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116 エピローグ1

 俺は、プールに入っていた。

 泳いでるわけじゃない。ただ浸かってるんだ。


「……おい」


 隣にいる野郎から、声をかけられた。

 俺と同じように、温泉に入っているかのように肩まで水の中に浸かっている。

 唯一出ている顔は、やたらとイケメンだ。


「なんだよ?」


「俺……ハーレム同好会に入って、本当に良かったと思う」


「なんだよ、藪から棒に」


「こんな光景、生きてて初めてだよ。まさかお前、ずっとこんなイイ目に会ってたのか?」


「まさか、俺だって初めてだ」


 俺とレオンの目の前、プールからあがった所では、ハーレム同好会の女性陣がキャッキャウフフとはしゃぎ合っている。


 本来は、ここ連日痛めつけられて生傷の耐えなかった俺の身体を癒そうと、みんなで温泉に行くことになってたんだ。

 でも……予約を担当していたルナナの手違いで、なぜか大型温水プールに来ていた。


 俺の肩では、傍目も気にせず妖精がひとりで喋り続けている。


「うわぁ、エロい水着やなぁ……どんだけ課金したらあんな格好になんねん。

 リッコなんて対魔忍みたいになっとるやん。

 うわっ、エリカのやつふざけて触りまくっとる。

 おわぁ、その格好でちちくりあったら、モロ出しになってまうでぇ!」


 そうなんだ、プールに来ると聞いて、俺は『きせかえグローブ』の威力を確かめるべく、俺は布地が切手くらいしかないエロビキニを人形たちに着せたんだ。

 ちなみに、デレノートは使っていない。


 さすがにこんな露出狂みたいな水着、誰も着ねぇだろ、と思ってたんだが……。

 女どもは全員痴女みたいな格好の、とんでもないプール行楽となってしまった。


 胸は先端以外を覆うモノがないので、胸なんか雪の女王かってくらいありのままにブルンブルンしている。

 下半身はムダ毛を全部剃っちまったんじゃねぇかっていうくらいの小さなトライアングルだ。


 安心してください、はいてますよ。

 って言ってくれなきゃほとんどの角度で全裸に見えちまう。


 ちなみにリンに対してはちょっと複雑な気分だったので、人形の着せ替えはしてない。

 ひとりだけマトモなワンピース水着を着ている。


 それと……バンビにもやらなきゃよかったかな、と今更ながらに後悔している。

 我が妹は、過激なイメージビデオの出演者みたいになっちまってて……お兄ちゃんは悲しい気持ちになっちまったよ。


 さらに、自分ですすんで着て来てる(テイ)のハズなのに、エリカとリッコ以外は異様に恥ずかしがっているのがまたなんとも言えねぇ。

 人目を気にしてキョロキョロしながら胸を抱き、太ももをピッタリ閉じてモジモジしてるのが実に股間にやさしくない。


 でも……これで、俺とレオンがプールに浸かったまま動けない理由がわかってもらえただろうか。


 俺たちだけじゃねぇ、プールにいる男どもは小さな子供以外、どいつもこいつもプールの中に入っている。

 監視台にいる監視員なんて、うつ伏せになる勢いで前かがみになっている。


「あっ、見てみ見てみ!

 ああっ、エリカのヤツ、ルナナとフミミの水着に手ェ突っ込みおった!

 JKギャルが両手に花状態で、女教師どもの生乳揉みしだいとる!

 学級崩壊にも程があるやろ……もはやスクールウォーズやでぇ……!」


「……おい、実況すんなよ」


「ええやん別に、あっ、さてはおどれら、股間がひと足先に花園に旅立ってもうたんやな?」


「ううっ……ヤベっ、もうダメだぁっ……イテテテテ!」


 テュリスの言葉についに限界が来てしまったかのように、レオンは急に下腹部を押さえだした。


「なんだ、水に浸かりすぎて腹でも痛くなったか?」


「俺、勃つと痛くなるんだよ」


「毎度おさわがせしますみたいなやっちゃなぁ」


「プールでなにをカミングアウトしてんだよ……しかも、一番聞きたくなかった情報を」


「それもそうだな……なんで俺は秘密にしてたこと、こんなにペラペラしゃべってんだ……。

 おい、誰にも言うんじゃねぇぞ、特にエリカには」


「……言わねーよ」


「おい、三十郎、レオン! なにやってんだよ! ビーチバレーやろ!」


 妖精が「ノーブラボイン撃ちや!」と表するほど激しく揺らしながら、エリカがこっちに駆けてきた。


「えっ!? おい、やめとけよ!

 そんな格好でビーチバレーなんてやったら、とんでもなくプールの水が汚れちまうぞ!」


「なにワケのわかんねぇこと言ってんの! さぁ、あがってあがって!」


「「ムリムリムリムリ」」


 俺とレオンはハモりながら首をブンブン左右に振る。


「ったく、ジジイみてぇなこと言ってんじゃねぇよ! ほら、あがれって!」


「ちょ、待っ……アアッ!?」


 男ふたりの悲鳴と、女たちの悲鳴がこだまする。


 ……妄想の中の俺は、女たちの身体を見ても、眉ひとつ動かさなかった。

 そうなるためには、あと、どのくらいかかるんだろうな……。



 プールから帰ったその日の夜。

 『ファイナルメンテナンス』のアップデート状況を確認すると、ついに残すところあと1パーセントとなった。


 明日には、遊べるかもしれねぇな……と思っていたら、なぜかルナナとバンビが俺の部屋にやって来た。

 いちごで作ったジェラートを持ってきてくれたらしいんだが、そのまま居座っちまった。


 お茶しながらペチャクチャと雑談してたと思ったら、そのままベッドで寝てやがんの。

 ふたりともヤケに幸せそうな顔をして寝ていたので、起こすに起こせなかった。


 しょうがないので、俺はちょうど空いていたベッドの真ん中で横になり、姉妹に挟まれる形で眠りについた。

 そういや昔はこんな風に川の字になって寝てたなぁ……こうやって寝るの、何年ぶりだろうか……。


 思い出そうとしたが、それよりも遊び疲れていたせいか、あっというまに眠りに落ちてしまった。

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