第三話 とある俺、『パンの冒険屋』の店主と取引する!
俺は、『ダンジョン①』から徒歩一分のところにアパートを借りた。1人で暮らすには結構広い。
まず、窓から見える景色を堪能した。
俺の元居た世界にはどこにもないが、異世界風な街並みだといえば、しっくりくる。そんな商店街に冒険者が闊歩している。
窓が開いていると結構な喧騒具合だが、閉めてしまえば静寂が広がってくるようだ。
しかし、この部屋は何とかならないか。ダンジョンの方がもっと物がありそうだ。
「うーん。ベッドもないとは……。ちょっと待てよ。今日の食事は……!?」
食事代がないことに気づいた俺は、慌てて窓を開けた。身なりの良いあの男を探したが、どこにもいなかった。
「しまったー!? 食事代ぐらい貰っておけばよかった! どうすんだ、これから!」
俺は、キッチンの方に入って行った。備え付けの戸棚を開けていくが、何もなかった。
しかし、窓からは良い匂いが漂ってくる。
「食欲をそそる匂いだ……」
どこの国も食事というものの香りは良い匂いなのかもしれない。
俺は、釣られるようにして、アパートの外に出て行った。
パンの焼ける匂いが漂ってくる店がある。『パンの冒険屋』と看板が出ている。
匂いにつられるように、ドアを開けて店の中に入って行った。
色々なパンが並んでいる。
「美味そうじゃないか……!」
お腹がぐうと鳴る。しかし、俺の手持ちはない。
客に交じってみていると、美味しそうな商品があった。
「■ふわふわパンか!」
客が面白いようにその商品を手に取って買い求めていく。
「この■ふわふわパン滅茶苦茶ふわふわしていて美味しいのよね~!」
「そうそう! ふわっふわよね~!」
「そうなのか。一度食べてみたいなぁ」
にこにこしながら見ていると、店主が困った顔をしてやってきた。
「どうしたものかね。材料の一つの■ふわふわパウダーがないから、主力商品の■ふわふわパンが作れなくなってしまうよ」
「えっ? 作れなくなってしまうんですか?」
「物は相談なんだけど、報酬で10,000S出すからアイテム取ってきてもらえない?」
「話を詳しく聞かせてもらえませんか!」
俺は、その儲け話に飛びついた。
「『ダンジョン①』の一階にあるんだけど、奥の方にあるから2日ぐらいかかるんだよね~」
「え゛? 二日?」
「そう、二日くらいかな。報酬+好きなパン3つ付けるからダンジョン行ってきてくれないかな?」
ここに売られているパンを見ると、一個が大体100Sぐらいだ。
それを踏まえて、■ふわふわパウダーのアイテムを取ってくるだけで10,000Sか。
一見すると良い話に思える。
しかし、2日もかかるなんて相当な重労働じゃないか?
丸腰だし、パン3つの食料で、果たしてダンジョンの奥の方まで行って、敵に出会わずに、無事に帰ってこれるだろうか。
直ぐに見つかれば、美味しい話ではあるが――。
「うーん。考えさせてください!」
「じゃあ、■ふわふわパン一個あげるから考えておいてね~」
俺は、一応はお腹を満たした。しかし、これからどうすれば良いのか。
一応商店街を見て回ったが、良い答えは見つからない。
「一応、ダンジョンに行ってみるか」
仕方ないので、『ダンジョン①』の方にやってきたのだった。




