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襲撃終了

「狩南は襲撃者を撃退した時点から、行動フェーズです。判定は振らなくて良いです」

「二日目は固定イベントが詰まってるのか」

「情報まで固定で渡されると思わないことです」

「急に不穏じゃないか」


戦闘が終了して回収したタブレットには、不穏な文言が。


オオナの弟――トマルが自分に賞金を掛けたことを知る。以降、仇果衆の問答、制限時間一分。


ここに来てリアルタイムで情報を聞き出していく形式らしい。


「とりあえず、仇果衆からは自分に賞金を掛けたのはオオナの弟、トマルということが聞き出せます。RPでやり取りするので返してくださいね、筋次郎」

「任せろ」

「――今回の勝者はお前だ。聞きたいことがあれば言ってみろ」


こちらのセリフと共に、制限時間を表すホログラムが現れる。


「え、短っ! まあいい、何故俺を標的にした?」

「……目についたから」

「お前はオオナという奴は知ってるか?」

「オオナ? お前を賞金首にしたのはトマルだろ」


時間がない中、狩南が思考し筋次郎が問答する。


「待てよ。賞金首のリストから依頼を見繕ったなら、誰が掛けたかなんて分からない筈……お前、トマルから直接差し向けられたのか?」


おっと、今の発言がフラグでも踏んだのか。タブレットに長文が出てきた……。

これ、PLによる一分の問答だと思っていたけど、KPはKPで一分の伝言ゲームを課されてるよな。


「……ああ。あいつは仇果衆の幹部であり、自身の復讐の後も復讐者として活動している。兄のオオナは復讐者とは関係ないが、時々旅館の客を狙うのさ」

「なぜ俺を賞金首に掛けた?」

「そりゃ、復讐者でも賞金首以外を手に掛けるのは禁忌だからな。逆に言えば、自分でも良いから誰かが賞金を掛ければ狙い放題って訳だ」


我ながら理解しながら喋るのが忙しすぎるが、なんか流用しやすい設定を口走ってるな。今度このネタ使ってシナリオ作ろう。


「――問答を続けていると、オオナとよく似た風貌の男が現れます」

「よく似たってことは、こいつがトマルか」

「その様子じゃ襲撃は失敗したらしいな――幹部の登場により、先程蹴散らした下っ端は覇気をなくした足取りで撤収しました」


「一人二役でRPするのを嫌ったな」

「やめてくださーい。幹部トマルは筋次郎に向かって口を開きます――消耗してるようだな。その点では、あいつらも役には立ったと言える」

「え、継戦? いや、さすがに何かあるだろ……」


TRPGのGMであれば、PLとの信頼を持ちつつ揺さぶりをかける瞬間。これが本当に美味しいですごちそうさまでしたって感じなのだが!


展開が読めない以上、こっちもヒヤヒヤである。良く言えばPLとの戦友感を味わえるが、悪く言えば中間管理職である。


「するとそこに、筋次郎の兄さんが現れます」

「え、兄さん!?」

「このタイミング、この復讐者の協力者か? だが、賞金首以外に手を出すのはご法度だろう――

いや、それはお前が賞金首に手を出すまでの話だ。狩りが始まったら、味方だろうと敵だろうと理由にはなるよな」


RPでうんぬん言ってた狩南だが、いざ始まると真剣に聞き入っている様子。


「張り詰めた緊張感の中、トマルがその場を後にします」


これからのシナリオ台本に従うと、筋太郎ともいくらか言葉を交わした後に撤退という。情報が引き出せなかったときの助け舟枠だったのか、はたまた顔見せのイベントになるのか。


RPだけなのは良いんだけど、筋次郎と筋太郎の温度感が分からない。


「兄さんが何故ここに? 今日はボディビル・アレンジ・ジャパンの大会だろ」

「ああ、この身一つで乗り越えてきた」


兄弟でボディビルダーだったけど、弟を追放させたのか。ヤバいな……のひと言で片付けて良いのかも分からん!


「なんだ筋次郎、お前も誰かに怨まれてたのか」

「理由は分からないけど、僕はたまたま標的になっただけだ。お前みたいな奴とは違う」

「なら、俺から仕掛ける理由もない――」


一応キリは良いが、もっとRPの幅があるんじゃないだろうか。

少し言葉に詰まってると、狩南に頷かれた。大丈夫だということだろうか。


「……筋太郎もまた、この場所を去ります。では、遭遇フェーズに移ります。選べるのは二人」

「今回の行動は骨が折れたな」


狩南が静かに身体を伸ばす。たしかに戦闘や制限時間付きの質疑応答と、集中力が必要なフェーズだった。


「クライマックスはトマルを狙いたい。ということで、オオナからトマルの居場所を突き止める。また待ち伏せもしてしまおう」


リベアレのクライマックスフェーズは、自分が把握している場所やヒトから襲撃する相手を決める。黒幕に目星を付けたら、どこに居るのかを突き止めるのが重要という。


「遭遇場所はエントランスです。他の客はおらず、談話スペースの一画で作業をしていたオオナさんが、笑みを浮かべて応じてくれます。そして、傍らには宿泊客の帳簿が!」

「軽犯罪の準備は万端だ」


筋次郎がトマルの情報を手に入れる戦いが始まったな。


「こんばんは、夕食はもうすぐ出来上がるので、待っててくださいね」

「料理はオオナさんが?」


「え……料理人は別にいますよ。配膳はしますが……いや、思ったより時間が押してますね――オオナは帳簿を置いて去っていきます」

「む? これがボーナスのために危機感の薄いオーナーか……」


タブレットに情報が現れる。これで、クライマックスに筋太郎以外のNPCのアテは掴んだと言える。


「トマルは202号室に明日まで泊まってるようです」

「なんかローラーしても突き止められてそうだったな……お茶飲むか?」


え、今……? 突っ込む間もなく、狩南がおもむろにリュックから2Lペットボトルと紙コップを取り出す。準備が良すぎるが、何人の想定だったんだろう。


「ありがとうございます……狩南さんって、付き合いとか、義務感でTRPGをやることってあります?」

「意図が分からないな」

「TRPGって人とやるじゃないですか……自分はそこまでやる気がなくても、シナリオを用意したり、日程を合わせたりすることもあったんですよ。狩南さんはどうかと思いまして」

「それをアンケートよろしく、シナリオで関わった人に聞いて回ってるのか?」


棘のある言い回しだが、狩南はこっちの目を避けるようにお茶を注いだコップを口に持っていく。


「たまたまですかね……」


流石に口には出さないが、楽しんでるのか気になったんだよね。ただ、慣れてる感というか遊んでる感はひしひしと伝わる。

予約した時点では二人で利用する予定だったらしいが、何か関係してるのか?


「シナリオをクリアしたら教えてやるよ」

「いや、そこまでは別に……」

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