参観日の家族参加型授業で嫁たちが無双する(その6)。
昨日からの連続更新です!
2022年4月23日言い回しなどを微修正致しました。
○第三者視点
子守り勝負に不正があると聞いた嫁たちの行動は素早かった。
エルフのフィーネは精霊に命じてエリアンと一緒に居る子が寝たフリをしないか見張らせ、気配が限りなく薄い賛族の闇はAクラスの担任と副担任のすぐそばで見張り、この学園にレイジと共に留学してきた明日香はAクラスの担任の個室—―この学園では教師がクラスごとに専用の教員室を持っている——にアヤメを案内した。
「ここがAクラスの担任の部屋でごさるか?」
「ほら、これを」
明日香はドアに取り付けられた表札を指し示す。
『Aクラス担任 ボラード・バルブ』
『Aクラス副担任 ルイス・エビン』
確かにAクラスの担任と副担任が兼用で使っている部屋のようだ。
「担任と副担任は会場に居るから中には誰も居ないはずです」
そう言ってドアに手をかけようとした明日香をアヤメが押し止める。
「下手に触ると危ないでござる」
「あっ、ごめんなさい」
明日香が一歩下がり、アヤメは鍵穴を覗き込む。
「罠らしきものは⋯無し⋯」
カチャカチャ⋯カチリ
「⋯開いたでござる」
「やっぱり忍者って凄いですね」
明日香が感心しつつドアを開ける。
その部屋にあったのは、教師二人のデスクと椅子。
仮眠用の簡易ベッド。
電気ポットとマグカップが置かれた小さなテーブル。
本棚とロッカー。
「レイジ殿はあの女の子たちが人造人間じゃないかって言っておられた故、それを裏付ける証拠とかを探せばいいのでござるな」
「⋯これはテストのプリント⋯これは予定表⋯」
「書き付けは明日香殿に任せて、拙者は物探しをするでござる」
アヤメはロッカーの中やベッドの下を調べ始める。
「ここに変なスイッチがあるでござる」
ガコン
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
本棚が横にスライドして床の上に小さな扉が現れる。
「隠し扉?!」
「おそらく地下室があるのでござる」
扉を開けて狭い階段をしばらく降りていくと突然視界が開ける。
「かなり広い部屋でござるな」
「これは⋯実験室?」
そこにはいくつもの円柱型の水槽が並んでおり、その上下にはパイプや何らかの装置がついている。
そしてその中には人間や見たことの無いような生物が入っていた。
「こういうの、映画とかで見たことがあります」
「拙者にも分かったでござる。人工生命や怪物を作り出す装置でござるな」
アヤメは現代に来てから映画をよく見ていているのでそれが何か分かったようだ。
「明日香殿!あれは先程の女の子でござる!」
「本当!やっぱりあの子たちはここで生み出されたのね!」
「ぬっ?貴様ら、どうしてここに?」
その時部屋の奥から現れたのは副担任。
「闇殿が見張っている副担任が何故ここに居るでござるか?」
「⋯もしや双子の弟ですか?顔や身長は同じですが、手の長さが僅かに違います」
合気道の達人である明日香はひと目見ただけで相手との間合いを把握出来るため、その僅かな違いに気づいたのだ。
「ほう?ひと目でこの私が副担任と僅かに手の長さが違うことを見抜くとは⋯あんな日本人の嫁にしておくのは勿体ない。洗脳してここの研究員にしましょうか」
副担任がパチンと指を鳴らすと、装置の影から一斉に副担任とそっくりな男たちが現れる。
「八つ子?いや、会場に居る副担任を合わせると九つ子でござるか?」
「いえ、おそらくクローンです」
副担任たちが手に手にバチバチと火花の散る警棒を持ってアヤメたちに近づいてくる。
「電撃警棒でござるな」
「そんなもので私たちをどうにか出来ると思うのですか?」
アヤメと明日香は8人の副担任を前に身構える。
「今だ!やれ!」
副担任その2が手を上げると突如天井から大きな網が降ってきてアヤメたちを包み込む!
「やったか?!」
「やったに違いない⋯こ、これはっ?!」
網の中にあったのは大きな切り株だった。
「いつの間にすり変わったんだ?!」
「そもそもこんなでかい切り株をどこに持っていたんだ?!」
「くそっ!どこに隠れたんだ?!」
しかし副担任たちが辺りを見回しても二人の姿は見えない。
ヒュンヒュンッ
「あっ?!」
「うぎゃっ?!」
突然副担任その2とその3の手に何かが刺さり、電撃警棒を取り落としてしまう。
ヒュンヒュンッ
ヒュンヒュンッ
ヒュンヒュンッ
「いだあっ?!」
「うげっ?!」
「なんだ?!何がどうなってるんだ?!」
「ぐっ、透明な刃物だと?!」
「見えなくてはどこから飛んできたか分からんぞ!」
「まさかこれが噂に聞く手裏剣か?!」
「くそっ!隠れろ!」
「もう遅いです」
グルン、ドゴッ
「フギュッ」
隠れようとした副担任は物陰から現れた明日香に上下をひっくり返されると、そのまま床に頭を叩きつけられて気絶する。
「くっ、速い?!ウゲロッ」
「モゲッ」
「ハギュ」
「メゴッ」
さらに4人が明日香に気絶させられた所で副担任その7が懐から銃を取り出して明日香に向ける。
「あっ、ここで銃を使うな!」
「機械に当たったら大変なことになるぞ!」
「当てればいいんだろっ!」
パンッ!
「ふっ」
明日香は小馬鹿にしたような声を出して難なく弾丸をかわす。
合気道の達人である明日香にとっては撃つタイミングと弾道を見切ることなど造作もないのだ。
「なっ?避けただと?!」
「くっ、俺も撃つぞ!」
「3人で一斉に撃て!」
「拙者を忘れては困るでござる」
次の瞬間に棒手裏剣が3つの銃口に次々と突き刺さる。
ブボンッ!
「「「ぎゃああっ!」」」
同時に撃たれた銃は暴発し、右手を抑えてのたうち回る副担任たち。
「観念するでござる」
「よし、ロープで縛って会場に連れて行こう」
「くっ、こうなったら『セヴィス』を⋯」
「馬鹿な!アレを出したら大変なことになるぞ!」
「構わん!どうせこのままでは我々は破滅だからな!」
副担任その8がポケットから取り出したリモコンのボタンを素早く押すと、アナウンスが流れる。
『セヴィスの解放を行います。1分以内に退避してください』
ビーッビーッビーッビーッ
さらにブザー音が鳴り響き、一番奥の巨大な装置から濁った水が抜かれていく。
徐々に姿を表していくセヴィスは様々な動物を組み合わせたような異形の姿、つまりは合成獣であった。
その体長は見えているだけでも5メートルを超え、腕だか触手だか分からないものの先にはもれなく牙の揃った口が付いている。
「おい!俺たち!早く起きろ!セヴィスに喰われたいのか!」
副担任3人は気絶している5人を蹴飛ばしたりして起こそうとするが、目覚める様子は無い。
「また新しい俺を作ればいいからとっとと逃げるぞ!」
「そうだな!」
「急げ!」
そう言って副担任3人は上に上がる
「1分?!明日香殿!早く逃げるでござる!」
「でもまだ人が!」
「明日香殿に何かあったらレイジ殿が悲しむでごさる!」
「くっ⋯」
横たわる副担任たちを放置して逃げようとしたが、地上への扉は閉められてしまう。
レイジの元へ行ける『通い妻のお守り』は近くにあるドアを通じて転移するため、閉められていては使用できないのだ。
「しまったでござる!」
「私が迷っていたから⋯」
「爆弾を持っているからそれで扉を吹き飛ばすでござる!」
ガシャーン!
「ゴゲーア」
砕ける音と不気味な声を聞いて二人が振り向くと、そこには水槽を割って外に這い出したセヴィスの姿が。
例えるならば、イソギンチャクの触手が全て化け物の顎になっていると言えばいいだろうか。
そのため動きはのろいが、触手はかなりのスピードで動いている。
「爆弾はひとつしか無いでござるが、逃げ道確保に使うか、あの化け物に使うか、どうしたものでござろうか?」
「⋯⋯」
バリーン!ガシャーン!
二人が悩んでいると、セヴィスは周りの水槽を触手で次々に砕いていき、中に入っていたよく分からない生物を引きずり出して食べていく。
「あっ!あっちの水槽にはさっきの女の子とそっくりな子が入っているでござる!」
「なんですって?!」
水槽は次々に割られて、その女の子は今にも喰われてしまいそうだ。
「アヤメさん!」
「わかっているでござる!」
二人は直ぐにセヴィスの元に駆けていき、明日香は途中で拾った電撃警棒で触手を叩いて怯ませ、アヤメは一番大きな口目掛けて爆弾を投げ込む。
ボグンッ!!
爆弾はその触手を吹き飛ばし、その隙に明日香が壊れた水槽の中から女の子を救い出した。
「アヤメさん!こっちは大丈夫です!」
「さて、これからどうするでござるか?」
「大丈夫です。『通い妻のお守り』は私たちの危機をレイジくんたちに伝えてくれてますから」
ゴゴンッ!!!
轟音と共に天井が揺れる。
アヤメたちの所に向かいかけていたセヴィスは天井を見上げるような素振りを見せる。
ゴゴンッ!!!
ゴゴンッ!!!
ゴゴンッ!!!
轟音と共に天井のヒビは広がっていく。
ドゴゴゴゴゴゴンッ!!!!
一際大きい音と共に天井は崩れ、そこから一人の男が降りてくる。
言うまでもなく彼は
「待たせた。アヤメさん、明日香先輩」
「「レイジくん(どの)!」」
「勝負の最中なのにごめんなさい!」
「二人の安全にはかえられないよ。それに⋯俺はまだ勝負をすててはいない」
そう言うとレイジはキッとセヴィスを睨みつける。
「俺の嫁達を脅した罪は重いぞ!化け物!」
お読みいただきありがとうございます!




