参観日の家族参加型授業で嫁たちが無双する(その4)。
昨日からの連続更新です!
試合再開。
その後は一進一退の攻防で1点リードのまま、前半の残り時間が1分を切る。
「エリアン!やれ!」
「兄貴、任せろ!」
ようやくキーパーの俺とシュートしようとするエリアンの、初めての代表者対決だ。
「くらえっ!必殺イナズマシュートッ!」
エリアンはなんと4メートルも飛び上がってボールを俺の頭上から叩きつけるようにシュートしてくる!
この人並み外れた身体能力、もしやエリアンも魔族の血を引いているのか?
「だが甘いっ!」
俺はそれをガッシリと受け止めたが、
ビリビリビリビリッ!
「うおおっ?!」
ボールが帯電しているだと?!
イナズマシュートとは本当に稲妻そのものなのか?!
俺はどうにかボールを取り落とさずに抱え込むと、やがて帯電は無くなり普通のボールに戻った。
「「「レイジ!」」」
「大丈夫だ、このくらい大したことは無い」
俺は笑顔で嫁たちに手を振る。
ちょっとビリッとして驚いただけだ。
「ひいっ?!」
「ひゃあっ?!」
俺の笑顔はFクラスの仲間にはなんともないが、Aクラスから悲鳴が上がる。
これはあとでAクラスの子たちとも友達にならないといけないな。
「ちっ、十万ボルトに耐えるどころか受け止めてしまうのかよ。せっかく俺がここまで能力を隠しておいたのになあ」
「十万ボルトだと?エリアン、まさかお前は⋯」
「ふっ、ようやく気づいたか」
俺はエリアンにビシッと指を突きつける!
「お前の正体はピカ○ュウだな!」
「違うわっ!俺は雷神トールの力を借りられるのだ!」
「なにっ?!」
北欧神話に出てくる雷神トールだと?!
「この学校の生徒の多くは魔族だが、人間でありながら神の力を借りられる俺こそがこの学校の覇者に相応しいとこの家族参観で知らしめてやる!」
今までそれを隠していたのは俺に確実な一撃を与えるためだったのか。
だけど家族参観で知らしめてやるって言われると凄みが半減するよな。
「さあ、これからが本番だ!」
ピピーッ!
意気込むエリアンを押しとどめるように前半終了の笛がなり、休憩に入る。
「笛に助けられたな。だが俺の神の力が怖いのなら降参してもいいのだぞ?⋯って貴様、何してやがる!」
「見て分からないか?休息だ」
俺はフィーネの膝枕で頭を撫でられながら休息を取る。
「旦那様、お疲れ様ですわ」
「ありがとうフィーネ。後半はキーパーを交代してもらってシュートを決めてみせるからな」
「ふふっ、楽しみにしていますわ」
フィーネの香りをかぎながら目を閉じると先程の電撃の痛みも癒えていくようだ。
「ぬうううっ、後半で貴様を絶対にギッタンギッタンにしてやるからな!」
エリアンの言葉が『ギッタンギッタン』って翻訳されて聞こえたけどルーマニア語にも似た表現があるんだな。
そして後半が始まる。
「じゃあ行こうか。後半のキーパーはブランに頼むよ」
「うむ我に任せよ」
「わらわも今度こそ活躍してみせるのじゃ」
前半に思うように活躍出来なかった久遠は特に気合いが入っているようだ。
「もらった!」
俺がエリアンの隙をついてボールを奪うと、
「うおおおおおっ?!」
またしても帯電していたボールからダメージを受ける。
「やはり30万ボルトでも足りないか」
「くっ、だがボールは渡さないぞ!真綾さん、パス!」
「そうはさせるか!」
「ナイス兄さん!」
俺のパスが敵Cに奪われるがそこに真綾と沙綾が立ち塞がり激しく体を擦り合わせるように動く!
「なんだこの動きは?2人なのに3人に見えるだと?!」
「見たか!うちらの必殺技!」
「名付けて『十円玉を2枚擦り合わせると3枚に増えて見える分身』や!」
二人は押し合いながら前後に動くことで三人目の残像を生み出していたのだった。
「しかし3人に分身してもそんなにくっついていては簡単に抜けるぞ!」
そう言って真綾たちを右から抜こうとする敵C。
しかしそう甘くは無い。
「ここは通さないでござ⋯うちが通さへんで!」
「なっ?!4人目だと?」
「後ろにもわらわ⋯わてが居るねん」
「なんだとっ?!」
口調でわかるけど4人目と5人目はアヤメと久遠が真綾たちに化けているのだ。
アヤメは忍術で化けているのか真綾に瓜二つで、久遠は神力で変化しているせいか少しだけ紗彩より背が低い。
「もらったのじゃ!」
「しまった!」
それでも久遠はボールを奪うとすぐに元の姿に戻ってドリブルで敵陣に攻め込むと俺にパスをくれる。
「レイジ!全力じゃ!」
「任せろ!」
俺はボールを思いっきり敵ゴール目掛けてシュートする!
「真正面だと?ふざけるなぐぎゃあああっ!!」
「兄貴いっ?!」
俺のシュートを真正面から受け止めたキーパーFはそのままボールごとゴールネットに吹き飛ばされて泡を吹いて気絶する。
「兄貴っ!しっかりしろっ!『電気ショック』!」
「はうっ?!」
雷神トールの力は気付けにも使えるとか便利そうでちょっと羨ましいぞ。
ともあれキーパーFは目が覚めたようなのでゲーム再開だ。
「兄貴、俺がキーパーをする」
「すまん、任せたぞエリアン」
プロでも取れない俺のシュートをエリアンが止められるのか?
だが、その心配は杞憂だった。
「サンダーネット!」
「なんだと?!」
ボフンッ!
その後再び俺が放ったシュートをエリアンは網状の雷で受け止めて、ボールがその衝撃に耐えきれずに破裂してしまった。
「サンダーネットある限り、ゴールは絶対に許さないぞ!」
そして後半残り2分のところでプロの本気を出した敵Dがキーパーブランをフェイントで誘い出してゴールを決めてきた。
これで点差は無し。
「審判!同点の場合はどうなるんだ?」
「延長は無しでスローコンテストを行う!」
スローコンテストとはサッカーで言うところのPK戦らしい。
このまま終わると勝てないかもしれない。
「レイジよ!我に秘策がある!」
「ブラン?」
「耳を貸すのだ⋯⋯で⋯を⋯してだな」
「いいのか?」
「我を信じろ」
ブランの作戦のためには何としてもこのボールをゴールまで繋がないと!
「取ったでござる!久遠殿!パス!」
「アヤメ、ナイスじゃ!ツバサ!頼んだのじゃ!」
「ワレに任せよ!レイジ!これを受け取るのだ!」
「おう!」
敵のボールをアヤメが奪い、久遠と空中高く飛び上がったツバサを経由してゴール前の俺の所にパスが回る。
「何度シュートしても俺のサンダーネットは破れん!」
「ブラン!頼むぞ!」
「なに?!キーパーが上がってきてるだと?!」
「借りは返すぞ!ぬううんっ!」
俺からボールを受け取ったブランはボールを持ったままジャンプしてゴールを阻むサンダーネットに飛び込んでいく!
「自殺行為だぞ!」
「それはどうかな?」
ブランの身体がサンダーネットに触れた瞬間、体が痺れるどころかサンダーネットがあっさりと霧散してしまう。
「なんだとぉっ?!」
「終わりだっ!」
ボスッ!
ピピーッ!
ゴールネットが揺れ、残り時間ちょうどゼロ秒で得点が入る。
「試合終了!この勝負、Fクラスの勝利!」
「「「「やったああっ!!」」」」
「「「「くそおおおっ!!」」」」
歓声を上げるクラスメイトたちと落ち込むAクラスの生徒たち。
「なぜだ?!どうして俺のサンダーネットがお前の体に触れただけで消されたんだ?!」
「雷は五行で言うところの木の属性。金の属性である我はそれを破ることができるのだ」
「⋯⋯どういう意味だ?木とか金の属性なんて聞いたことがないぞ?」
五行の属性の解釈は西洋人には難しいだろう。
俺もゲームレベルの知識しかないけど、白虎は五行の金を司っていて、雷は五行では木に属するから『金剋木』でサンダーネットを霧散できたらしい。
さて、これで相手がナイトでクイーンを取るのを阻むことができたわけだが
次の手はどうしようか?
○第三者視点○
「ありえないありえないありえないっ!ボクちんのAクラスがFクラスに負けるなんてあってはならないぞぉ!」
「心配ありませんよ。キングを取る時はあの『?』と書かれた箱の中にある札に書かれた勝負になりますから」
「副担任!それでもあの化け物揃いの奴らに勝てるわけないだろう?!」
「いえ、既にあの箱の中身はFクラスの代表である綿山レイジが苦手とする競技にすり替えてあるのですよ⋯フフフ」
「おお!でかしたぞ副担任っ!これでボクちんの大勝利間違いなしぃ!」
果たして箱の中身は何にすり替えられたのだろうか?!
「これで最後だ!クイーンでキングを取るぞ!」
そう宣言してレイジは『?』と書かれた箱に手を入れて中にある札を一枚取るぞ。
『子守り勝負』
「は?」
「え?」
レイジだけでなくエリアンまで絶句するこの競技の内容とは?!
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