史実は当事者が語る方が正しい。
三日連続更新の二日目です!
フィーネ、かなみさん、久遠、初音ちゃん、そして5人目の嫁さんが入ってきた。
「レイジっ」
弾んだ声で俺の名を読んで手を振ってくれるのはジャンヌ。
「あの可愛い子もレイジの嫁なのか?!くそぅっ、うらやましいな!」
「フランス人っぽいな。でも、どこかで見たことがあるような気がするけど?」
実際のジャンヌはよく言われている金髪碧眼じゃなくて黒髪黒眼だからたぶん分からないだろうな。
「では授業を始める」
もっと家族参観に大勢来るかと思ったけど教室が狭くなるから授業ごとに交代で来るのかな?
「…というわけでそこで立ち上がったのが農民の娘であったジャンヌ・ダルクだ」
偶然にも世界史の授業はジャンヌの参加していた百年戦争のことだった。
「…そしてジャンヌ・ダルクは先頭に立つのではなく、旗を振り回して味方を鼓舞していたのです」
え?先頭に立って戦っていたんじゃないの?
「せんせー!ジャンヌ・ダルクって鎧を着込んで剣を振り回すイメージがあるんですけど!」
俺が言いたいことをジェイソンが代わりに言ってくれたが、先生はそれを否定する。
「いえ、女性が戦うことを良しとしない時代でしたから、ジャンヌ・ダルクは作戦を立てて味方を鼓舞するという役目を担っていたようですね」
本当にそうなのかな?と、俺がジャンヌの方を見ると首を左右に振って否定している。
「先生、それは本当ですか?」
と、俺も手を挙げて聞いてみる。
「最近の研究ではそうなっている…と言いたいところだけど、もっとちゃんとした証拠を出しましょうか」
先生はそう言うと、廊下の扉を開け一人の男性を招き入れる。
精悍な顔立ちと逞しい体つき。
漆黒のマントを纏っている彼は…
「ああっ?!あの人は!」
「歴史の生き証人、ヴァンパイアの真祖、カルズ様だ!」
ここの学園長の祖父にあたり、年齢は600歳を超えるそうだ。
するとリアがこっそり教えてくれる。
「カルズ様はジャンヌ・ダルクに会ったことが自慢らしくて、家族参観の時は必ず歴史の授業があるクラスに出向いてジャンヌ・ダルクのことを学ばせて、自分がかつて他の英雄と知り合いであることを自慢するらしいっす」
600歳かあ。最近感覚が麻痺したのか600歳くらいではあんまりすごいと思えないな。
ともあれ、カルズさんのジャンヌ・ダルク話が始まった。
「そしてジャンヌ・ダルクは旗を振りかざすと、兵士たちはそれに従うように砦に群がり、あっという間に陥落させたのだ。その時のジャンヌの姿はまるで天使のように私の目には映ったのだよ…ん?何だね、君は?」
いつの間にかカルズさんの目の前にジャンヌが移動していた。
「もしかして私のサインが欲しいのかい?それならあとで…」
「カルシーか?」
「は?」
ジャンヌに『カルシー』と呼ばれて硬直するカルズさん。
「な、なぜその呼び名を?」
「やっぱりそうなのね?!大きくなっていたからすぐに分からなかったけど、やっぱりあの泣き虫のカルシーだったのね!」
「ま、ま、まさかあなたはジャンヌ・ダルク?!処刑されたはずでは?!」
「この通りちゃんと生きているわよ」
「分かったぞ!ジャンヌ・ダルクの家族の子孫だな?それでそっくりなのだろうが?!」
「家出してきたカル坊は狼に襲われていたところを私たちに助けられて…」
「な、なぜその事を?!」
「あの時は盛大に垂れ流していたわよね。涙とおしっ…」
「うわああああっ?!本物です!あなたは間違いなくジャンヌ・ダルクですっ!」
ザワッ!
このやり取りをカルズさんが仕込んだ演劇のようなものと思っていたクラスメイトたちからどよめきが起こる。
「本物のジャンヌ・ダルクだって?!どうして生きてるの?!」
「処刑から免れてもあれから600年くらい経ってるのに!」
真実を言うのは簡単だが、さすがに過去に行って助けてきたとは言わない方がいいよな。
どうしようかと悩んでいるとフィーネがジャンヌの横に進み出た。
「ジャンヌさんは私たちエルフの里で保護していましたの。詳しいことは言えませんけど、治療のために長らく仮死状態にされていて、つい最近目覚めましたのよ」
エルフであるフィーネの説得力は抜群で、クラスメイトはもちろん先生やカルズさんも信じたようだ。
「それで…戦いが怖くて進軍中に逃げ出したカル坊には私の戦っている様子が見えたのかしら?」
「えっ?あっ、それはまだその当時は私は真祖ではあるものの力は弱くて、やむなく………」
「おそらく人から聞いた話で私の事を知ったのでしょうけど、当時は女性が先頭に立って勝ったなどと言いたくない将軍や兵卒ばかりだったのよ。だから私が旗と槍を左右の手で持って戦っていたという話はまったく伝わらなかったのよね」
「旗と槍をそれぞれの手で持っていただと?!そ、それなら聞いたことがあったぞ!だが華奢なジャンヌ・ダルクがそんなこと出来るはずがないと思って嘘だと言い張ってきたのだが…」
もしかしてジャンヌ・ダルクの間違った認識が広まったのはカルズさんのせい?
「私は農家の娘で膂力が人一倍強かったのよ。ほら」
ひょいと片手でカルズさんの襟元を掴んで頭上まで持ち上げるジャンヌ。
「あわわわっ?!下ろしてくれえっ!」
「これに懲りたら、見てもいない話を広めるのを辞める事ね」
ジャンヌがカルズさんを下ろすと、彼は「すみませんでしたーっ!」と言いながら逃げるように教室を出ていった。
「邪魔をして悪かったわね。授業の続きをしてもらえるかしら?」
「あ、あの…」
先生はジャンヌの元に歩み寄ると、
「むしろあなた様に歴史の授業をしていただけないだろうか?!本当の意味での生き証人なのだから!」
と興奮したようにジャンヌに頼み込んだ。
「でも、私は最近までエルフの元に居たから、知っているのは自分が戦った内容くらいよ」
「それでも構いません!」
そして歴史の授業はジャンヌによる講演のようになってしまった。
「ジャンヌ先生!先生は金髪碧眼じやなかったんですね?」
「本来はこの通り黒髪黒瞳ですけど、ミカエルの祝福があった時は、戦いの時にこのように」
ジャンヌの体から金色のオーラが立ち上り、髪と瞳の色が金色に変わる。
「神の力で戦うことが出来たのよ」
「すっ」
「す?」
「「スーパーサ○ヤ人だあああっ!」」
クラスは再び騒然となり、授業はそこでおしまいとなってしまった。
休み時間。
「ミカエルの加護ってまだあったの?」
「あったら捕まったりしないわ。これは女神ロリーナの力よ」
ロリーナと体を平均化した時に力も分け与えられたんだな。
「それにしても…」
今度はフィーネの所に生徒と保護者たちが群がっている。
「本物のエルフは初めて見ました!何とお美しい!」
「エルフの里はどこにあるのですか?」
「馬鹿、言えるわけないだろ」
何を聞かれてもフィーネはニコニコしているだけだが、特に問題はなさそうだな。
あれ?
誰かの母親がかなみさんの顔を覗き込みながら近づいていくぞ?
「もしかして…あなたはBWAの駒井坂かなみさんじゃないですか?!」
「え?バレた?あたしの変装は完璧なはずだったのに?」
「やっぱりそうなんですね?!大ファンなんです!私も娘も!ほら、アニサ!早く来なさい!BWAの駒井坂かなみさんよ!」
「本当?!…あっ、本当だっ!」
変装がバレたかなみさんはアフロと伊達メガネとマスクを外す。
「「駒井坂かなみだと?!」」
「本当だ!」
「ファンです!サインください!」
「レイジの嫁さんは高貴なエルフとか有名人ばかりなのか?」
「さすがにこの小学生の子は………子役の星、久比岐初音ちゃんだと?!」
「あ…はい、そうですが…」
あれ?初音ちゃんって海外でも有名人?
「突然芸能界を引退したのはレイジと結婚したからか!」
「我らの天使がああっ!」
なるほど、先程ロリコン認定されていた生徒たちは日本の子役とかにも詳しいんだな。
そのままサイン会が始まってしまう。
なんでフィーネまでサイン頼まれてるの?
「ぬうう。わらわも由緒正しき稲荷神だというのに」
「久遠の凄さは俺が知っているからいいだろ?」
「そうじゃな!わらわはレイジにだけ認めてもらえば十分なのじゃ!」
そう言うと久遠は俺の腕にしがみついてきた。
ガラッ
「間に合ったじゃん!」
「もう歴史の授業は終わってるみたいよ」
「あなた!来たわよ!」
「次に間に合ったからええやろ。な、沙彩」
「そやな、真綾」
入ってきたのはBWAの残り4人である氷室アンナさんと中島早苗さんと有朋星奈さんと双子の桃山真綾さんと沙彩さんだ。
…なんだけど…
5人はさっきまでかなみさんの被っていたのと同じモコモコアフロを被り伊達メガネを掛けてマスクを付けていた。
「あれ?かなみ素顔さらしてるじゃん?」
「あはは、ごめんな。あたしの正体バレたからさ」
「それならうちらもはずすか」
「そやな」
あっ、そんな一度に顔出しすると…
「BWAが揃っただと?!」
「ま、ま、ま、ま、まさか全員が?」
「うん、俺の大事な嫁さんだよ」
「「「やっぱりかあっ!!」」」
そしてまた男子生徒たちは血の涙を流すのだった。
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