31. 国立エネルギー管理局
タタタ……ハァ、ハァ、
無事に応急処置研修に合格した次の月曜日、灯里は高層ビルが立ち並ぶコンクリートジャングルで迷っていた。
(霞が原一丁目ビル…ってどこぉ〜!)
配属先での内部研修を終えた新人は、次に二週間の他省庁研修へ進む。
『あ〜、ごめんごめん!ウチの局に新人が配属される事なかったから、事務の手続き忘れててさ、まぁ...でも恭弥の手配でちゃんと配属先決まったから!心配せず行ってこい!』
ガハハ、と豪快に笑った二日前の橘のセリフが脳裏に浮かぶ。
急遽受け入れてもらえたエネルギー管理局で、灯里と白瀬は今日から2週間の外部研修に参加することになった。
環境保全局からそう遠くなかったので、灯里は寮から歩いて来たのだが、それが間違いだった。
少々方向音痴で、いつも駅の出口番号を頼りにしている灯里は、標識の少ないオフィス街で迷っていた…。
(...そうだ、大きい交差点なら標識があるはず!)
灯里は突然ピタッと止まると、交差点へ戻ろうとキュッと方向を変えてターンした。
ドンッ
「あたっ」
勢いよく方向転換した灯里は、斜め後ろから歩いてきた男性にぶつかった。
「うわっ......と。」
「キャッ、ご、ごめんなさい......大丈夫ですか?」
尻餅をついたのは、灯里ではなく、灯里にぶつかった男性だった...。恐る恐るその人に手を差し伸べて謝罪する。
(しまった……訓練のおかげで、ぶつかったくらいじゃ倒れなくなってる。)
尻餅をついた男性は「大丈夫、大丈夫」と笑いながら灯里の手を取り、立ち上がった。
灯里より少し背が高く、風が吹けば折れてしまいそうなほど細身の男性だった。
優しそうな水色の髪をした三十歳くらいの男性は、落ちた鞄を拾い上げた。
「大丈夫だよ。こちらこそぶつかってごめんね。君は怪我しなかった?」
「はい!私はこの通り、大丈夫です。本当にごめんなさい。」
「ところで、何か探してるの?この辺、初めて?」
「はい、霞が原一丁目ビルを探していて...。」
「もしかして、国立エネルギー局のビルかな?」
「はいっ!そうです!」
その男性はにっこりと微笑むと、灯里に今一番必要だった救いの言葉をかけてくれた。
「ちょうど良かった。僕も同じビルが目的地だから一緒に行こうか。」
(た、助かったぁぁ〜〜。親切な人に会えて良かったよぉ...)
灯里は足取り軽く、案内に従って歩いていった。
−−−
「ここがエントランスだよ。あの中央の円形のカウンターが受付だから、そこへ行ってみるといいと思うよ。」
「ここまで連れてきてくださって、ありがとうございました!」
水色の髪のその人は丁寧に説明をしてくれたあと、立ち並ぶエレベーターに乗って行った。
(うわ…別世界…)
外観こそ落ち着いた高層オフィスビルだったが、一歩踏み入れたそこはいかにも"魔法界のエリート"然とした豪華でかつシステマティックな空間になっていた。
中央の円形のカウンターの中央には太い円柱が建っていた。柱にはモザイクの装飾がされており、その煌めきはひときわ目を惹いた。
また、エレベーターの手前には長方形のパネルが複数宙に浮き、経済情報や、現在のエネルギー取引額などの情報だけでなく、近くのおしゃれなレストランの広告なども流れている。
宙に浮かぶ小さめのパネルの前では、多くの職員が何かを操作している。操作を終えた人の元へは、細長い雪だるまのようなロボットが近づき、案内をするかのように共にそこから移動していた。
(あのモザイク…たぶん魔石よね。いくらかかってるの、あの柱…)
キラキラ、というよりもはやギラギラと輝きを放つエントランスで灯里は立ち止まってしまっていた。
「霧島さん、おはよう。」
後ろを振り向くと、白瀬がいた。
「あ、おはよう。白瀬くん…?」
灯里は誰だ?と首を傾げる。
なぜならば、白瀬の横には金髪でさらに金色の眼をした、このエントランスにぴったりの、輝きを集めたような男性が、佇んでいたのだった。
つづく
第三章スマートしました。本日から月、水、金の21:30に新話公開してまいります!
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