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「なぁ……これは、お前が考えたことなのか?」


 尋ねると、バンビは仔鹿の耳のような髪を、ピョコンとさせながらうつむいた。


「……『開部の儀』に反対する人たちを募集してたから、スタッフの人たちにかけあって、私に総指揮をとらせてほしいってお願いしたの。

 立場が立場だったからかな、すんなりオーケーが出たんだよね」


 立場ってのは……俺の妹だから、ってことか。


「それから私は、三十郎の邪魔をしてくれる人を探した。

 でも、私は表だって動きまわるわけにはいかなかったんだよね……。

 だって、私のことが三十郎に漏れでもしたら、この計画は台無しになっちゃうからね」


 確かに、全然気づかなかった……そういえば、コイツはかなり頭が良かったんだよな。


「だから私は裏で指示をして、スタッフさんに動いてもらったんだよね。

 三十郎と仲良くなってるリンさんとシキさんの交友関係を調べて、スタッフさん経由でリッコさんとフミミ先生にお願いしてもらったんだ。

 リンさんとシキさんが取られそうだよ、って言ってもらったらすんなり協力してくれて……エリカさんは三十郎の話をしたらすんなり乗ってくれたみたい」


 つい先刻、屋上でラスボスの姿を認めた俺たち一行は、バラエティ番組のガヤみたいに「ええーっ!?」っと大げさに驚いたものだ。


 誰もが演技には見えなかったから、俺の妹が黒幕だって初めて知ったんだろう。

 俺が屋上にあがろうと言い出さなければ、もしかしたら妹が関わっていることすら知らないまま終わってたかもしれねぇな。


「リッコさんとフミミ先生とエリカさん……3人で邪魔してもらうことになったんだけど……。

 もうひと工夫して、ウソの人質をお姉ちゃんにやってもらうことにしたんだ。

 お姉ちゃんは私と違って人を疑うことをしないから、簡単だった。

 儀式に必要な人質になって、ってスタッフの人に嘘をついてもらったんだ」


 言い終えたバンビは、ゆっくりと顔をあげる。

 告白を終えてスッキリしたのか、切羽詰まっていた表情はいつもの斜に構えるようなマセガキに戻っていた。


「もうわかったでしょ、私の狙いが。

 助けなきゃいけない本当の人質は、お姉ちゃんじゃなくて、この妖精。

 ……お姉ちゃんを助けた時点で、三十郎は目的を達成したと思って部室を出ると思ってたんだ」


 言外に「あと少しだったのに……」という無念さが漂っていた。

 たしかに、あと少しだったな。


「そして……部室を出た時点で、『開部の儀』は失敗……。

 ラスボスである私の勝ち、っていうのを狙ったんだけどなぁ……」


 我が妹は、タネあかしはこれでおしまい、とばかりに肩をすくめる。


 しかし落ち込むどころか、手すりから前のめりになって二の句を継ぎはじめた。

 ガマンしきれなかった様子で。


「でもさ、でもさ、なんでわかったの?

 この屋上から、外にあるスクリーンで三十郎のことずっと見てたけど……お姉ちゃんを助けたあと部室の外に出ようとしてたじゃん」


 どうやら、今度は俺が説明しなきゃいけない番のようだ。

 まぁ、たしかにずっと見てたんだったら気になるだろうな。


 まさか本当のこと……VRバンダナでテュリスのことを視たなんて言えるはずもなかったので、俺はもうひとつ感じていた違和感を話した。


 俺の感じていた違和感。

 それは最上階にあった試練だ。


 眠っているお姫様を目覚めさせる仕掛け、アレはルナナ自身が発案したものだろう。

 それはすぐにわかった。メルヘン好きなルナナが考えそうなことだからな。


 しかし、牢屋を施錠している錠前の仕掛けについては、ルナナらしくなかった。

 そもそもルナナはハーレム同好会の顧問を買って出てくれたから、協力的な立場のはずだ。


 そんなヤツが、間違っただけで鍵が使えなくなっちまうような仕掛けをするなんて思えなかったんだ。

 ……少なくとも、俺の知ってるルナナはそんなことをしねぇ。


 最後の試練にあったふたつの仕掛け、そのどちらもルナナらしいか、またどちらも他のヤツが考えたような内容だったら、違和感を感じなかったかもしれねぇな。


 各階の試練が、いかにもそこにいるヤツが考えたような内容だったから、なおさらだな。

 あの錠前の試練だけが、やたらと浮いて見えたんだ。


 でも、それが……隠れた存在を俺に気づかせる、キッカケとなったんだ……!

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