参観日の家族参加型授業で嫁たちが無双する(その8)
連続更新2日目です!
セヴィスから出てきた女悪魔は、漆黒の二対の翼を持ち、目は釣り上がり、口は裂けて牙の並んだ恐ろしい形相のをしていた。
悪魔を見るのは初めてだが、マンガや映画で出てくるような典型的な黒づくめの衣装…確かボンテージ服とか言うのかな?それを着ているから間違いないだろう。
凶悪な顔つきなのに胸やおしりが大きな上に露出が多すぎて痴女かと思ってしまうほどだ。
「ひれ伏すが良い、矮小な者よ!」
そう言って悪魔の気が突然膨らんだかと思うと爆発し、辺りのもの全て、重い機械すらも軽々を吹き飛ばしてしまう。
悪魔の目の前に立ったままの俺を除いては。
「な、何だと?貴様、どうして吹き飛ばぬのだ?!」
「ちょっと踏ん張っていたからな」
「そうでなくとも我が瘴気を浴びた人間は正気では居られぬはず!」
瘴気を浴びて正気では居られない…ルーマニア語でもダジャレになっているのだろうか?
『そいつが話しているのは日本語よ。ダジャレを言うつもりは無かったでしょうけどね』
ロリーナ?
どういう事だ?ここはルーマニアなのだからルーマニア語で話しているはずだろう?
『そいつはどこかの世界から召喚された堕天使ね。だから目の前に居るレイジに合わせて日本語を使えるようになったのよ』
異世界転移パックの言語取得みたいなものなんだな。
それと、こいつは悪魔じゃないのか?
『生まれつきの悪魔の翼はほとんどコウモリなど奇っ怪な形状をしているけど、彼女は天使の純白の翼が黒く染ったものだから堕天使なのよ。堕天使は悪魔の一種ではあるけどね』
なるほど。
「貴様、我を目の前にして何をぼうっとしているのだ?…ぬぬっ?こんな奴が、これほどの神気を纏っているだと?とてもそんな徳を積んでいる顔には見えないが」
「人を顔で判断するな!」
「なるほど、その神気で我の瘴気を防いだのか」
ロリーナ、こいつがさっきから言ってる神気ってなんの事だ?
『久遠とブランとツバサと私がレイジの嫁になったことで、レイジが神気を纏うようになったのよ』
神気?神様的オーラかな?
『それもかなり強い神気よ。そいつの瘴気の影響を受けなくなるくらいにはね』
それで吹き飛ばなかったのか。
『吹き飛ばなかったのは神気だけじゃなくてレイジが踏ん張ったせいよ。以前に私の時間移動の権能が効かなかったでしょ?』
そういえばそんな事もあったな。
とか考えていると頭上が騒がしくなった。
「見よ!あれこそが我らの希望!」
「ついに降臨されたか!」
「早速願いを告げに行くのだ!」
と、俺が降りてきた穴から顔を出して様子を見ていたA組の副担任たち3人は穴から飛び降り…るのは無理そうなので迂回して隠し階段から降りてきて悪魔の前に跪く。
「なんだ貴様らは?」
「貴方様をこの世界にお呼びしたのは我々です」
「高位の存在が憑依できるようなハイスペックな生物を作り」
「召喚魔法陣を使ってそこに悪魔を降臨させる実験を繰り返していたのです!」
「つまりお前たちの実験はこの悪魔を召喚するためだったってことか?」
と俺は呆れたように言う。
だってそうだろ?自分や女の子を複製したり、セヴィスなんて化け物を生み出したりしてさ。
「このお方はただの悪魔ではない!人間の命と引き換えに願いを叶えてくれる大悪魔様なのだ!」
「我らの願いは、Aクラス担任のボラード・バルブと副担任のルイス・エビンがこの世界を支配できるようにしてくれ!」
「代償にそこに転がっている私の命を払うからな!」
なんとA組の副担任は気絶している自分のクローンを代償に願いを叶えてもらおうとしている。
クローンを作ったのはそのためだったのか。
「そんなことはさせないでござる!…レイジどの?何を落ち着き払っているのでござるか?」
「いや、願い事が大きい割に代償がしょぼいから、願いなんて叶わないのじゃないかなって」
「「「なんだとっ!」」」
俺の言葉を聞いて副担任たちは逆上する。
「こやつの言う通りだ。そのような願い事をそれっぽっちの魂で叶えられるわけが無い」
「むむっ?!そ、それなら!」
「この学園を我々のものにしてくれ!」
急に話が小さくなったな。
「待て待て。最初の願いを叶えていないぞ」
「叶うのか?!」
「叶わないはずではなかったのか?!」
「やった!これで私たちがこの世界の支配者だ!」
はしゃぐ副担任たち。
しかし悪魔は冷ややかな目でそれを見つつ舌なめずりをする。
「では戴くぞ、汝らの魂全てをなっ!」
「うっ?!」
「うぐっ?!」
「がっ?!」
バタバタと倒れる副担任たち。
「どうなってるでござるか?!」
『大変よ!ここに居るA組の担任と副担任が倒れたわ!魂が抜かれてるわよ!』
そう言うロリーナの声はアヤメさんにも聞こえているわけで、
「それは大変でござる!」
とアヤメさんは慌てているが、俺はとりあえず悪魔の首を右手で掴んで高々と持ち上げてみる。
「ゔっ、き、貴様何をするっ!」
「魂を喰えないように首を締めてみたのだが」
「そんなものとっくに我の腹の中だ!」
「そうか…お前って女の子だよな?」
「お、女の子?!我は女ではあるがか弱い女の子などでは無い!」
「悪者であっても男が女にしてはいけないことってのが綿山家の家訓であってさ」
「家訓?」
「綿山家の男たるもの、悪であっても女の顔を殴らない、女の腹を殴らない、女に傷を付けない」
「それを悪魔相手にも守るのでござるか?!」
「もちろんだ。だから本当はこうやって」
ドゴンッ!!
俺が悪魔から手を離して床を殴るとクレーター状に陥没する。
「腹を殴って魂を吐き出させたいところだが、それ以外の方法でやらないといけないようだな」
それを見てブルっと震える悪魔。
「なっ、なっ、舐めるなあっ!たかが人間風情があっ!」
悪魔は俺の手を振りほどき二対四枚の黒い翼を広げて天井の穴の近くまで飛び上がると、両手に弓と矢を出現させる。
「くたばれっ!」
矢をつがえて射るとそれが20本くらいに分身して俺に襲いかかってくる。
「いくら貴様が剛力でもそれだけのネクタイで防いただとお?!」
矢が速くてセリフの途中で防いでしまったからおかしな言葉になってしまったな。
『それだけの矢を防げるかな?』とか言おうとしていたんだと思うけど。
「レイジどの!そのネクタイはどうなってるのでござるか?!」
「これは制服のネクタイと柄は同じだけどカレンが作ってくれた特別性だよ。特殊な繊維を使ってあって刃物や弾丸も通さないんだ」
「そうだとしてもあれだけの数の我の矢を叩き落とすだと?!」
「マリア姉さんで速いのは見慣れているからな」
さっきの攻撃はせいぜい時速300キロ程度。俺に命中させたいならマッハの半分くらいの速さがないとね。
「それならば防ぎきれないほど射てくれよう!」
「させると思う?」
ふいに悪魔の頭上で声がしてその顔を上げると
「バンディットキイッーク!」
めこっ
顔面に紅の蹴りが綺麗に決まって床に叩き落とされる悪魔。
ところでバンディットって山賊だよね?
賛族のことと勘違いしてない?
威力は申し分ないけど技のネーミングについてはあとで一緒に考えてあげようと思う。
「レイジ、待たせたな!」
「紅!ありがとう、助かったよ」
「おのれええええっ」
悪魔が顔を上げるとその顔にヒビが入って崩れ落ちる。
「これは…仮面だと?!」
「まさかでござる!」
「なんと…」
俺とアヤメさんと紅は驚くしか無かった。
凶悪な顔は実は仮面であり、その素顔はそれとは全く対称的なぽやぽやした顔つきだったからだ。
お読み下さりありがとうございました!




