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軋轢

関羽総督からの、多大な信頼を表明された糜竺は、これで少しばかり気持ちが楽になった気がしていた。彼は総督からの依頼で公安の訴状と南郡の失火(しっか)を調査する為に南方行脚の旅に出ていたのである。


本来的には、尚書令の糜竺が行うべき業務で在るかと問われる為らば、それは甚だ怪しい。けれども、南郡の太守が彼の弟である糜芳であった事で、彼は自ら望んで現地に向かう事になったのだった。


関羽が依頼した形を取れば、妙に勘繰りを受ける事も無いから、糜竺も負担に感じなくて済む。これは彼を信頼する関羽なりの配慮であった。


但し、総督がかなり御冠(オカンムリ)であった事も事実で、兄の糜竺の目から観ても弟・糜芳の醜態は目を覆う程に酷いものだったので、彼はある意味、その責任を痛感し、自らの手で態度を改めさせようと、わざわざ出向いたのであった。


けれどもその甲斐が在ったかと問われる為らば、それは(いささ)か疑問が残る。それは戻って来た時の、彼の浮かない表情に全て集約されていたからであった。


「( ̄□ ̄*)まず公安砦の訴状の件ですが…」


「(*`艸´)あぁ…公安は良い!既に解決済だ♪」


「( ̄□ ̄;)はぃ?!それはいったいどういうことで??」


「(*`艸´)若君が現地に赴き解決されたのだ!」


「えっ!Σ(Д゜;/)/ええ~!!」


糜竺は想わず振り向き、太子を見つめた。北斗ちゃんはニコニコしながら(つぶ)らな瞳で彼を見ていた。


「( ・∀・)あぁ…」


北斗ちゃんは公安に赴き、真相を見極めた事について切々と語った。糜竺は慎重な中にも、目的完遂の為に揺るがない精神力とその実行力に感心しながら聞き入っていた。


「( ̄□ ̄;)すると傅士仁殿は、ここにいらっしゃる…」


「( ・∀・)えぇ…」


「(〃´o`)=3 すると総督とも仲直り出来たのですな?」


「(*`艸´)=3 そうだ♪」


「ε- (´ー`*)劉璋親子もここに?」


「( =^ω^)そうじゃ♪若君が江陵まで連れて来られて華侘先生に預けられた。もう大丈夫じゃ♪」


「(* ̄◇)=3 なら良かった♪全ては誤解だと知り安堵しましたゆえ、御報告が遅れた事をお詫び申し上げます!」


「(‘∀‘ )否、これで良かったのかと!若君は却って先入観を持たず見極められたのですからね♪虞翻の事もそれゆえ判明したのですから…」


「(〃´o`)=3 そうかも知れませんな!あの医師が虞翻であったとは…私もそこまでは判りませんでしたから…」


「(*`艸´)フッ…若の行動力たるや労苦を厭わぬからな!敏捷(はしっこ)い上に機転も効いておる。しかも医師としても優秀だ♪あの華侘先生が弟子にするくらいだからのぅ…」


「(*゜ー゜)…爺ぃ~止めてくれよ♪こそばゆい!そういう訳で、今は僕の配下の費観将軍と費禕軍師を公安砦の(かなめ)として配置しているから心配いらない。公安は盤石だ!」


「ε- (´ー`*)…となるとやはり問題は南郡とお考えなのですね?」


「(*`艸´)そうだ!それが現在の我々の一番の懸念と思ってくれて良い!お前には気の毒な事だがな?で…どうなった、説得は出来たのか?」


「(*゜ー゜)爺ぃ~待て待て、それでは叔父上も言い出し辛いぞ!叔父上、お辛いでしょうが…」


「(`へ´*)…否、いいのです!弟の振る舞いは今に始まった事では在りませんから…ではその話を致します!」


糜竺は遂に重い口を開き、南郡の調査結果を報告する段に為った。皆、それぞれの想いを胸に秘めて、その言葉に耳を傾ける。


「(`へ´*)…失火の原因は、日頃の統率に欠ける弟・糜芳の体たらくに拠る物です。部下の士気は低く、弟の有り様を観て、皆舐めて掛かっています…」


「…ですからその態度は皆、ふてぶてしく、民を顧みず、やりたい放題。にも拘わらず、引き締めも行わず、酒を喰らい、服装は乱れて女人を囲って遊び呆ける有り様…」


「…あれでは駄目ですな!最早、私の叱責にすら答えられぬへべれけ状態です!私は困り果てまして、奴を何とかせねばと考えました…」


「…そんな時に私に声を掛けて来たのが鞏志(きょうし)殿でした。彼もこの状況を憂いており、私に協力すると申し出てくれましたので、彼とその有志である者たちと共に、弟以下主だった者たちを捕え拘束致しました…」


「…今は彼に南郡を預けてあります。但し、急先鋒の者たちを捕えただけで、事が完全に解決した訳では在りませんから、ご相談の為に戻って来た次第です!」


「(#`艸´)な、何じゃとう!!」


関羽は話を聴いている間にもワナワナと蟀谷(コメカミ)に青筋を立てていたが、話が終わるや我慢が効かず咆哮を上げた。


糜竺は肩を落とし、地べたに両手を着き、その表情は青ざめ苦渋に満ちていた。


「(^。^;)まぁ…待て待て!爺ぃ~抑えてくれ!」


北斗ちゃんはある程度は想像していたものの、予想以上に酷い有り様に顔をしかめた。他の者たちも、その有り様に驚き、そして絶句している。


「(*゜ー゜)…まずその鞏志とは何者だ!信頼出来るのだろうね?」


「(‘∀‘ )それなら私がお答えを!彼は元々は武陵の出身で太守・金旋(きんせん)の従事でしたが、我らの南郡四都攻略戦の折に主攻の張飛将軍に協力した者です…」


馬良の説明に依ると、鞏志は民の為に無駄な抵抗は辞めて、金旋に降伏を進言したが、金旋は突然怒り出して彼を処刑しようとした。


結局、勇ましく出撃したものの、張飛将軍に敗北して逃げ帰る羽目になった金旋に対し、鞏志は無駄に兵士を死なせたとしてこれを射殺し、その首級を張飛将軍に献上した上で降伏した。


鞏志はその時に、劉備から武陵太守に任ぜられたものの、その後、呉の周瑜の攻撃を支え切れずに敗北し、現在は南郡のいち将軍である…馬良の説明はそこで終わった。


「(^。^;)う~ん…それ大丈夫なのかな?話の内容では、金旋という太守は酷い人だった様だが、いきなり射殺してしまう辺りが僕は好きになれない…その人間性を疑う嫌いがあると思うのだが?」


「( =^ω^)確かに…私も陛下の処置には当時少々疑問を感じました。あれは文長殿と同じ振る舞い。長沙の太守・韓玄を斬った文長殿は、やはり陛下の処置に依り、評されましたが、私は諫言を聴かぬからと言って暴力に訴える輩は信用出来ませぬ!」


因みに文長とは魏延将軍の字である。彼は今は漢中の太守をしていた。


伊籍の言は辛辣だった。彼は諫言は配下の務めと心得ているが、それを聴かぬからと言って主君殺しを正当化しては成らないと言っているのだ。


それは正論であって、主殺しを忌み嫌うのは当然の事である。当時は儒教の精神も根強かった筈であるから、その反応は至ってまともであった。


「(‘∀‘ ;)残念ながら…私もそれに同意致します!今回の処置については一時的なものとしては致し方無いかと!しかしながら、それを良しとしてはいけないのではないかと拝察致します!」


「(*`艸´)ふむ!儂は状況に拠るものとしては、妥協するかも知れんな…が!しかしだ!自分の首が狙われるのは、やはりゾッとしないのぅ…」


「( ・∀・)どうやら皆、意見は一致した様だね♪僕もそんな人は余り信用出来ないんだ!残念ながらね…まぁいいや♪明日にも僕は南郡に行くから、何とかしよう♪」


「(*`艸´)なっ!」


「( ;^ω^)ん!」


「(‘∀‘ ;)どぇす!」


「( ̄□ ̄;)とぅ…!」


皆、北斗ちゃんの言葉に驚いている。それはそうだ!彼が勝手に決めて、まだ傅士仁にしか伝えていない予定だったのだから…。


「(; ・∀・)ありゃ?言ってなかったっけ!」


「「「「聴いてません!!!!」」」」


「(^。^;)耳が痛いっつ~の!そうか…言ってなかったっけ?でもそんな状況放置出来ないだろう?どっちにしろ行かなければならんからね!」


「(*`艸´)若が行かなくても宜しい…何でいつも殊更に火中の栗を拾いに行かれるか?爺ぃ~は許しませんぞ!儂が乗り込みます!」


「( #^ω^)( # ‘∀‘)それは駄目です!」


「(*`艸´)なぜだ?」


「( ・∀・)爺ぃ~は遵守だって自分で言ったじゃん♪江陵で睨みを利かせてないでど~すんのさ!」


「(*`艸´)あ!そらそうですな…ではどうするので?」


「( ・∀・)はい♪そこは遊軍の僕の出番でしょ?敏捷(はしっこ)さと機転は僕の十八番(おはこ)と言ったのは誰でしたっけ?」


「(*`艸´)なっ!若、(ずる)いですぞ!言葉尻を捉えるとは!」


「( =^ω^)ふむ…私は賛成ですな!確かにちと驚きましたが、今はやれる者が他にはおりませんからな…」


「(‘∀‘ )私も同意致します!若は公安でも上手く立ち回りました♪必ずや事を納められるかと!」


「(*`艸´)し、しかし…」


「( ・∀・)大丈夫だよ!爺ぃ~♪実は傅士仁にはもう声を掛けてあるんだ!彼も体力・気力共に有り余ってるみたいだからね♪彼を帯同する!後、悪いけど叔父上にもまた来て貰うよ♪」


「( ̄□ ̄;)無論です!私の不徳から出た物ですからな!しかしながら、どう納められるおつもりですか?」


「( ・∀・)あぁ…それについては、既に考えてある!心配ない!実は恰好の人材がいるんだよね♪」


「(*`艸´)ま、まさか?」


「( ・∀・)" ふふ…爺ぃ~違うよ♪その人では無い!まだ若いけど丞相の息が掛かった者がここ荊州には来ているんだ!僕もまだ会ってはいないけどね♪でも信頼は出来ると思うよ!」


「(*`艸´)それは誰です?」


「( ・∀・)まだ内緒だよ♪でも僕に任せてくれ!今までだって後悔はさせてないだろう?ここで敢えて名を臥せるのは、まだ先方の都合を聞いてないからだよ!帰って来たら話すから心配いらない!」


「( =^ω^)フォフォ!面白そうですな♪で、若君…糜芳殿と鞏志殿の処置はどうされるおつもりなのじゃ?」


「( ・∀・)あぁ…それは決まっている!糜芳叔父は現状を記して成都に送る。鞏志にはそれを護送させる。彼にはそのくらいの役割が相応しかろう♪後は丞相のご裁可に委ねる…こんなんでどうかな?」


「( =^ω^)フォフォ…それは宜しいな♪何とも言えぬ小気味の良さじゃ!この伊籍、感服致しましたぞ♪」


「(‘∀‘ )成る程…それは宜しいですな!賛同致します♪」


「(*`艸´)しかし…奴らが結託して逃げたらどうするのだ?」


「( ・∀・)あぁ…それは心配ないよ!鞏志という人の性格を聞いた限りでは、そうする以外に彼には道は無い筈だ!さすがに処分する訳じゃ無いからね♪丞相が彼の身の振り方を考えて下さるだろう…」


北斗ちゃんはそう断言した。実際、諸葛亮はそういう輩を好まないが、父上は違うようだ。即ち、彼は陛下の采配次第という事になる。


丞相が二度と荊州には戻さないだろうし、結果どこぞの閑職に回される事に為るだろう。彼が仮にもし反骨心を引き起こした場合にはそれが彼の最期という事になるだろうが、それは彼次第だという事だ。


『( ・∀・)悪いけど…信用出来ぬ者はここにはいらない!二方を敵に囲まれた上に、内憂外患では事は為せぬ…』


北斗ちゃんはそう感じていた。勿論、彼は会ってみなければその人の、人と成りは判らぬものとは心得ているが、この調子ではその判断は変わらぬだろうと感じていた。


「( ・∀・)じゃあ、そういう事で僕は明日にも南郡に行くから、宜しくね♪」


「(*`艸´)仕方在りませんな…承知しましょう!」


「( ・∀・)爺ぃ~有り難う♪後悔はさせないよ!僕が居ない間は、伊籍や馬良の言葉にしっかりと耳を傾けて、判断しておくれよ♪くれぐれも独断専行しない様に♪」


「(*`艸´)何だ?若はまだ信用為さらぬか!判っておりますとも♪儂は馬鹿じゃ無いのです!」


「(^。^;)だよね…爺ぃ~嫌だな!信頼してるよ♪全くもう!」


「(*`艸´)ガハハハ…ちと言ってみただけですわい♪若、気張り為されよ!」


「(*゜ー゜)ププッ…あぁ♪判ってる!任せてくれ♪」


こうして南郡の処置は、ほぼ決まった。


後は時間との(せめ)ぎ合いと成るであろうと皆、感じていたのである。

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