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顔を空に向けると、そこには……ルナナ、リン、シキ、エリカがいた。
4人とも、ゾンビみたいな必死の形相で、俺の足を掴んでいる。
そのさらに上には、リンの足首を掴むリッコ、シキの足首を掴むフミミ、エリカの足首を掴むレオンがいた。
た……助かった……! と安堵しかけたが、なぜか、自由落下が止まらねぇ。
よく見たら、全員、身投げしてるじゃねぇか……!
なんで……なんでだよっ!?
誰かを助けるために飛び降りるなんて大馬鹿は、俺ひとりでじゅうぶんなのに……なんでこぞって集団自殺みたいなマネしてんだよっ……!?
特にレオン! お前は屋上の縁で手を伸ばして、ギリギリのところを掴む役割だろ!
「ファイトーいっぱぁつ!」とか叫びながら、引っ張り上げる役割だろうが!
なのになんで一緒になって飛び降りてんだよ!?
や……やべえやべえやべえ……!
なんでこんな時に限って、時間の流れが速く感じるんだ……!
どんどん地面が迫ってきやがる……!
これだけの数、どうやったって庇いきれねぇぞ!?
生まれ変わってこれからだっていうリン……!
これから声優界を背負って立つシキ……!
まだ男を知らないエリカ……!
貴重なオッパイを持つルナナとフミミ……!
どれも大切な、俺のハーレムの女たち……!
ひとりだって、死神にくれてやるわけにはいかねぇ……!
た……たのむ! 神様仏様!
愛の神……えーっと、たしか……アフロなんとか様!
奇跡を……奇跡を俺にくれ!
女たちを守る力を……俺にくれっ!
俺の命だったら、来世のぶんまでやるから、くれよ……!!
くれったらくれ! くれよぉぉぉぉぉーーーーーーっ!!!
俺の祈りをあざ笑うかのように、楽しげな下校のチャイムが鳴り響く。
空は、ほんのりと黄味がかりつつあった。
俺の血が、ひと足先に地面を夕焼けに変えるだろう。
……決めた。
俺は、奇跡なんかにゃ頼らねぇ……!
バンビ、ルナナ、リン、シキ、エリカ、リッコ、フミミ、レオン……。
全員を受け止めてやる……!
見てろよ、みんな……!
学校のヤツらだけじゃねぇ、世界中のヤツら、八百万の神よ……!
そして、オヤジ、オフクロ……!
最後に熱い気持ちを取り戻した俺の、最後の大仕事……その目に焼き付けておけよ……!
……世の中ってのは不思議なもんだな。
肝が座ったかと思うと心を乱され、ゆっくりだと思っていたら速く感じる。
そして、奇跡なんていらねぇって思ったら、奇跡がやって来るんだ……。
俺に降ってわいた奇跡……何だかわかるか?
すこしだけ、考えてみてくれ。
ヒントは、夕方……!
……ド……ッ!
俺の身体は、横殴りに飛んできた柔らかいモノによって受け止められていた。
革張りの、豪華な幅広のソファ。
部室の2階でやった、生配信バトル……そこで俺の座っていたソファが、タイムリミットにより射出された。
偶然にも俺は、その上に落ちたんだ。
続いて降ってくる仲間たちも、次々と座面のスプリングで弾む。
9人分の重さを受けた、恵比寿家具のソファは急失速。
部室とプールの間に設置されていた、ハーレム同好会反対のシュプレヒコールをあげるステージめがけて落ちていく。
悲鳴とともに、逃げまどう運動者たち。
金属で組まれたステージに突っ込むと、
グワッ……シャアアアアンッ……!
屋根くらいあるシンバルを地面に落としたかのような衝撃音が、あたりに炸裂する。
粉々になるステージ。
『女性の尊厳を踏みにじる、ハーレム同好会を許さない』と書かれた横断幕が裂け、
『女性の社会進出を阻害する、ハーレム同好会に反対しよう』と書かれた看板が真っ二つになる。
バッテンの描かれた俺の写真も、俺が鎖を手にして女たちを這いつくばらせているイラストも……爆散して、散っていく。
ハイジャンプを決めた車のように、サスペンションがわりのスプリングで跳ねるソファ。
地面に火花を立てながらアスファルトを滑りながら、ドリフトを決めつつ止まった。
周囲には、唖然とした観衆の姿。
ソファの真ん中にいる俺は、バンビを膝に乗せたまま、両隣にいたルナナとフミミの巨乳コンビの脇を掴んで胸を寄せさせる。
さらに隣にいるリンとシキの腰を抱き寄せ、一番外側にいるエリカとリッコの肩に手を置きながら……悠然と足を組んだ。
そして一言、
「ハーレム同好会は、男も女も、子供も大人も……生徒も教師もウェルカムだ」




