやフクロウはいるけど、やっぱり上級モンスターの姿はない)
食事を楽しみながらも、夜の生態系を観察することは怠っていなかった。
ララクの感じている通り、野生生物を捕食し続けるような強力なモンスターはいなかった。その代わり、今食べているクローモールなども繁殖しやすいモンスターだということが【サーチング】で分かった。
(やっぱり、これじゃあモンスターであふれかえってもいいはず。ここの広さはそこまでではないし。
数を調整する狩人がいると仮定して、それはどこにいる?
地中かな? でも、大きな穴はない。
もしかして、海中に住んでいるとしたら?
いや、それなら漁師さんたちの目撃情報がもっとあるかも)
ララクはそもそも、魔狼がどのような姿をしているのかさえ知らなかった。エラがあるのかもしれないし、翼があるのかもしれない。そのため、どこに生息しているのかが予想しづらかった。
「空? はもっとないよなぁ。それこそ目撃されてるはずだ」
ララクはボソッと呟きながら、天を見上げる。
日中は太陽光が激しかったが、今は満天の星と月が見渡せる。空が開けているので、天体観測にはぴったりな場所だ。
(こんな空を、狼がずっと飛んでたら、すぐに分かるよなぁ)
結局、魔狼に近づけるものを何一つ見つけ出せていない。
そんな時だった。
少しだけ欠けた月を見て、ララクは立ち上がる。
「……まさか、な。いやでも、だとすると納得できる。あれ、そういえば……」
ララクは何かを確かめようと、【ポケットゲート】を発動して、借りてきたモンスター図鑑を取り出す。
そして、狼の仲間が載った場所までページをめくった。
「フレイムウルフ、シルバーウルフ……人狼、これだ」
狼の頭をした人型の絵を指さす。
説明にはこう書かれていた。
人狼……普段は人間の姿をしている。しかし、満月の夜に月明かりに照らされると、人狼へと変貌する。凶暴で戦闘力が格段に上がるが、中には自我を保てる個体も存在する。
モンスター図鑑に載っているが、今は『狐人』や『猫人』のような獣人と呼ばれる部類になっており、人間と共に生活をする者もいる。
(つまり、狼の中には月と繋がりがある種族もある。もし、魔狼もそうだとしたら?)
もう一度、天を見上げて月の形を確認する。
少しだけ姿を隠しており、満月は明日だった。
(どちらにせよ。明日になれば分かる、と思う)
魔狼に関する仮説を考え出したララクは、明日に備えるのだった。




