46. 迎撃戦
やっと、最終バトル戦です…
灯里達の後ろ姿が小さくなっていくのを見届けると、東雲は先ほど轟音を上げた人工池に身体を向ける。
池の中央が盛り上がり、グラグラと地面が揺れる。
グオオオオオオオ!!!
大きな雄叫びを上げて、まるで肉食恐竜のような巨大な穢れが水面を割るようにして現れた。
「な、何あれ…」
東雲の隣に立つ咲良は数歩、後ずさった。
水の中から現れたその穢れの高さは、ビルの10階を超えるだろう。
時計台広場に集まった小さい穢れが、怯えたかのように池から離れようと押し合いを始めた。
すると、巨大な穢れはガシッと近くにいた小さい穢れを掴んでガブリ、と飲み込んだ。
「「「えっ…」」」
その場にいた浄化師達はその光景を見て固まる。
穢れが他の穢れを捕食するなんて聞いたことがなかった。
「共喰い…か。」
東雲が小さい声で呟いた。しかし、その言葉は思いの外、その場に響き、浄化師達は水を打ったように静かになった。
「どういうこと…?融合するだけじゃなくて、大型の穢れが他の穢れを食べて、もっと大きくなってるってわけ?」
咲良の普段は不安を浮かべないその瞳が揺れた。
巨大な個体がこちらへ視線を向けた。すかさず咲良は防護班員へ指示を出す。
「防護班、防護壁を結合展開っ!!」
大きな紫色のドーム状の防護壁が、浄化師達をその内側で守るように形成された。
巨大な穢れが浄化師達へ向かって口から光線を吐き出す。
ドゴッ、ミシ……
間一髪、防護ドームが攻撃を防いだ。
「うわーっ、あっぶなっ。」
呑気な軽い声がした方を見ると、恭弥を含めた特務遊撃班が紫色のドームの上に立っていた。
再び巨大な穢れを見やると、攻撃が当たったかどうかを気にすることなく、地面にいる他の穢れを観察している。
どうやら巨大な穢れは連続して大技を繰り出せないようで、一旦攻撃をやめ、周りの穢れを襲い始めた。
その様子を見た咲良が防護ドームを解いた。特務遊撃班の面々が浄化師の中心に降り立った。
東雲が顔を顰めて恭弥を見る。
「恭弥。遅いぞ。」
「いや、ほんと、遅くなって悪いな。広場に集まった穢れの一斉浄化をするための"道具"を本部まで取りに行ってたんだよ。」
「道具…?」
「そう。」
恭弥はチラッと後ろにいたピンク色の派手な髪色の細身の隊員に合図する。
隊員は背中に背負っていた黒い袋から"クナイ"をひとつ取り出した。
「霧島さんの加護が混じった防護壁を見て思いついたんだ。個としての浄化力の高い戦闘浄化の加護を、なんらかの形で広域浄化の加護と掛け合わせれば浄化力を上げた攻撃ができるんじゃないかって。」
ピンク頭の班員が恭弥に声をかける。
「班長、俺たちは設置に向かいますね。」
「ああ、頼んだ。」
数人の班員が素早く四方に散っていった。
「さっきのクナイ一本一本に、俺の戦闘浄化の加護を込めた。それを広場の周囲に打ち込んで、広域浄化の術式そのものを作るんだ。…ただ、術式構築にちょっと時間がかかるから…」
恭弥は巨大な穢れを見上げた。
「さて。俺は時間稼ぎでもするかな。」
恭弥は加護を纏わせた大剣を手にして、巨大な穢れに向かって走っていった。
穢れを喰らっているので強い個体だ。一撃では浄化できない。
恭弥は穢れの背や尾などを切りつけて、部分的に浄化を施していく。
時計台広場から伸びる分岐路や街路樹にクナイが次々に刺さった。
東雲はその配置を見て納得したかのように呟いた。
「すごいな、巨大な魔法陣を作るつもりなのか。よし、僕らはこの広場の外に出よう。」
咲良も頷いて、周りを見渡した。
「そうね。浄化による衝撃波がどのくらいのものかわからないけれど、ビルの被害も食い止めないと。防護班!時計台広場を囲うように防護壁を展開するわよ!」
「「「はいっ!」」」
防護班も散らばって防護壁を展開しに向かう。
「班長!クナイの配置完了です。」
隊員の報告を聞くと、巨大な穢れの頭部に乗っていた恭弥は、余裕のある笑みを浮かべ宙を舞い、広場の中心へ飛んだ。
急降下して、地面に加護を付加した大剣を突き刺した。
大剣を中心に紫色の光が地面に走る。時計台広場に刺したクナイまで光が届くと、地面に大きな紫色の魔法陣が浮かび上がった。
「土陣四の段、地殻変動」
ドゴドゴドゴォ…
地面が隆起し、穢れを飲み込むようにして浄化していく。
巨大な穢れの両足も地面に拘束され、その巨体も徐々に崩れていく。
トドメとばかりに、恭弥は巨大な穢れの首を大剣で切り落とす。
キエェェエェ…ギギギ…
気味の悪い雄叫びを上げながら巨大な穢れを含め、広場を埋め尽くしていた三百体ほどの穢れが次々と消えていった。
地面が抉れ、ボコボコになった時計台広場の淵に浄化師達が集まってきた。
「浄化、完了か…?」
「すげえ!さすが特務班!」
ホッとした浄化師達がワッと歓声を上げる。
東雲と咲良は呆然と広場を見つめた。
「……相変わらず、規格外だな。」
「規格外っていうより!この広場!どう言い訳するのよ!めちゃくちゃじゃなーぃっ!」
上への報告と対外的報道の対応に二人は頭を抱える。
「酷いなぁ、せっかく浄化したのに。」
大剣を手に恭弥が戻ってくる。小言を言おうとする咲良を制し、東雲が言った。
「あとはエネルギー管理局に向かった霧島さん達がどうなってるかだな。」
そう、融合個体の発生源を断たねばまた穢れが発生してしまうのだ。
彼らは大丈夫だろうかと、三人は顔を見合わせた。
つづく
いつも読んでくださってありがとうございます。
数日、更新が滞ってしまい失礼しました。産みの苦しみのあった46話です。楽しんでいただけたら嬉しいです。




