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毒にも薬にも

3日連続更新の2日めです!

学園長は報告書を示しながら驚くべきことを言ってきた。


「どうやらレイジくんの血は、闇の者にとって劇薬になるみたいよ」

「劇薬?!」


俺の血がどうして?


「悪い言い方をすれば『麻薬』とも言えるわ。良い言い方なら『良薬』ね」

「どういう意味ですか?」

「その血液は闇の者にとって毒にも薬にもなるという事よ」


なんだって?!


「それなら、俺の血を売ったら大儲け出来るかもしれないな」

「レイジらしい発想だけど、普通は自分の血を求めて闇の者に襲われないか心配するところだからね」


はやては肩をすくめながらそう言う。


でもトラブル体質なのはわかってるから、自分が襲われかもって心配する感覚は無いんだよな。


「でもこの事知ってるのってここに居る人だけじゃないの?においとかで分かるんだったらとっくに襲われてるはずだよね?」

「レイジくんは一見脳筋ぽいのにきちんと考えているのね」

「脳筋扱いは心外です、学園長」


俺ってそんなふうに見えるのか。

結構ショックだなあ。


「とりあえず、これ以上『犠牲者』を出さないようにしてもらえるかしら?」

「まさかアリスがどうかしたんですか?!」


その時、学園長室のドアがバタンと開いて、アリスが入ってきた。


「はあ、はあ、はあ、、、レイジぃ、レイジの血がほしいのぉ」


アリスの目は血走って口はだらしなく開き、とても正気では無さそうだ。


「その血には『中毒性』もあるらしいから血がほしくなって暴れたりするのよ。麻薬と言ったのはそのせいね。それにしてもまさか闇の者専用の隔離病棟から逃げ出してくるなんてね」

「仕方ないからまた俺の血をアリスにあげるよ」

「待ちなさいレイジくん。何度も飲ませていてはいつまで経っても治らないわ。だから…」


学園長はそう言うと、棚からコップとミネラルウォーターを取り出した。


「このコップに血を採取して水割りにすればいいわ」

「どのくらい要ります?」

「とりあえずコップ半分くらいかしら?」

「学園長!レイジにどれだけ血を出させる気なんです?!レイジの事だから本気でやっちゃうからね!」


うん、そのつもりだったけど。


「レイジくんならそのくらい平気かと思って。ほら、献血でも500ミリリットルくらい採るわよね?」

「飲ませようとするからたくさん要るんだよ。レイジ!これを使って!」


はやてはバッグから蜂蜜の瓶を取り出して渡してくれる。


これは今日のお出かけではやてが買っていたルーマニア産の蜂蜜だ。


なんでもルーマニアはヨーロッパで一番蜂蜜がとれて、品質も世界最高水準らしい。


「これに少しだけ血を混ぜて舐めさせればいいんじゃないかな?」

「ありがとう、はやて。じゃあ、その蜂蜜はまたあとで買って返すから」


俺は学園長にカッターナイフを借りると指先を傷つけて血を出し、蜂蜜瓶の中に垂らす。


「これでよしと。学園長、小さいスプーンってありません?」

「それならここに、うわっ?!」

「わあっ?!」

「レイジ?!」


アリスが学園長を押しのけて俺にのしかかってきた!


そして俺がさっき切った指に食らいつく!


「はむはむ、ちゅーちゅー♪おいしいのらー♪」

「しまった!またそのまま血を飲まれてしまったわ!」

「いえ、大丈夫です」

「えっ?」


しばらく俺の指を舐めていたアリスの表情がどんどん落ち着いたものへと変わっていく。


「ちゅぱちゅぱ…はっ?!わ、わたちは何をしているのらあっ?!」


アリスは俺の指を舐めていたことに気づくと、素早く学園長室のカーテンの後ろに隠れる。


「は、恥ずかしいのらあっ」

「まあ不可抗力だから仕方ないよ」


そして学園長がアリスに状況を説明する。


「そういうことだったのね。でも、さっきはそのままの血を舐めたのに、どうしてあたちは正気に戻ったの?」

「押し倒される時に咄嗟に血の入った蜂蜜を別の指につけて舐めさせてたんだよ」

「さっすがレイジ!」


アリスにはこの蜂蜜を瓶ごと渡して、吸血衝動が出たら舐めてもらうことにした。


「一気に全部舐めたらダメだぞ」

「そんなことしたら太るからいやなの!」


これって太るフラグじゃないよね?


心配だけど別の寮だから見張っている訳にもいかないよな。


「そうそう、レイジくんのお姉さんにも血の検査を依頼しておいたよ。家族なら同じような性質かもしれないからね」

「えっ?!もしかして、マリア姉さんに話したんですか?!」

「そうだけど…もしかして血のことは秘密にしておきたかったのかしら?でもこれは君のお姉さんも知っておくべきでしょうし…」

「違います!俺が喧嘩したことをマリア姉さんに話したんですよね?」

「そうよ」

「ああ…時間的にもう手遅れかな?」

「手遅れですって?何が?」

「えっと…やっぱりか」


学園長室から校庭を見下ろした俺はため息をつく。


「学園長、ちょっと校庭を見てもらえます?」

「校庭に何かあるのか?…ええっ?!」


学園長はその光景を見て目を見開く。


そこには、ものすごい数の狼男とサソリ人間たちが土下座をしていたのだ。


「レイジさまっ!お許しください!」

「我々は二度とあのような真似をいたしません!」

「狼男とサソリ人間は仲良くなります!」

「「「「どうかお許しを!」」」」



「どうなってるんだこれは?」

「マリア姉さんが俺に危害を加えようとした相手に『制裁』を加えてきたんですよ」

「こんな短時間に?!」

「マリア姉さんはその気になればほぼ音速で動けますからね」


俺のケンカのことを聞いてすぐに狼男とサソリ人間の偉い人の所に殴り込みに行ったのだろうな。


「狼男とサソリ人間の対立は200年以上もの間ずっと続いていたのよ。それがこんなことになるなんてね」

「レイジのお姉さんのおかげで対立が解消されたみたいだね」

「まったく、君たち綿山家の者は本当に規格外ね」


呆れたように学園長は言うけど、もうそういう反応にも慣れましたから。





そしてその日の夕方。


コンコン


ジョジ○立ちをしながらジョ○ョの話で盛り上がっている俺たちの部屋のドアがノックされた。


「レイジっ!」

「あれ?アリス?こんな時間にどうしたの?」

「まだ門限じゃないからいいの。それよりも謝りたいことがあるんだけど…」

「何?」

「レイジの血を入れてもらった蜂蜜の瓶が無くなったの!」

「えっ?本当に全部舐めちゃったの?!」


フラグ回収早過ぎない?


「そうじゃなくて盗まれたみたいなの!」

「え?何で?」

「お風呂に入っている間に、脱衣かごに入れてあった瓶が無くなってたのよ!」

「何でそんな所に入れておいたの?」

「だって、いつ血が欲しくなるか分からないもん」


それじゃあ仕方ないか。


「でもその辺で売ってる普通の蜂蜜が盗まれたってことは、俺の血が入っているって知っている人なのかな?誰かにこの事を教えたりした?」

「誰にも教えてないの」


うーん、それならどうしてなんだろうか?

俺が考え込んでいたら、はやてがアリスに問いかけた。


「ねえ、人前で美味しそうにそれを舐めたりしなかった?」

「…してた。何それって聞かれたけど、他の人に話したら駄目だと思ってすぐにしまったの」

「それだよっ!それを見ていた誰かが興味を持って盗み出したんだよ!」

「でも、その時の寮の食堂にはたくさん人が居たから誰か分からないの」


女子寮に許可があれば入れるとしても、こんなことで男子生徒が聞き込みをして回るわけにはいかないだろうし…。


「レイジのお姉さんに調査を頼んでみたら?」

「そうだね。じゃあ連絡しておくよ」





翌朝。


登校して教室に入ると、『レイジ様へ』と書かれた手紙が俺の机の中に入っていた。


「果たし状かな?」

「きっとラブレターだよ!果たし状なら『様』とか付けないよ」

「なんで机の中に?」

「ここは土足で下駄箱が無いからじゃないの?」

「うーん、どうせなら校舎裏とかで渡して欲しかったな」

「へー、レイジってそんな願望あるんだ」

「RINEで告白されるよりいいと思わないか?」

「そうかもしれないね。って、ここで読むの?!」

「だってこれが何か開けないとわからないだろ?ハートマークでも付いていたら流石に人前で開けないけどね」


中身は手書きの手紙だった。


もちろんルーマニア語で書いてあるけど、女神ロリーナのおかげで普通に読める。


「なになに…え?これって…」

「どうしたの?なんて書いてあるの?」

「それで場所は校舎裏か…」

「告白の呼び出しだ!やったねレイジ!」

「違う。決闘みたいなものだよ」

「本当に果たし状だったの?!」


そこに書かれていたのはこんな文面だった。


『聖トランシルバニア学園より留学してきたレイジ・ワタヤマは、校舎裏にて『スピード勝負』を受けよ。生徒会より』


「えっ?レイジのお姉さんじゃなくてレイジがスピード勝負するの?!」

「どうやら誰がなんの勝負を受けるかは選べないシステムみたいだな」

「でもレイジって足速いから大丈夫だよね?」

「どうだろうね。油断はしないけど」


ここは人外が集まっているから俺なんて目じゃないくらい速い生徒も沢山いるんじゃないかな?




そして校舎裏に行った俺とはやて。


「校舎裏広っ?!」

「校庭より広くないかこれ?!」


練習では校庭しか使ってなかったから、校舎裏がこんなに広いとは思わなかったぞ。


しかも芝が一面に敷いてあって野球やサッカーをするのにもってこいだな。


そしてそこで待ち構えていたのは編入した時に見た覚えのある、生徒会の面々だ。


「よく来たな。俺は生徒会長のアリオン・ジェングリア。今から行うスピード勝負の内容は、2400メートルのトラック競走だ」

「半端な距離だなあ」

「半端ではない。ふっ、日本人風情にはこの距離の素晴らしさがわからないか」


素晴らしさってどこがだろう?

何のことを言ってるかさっぱり分からないけど?


「芝2400メートル、右回りのトラック…ま、まさか?!」

「はやて、何かわかったのか?!」

「レイジ!これは競馬の『凱旋門賞』と同じだよ!それを模したレースなんだ!」


競馬だって?!

そういえば、スタート地点に名前は知らないけど馬が入るゲートがあるぞ!


「気高きケンタウロス一族である私、ポリア・ギルバーンがお相手するわ!」


そう言うとポリア副会長はケンタウロスの姿になった。


これは本気でやっても勝つのは困難かもしれないな。


「よし、それならレイジもこれを付けるんだ!」


はやてが手渡してくれたのは動物の耳が付いたカチューシャだ。


「何これ?ネコミミ?」

「ウマミミのカチューシャだよ!レイジは『ウマ息子・・』になって走るんだ!」


え?これって必要かな?

気が進まないけど、せっかくだからやってみるかな。


装・着・っ!


「ウマ息子、レイジゲキシンオー見参!」


と、名乗りを上げてポーズを取ってみる。


「似合ってるよ、レイジ!」

「「「ぐわああああーっ!」」」


褒めてくれるはやてと泡を吹いて倒れる生徒会一同。


ウマ耳は没収となった。

解せぬ。

お読みいただきありがとうございました!

たくさんのブックマークや評価をありがとうございます!ご期待に添えるようにがんばります!

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