表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/266

097 警衛団の連中にも、何人か聞いてみたんだが、あいつらは外で戦ってたのが誰かすら、知らなくて……全然当てになりゃしないのさ

「畜生、奴等……何処に行きやがった?」


「まだ遠くには行っていない筈だし、奴等の色は目立つ! 探すぞ!」


 警衛団員達は二手に分かれると、大通りを駆け回り、麗紅と麗琳を探し始める。

 だが、麗紅や麗琳らしき、赤い功夫服姿の者達は見当たらない。


 建物の屋根の上に跳び上がり、辺りを見回してみても、警衛団員の二人は、麗紅と麗琳を見つけ出す事が出来ない。

 麗紅と麗琳は二人の視界に、映っていたというのに。


 その時、麗紅と麗琳の二人は、近くの大通りにいたのだ。

 大通りを南に向かって歩き続ける政宗を、十歩近く間合いを取った上で、二人は尾行していたのである(十歩は十五メートル)。


 煙幕の煙に身を隠している間、麗紅と麗琳は背包の中から、頭巾のついた袖無しの外套……兜帽斗篷とうぼうとほう取り出し、功夫服の上から着込んでいた。

 土の上で姿を隠す場合などにも使う、茶色い兜帽斗篷を着れば、二人は赤い功夫服を隠せるし、麗紅は頭巾で赤い髪も隠せるので、街の中でも目立たない。


 兜帽斗篷を着込んだ麗紅と麗琳の姿は、江湖の大通りを行き交う人々の姿に、自然と溶け込んだ為、警衛団の二人は気付けなかったのだ。


「どうやら、私達を見失った様だ」


 さり気なく振り返り、後方を一瞥した麗紅は、屋根の上を移動し、見当違いの方向を探し始めた、二人の警衛団員の姿を視認した上で、ぼそりと呟く。

 そして、再び前を向き、政宗に目線を移す。


 麗紅と麗琳の目線の先で、政宗は立ち止まる。

 湯気を噴く蒸篭せいろを並べた、饅頭屋の店先で、女店員から饅頭を一つ購入した上で、政宗は店員と少しの間、話し込み始める。


 気付かれぬ様に、麗紅と麗琳は自然に間合いを詰め、政宗から数歩離れた辺りで、他の店で品物を物色する振りをしながら、盗み聞きを開始。


「――どこに泊まってるかまでは、分からないねぇ。あたしもお客さんから、その四季王沙門っていう子が、城壁の外で派手な戦いをやらかしたっていう噂話を、聞いただけだから」


 三十路だろう、女性店員の話を聞いた政宗は、残念そうに呟く。


「そりゃ残念」


「あたしなんかより、警衛団の連中に聞いた方が、良いと思うけど?」


「警衛団の連中にも、何人か聞いてみたんだが、あいつらは外で戦ってたのが誰かすら、知らなくて……全然当てになりゃしないのさ」


 政宗は肩を竦めつつ、言葉を続ける。


「警衛団以外の連中の方が、まだましだよ。泊まってる宿までは知らなくとも、戦ってたのが四季王沙門だって事くらいは、皆知っていたからね」


 実は、政宗は警衛団員だけでなく、他の人々にも色々と話を訊きながら、大通りを移動していたのだ。

 戦っていたのが、沙門と甲冑姿の何者かという情報は、警衛団員ではない者達から得られたのだが、安寧に入った沙門が何処に行ったのか、どの宿に泊まったのかという事に関する情報を、政宗は得られずにいた。


 何故、得られないのかといえば、沙門と槐花は警衛団員の手引きにより、他の人々には気付かれぬ様に、警衛団と繋がりが深い宿に案内されていたからだ。

 沙門と槐花に関する情報を、秘してくれる者達以外の目に留まらずに、沙門と槐花は宿に泊まれた為、政宗が訊いて回ろうが、情報など得られる訳もないのである。


 ちなみに、盗み聞きしている麗紅や麗琳が、安寧の人々から得られた情報も、政宗と大差無い。

 沙門と槐花が安寧にいる事は確信出来たが、その所在は全く掴めないという状況だ。


 女性店員との話を終えた政宗は、饅頭を食べながら、再び大通りを歩き始める。

 そして、饅頭を食べ終わると、今度は豆乳を詰めた竹筒や、茶などの飲み物を売る店で豆乳を買い、また店員と話を始める。


 店員との話は、饅頭屋のと変わりは無い。

 その後も政宗は、月餅げっぺいや胡麻団子、蓮蓉包れんようほうなどの店に立ち寄っては、食べ物を買いつつ店員と話し、沙門に関する情報を集め続けた(蓮蓉包とは、蓮の実を混ぜ込んだ、蒸しパン風の食べ物)。


 一時間程……尾行してる麗紅と麗琳が驚き呆れる程の量、様々な食べ物や飲み物を、腹の中に収めながら、夜でも賑わう幾つもの通りを歩き回り、政宗は沙門に関する情報を集め続けた。


 だが、結果は芳しくはなく、黄泉招来の装甲殭屍と思われる存在との激戦に勝利し、沙門が槐花と共に安寧に入った情報は掴めたが、その後の沙門の行方に関して、政宗は何の情報も得られなかった(政宗は装甲殭屍を知っていた)。


 そして、十一時の鐘が安寧の夜空に鳴り響いた頃合、とある店の女性店員が、汚れた政宗を見て気遣い助言した。


「お姐さん、今夜は早く宿を決めて、風呂に入って身奇麗にして、休んだ方が良いんじゃないかね? まともな風呂がある宿の部屋は、十一時回ると……殆ど埋まっちまうよ」


 助言を聞いた政宗は、かなりの数の人に訊いても、沙門の所在の手がかりが掴めぬ現状、そろそろ潮時だろうと判断、今晩の情報集めを諦めて、宿を探す事にしたのだ。

 助言をくれた女性店員に、お勧めの宿を幾つか訊いた政宗は、女性店員に礼を言うと、安寧に四つある宿場街の一つに向って歩き出す。


 密かに後をつける、麗紅と麗琳の存在には、気付きもせず……。



    ×    ×    ×




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ