賛族5人目はステルス付き
ステルス付きキャラっていいですよねえ。
しかも一緒に居る人までステルスかかるならいちゃつきやすそう。
工房の親方に今日の仕事は昼からと言われたので俺は改めて紅さんの家に行ったが留守だった。
おそらく王宮に出勤しているのだろう。
代わりに今日は休みらしい蒼さんが居た。
「紅さんと同居しているんですか?」
「私たち賛族の生き残り5人は生まれた時より紅様と一緒に育ったし、ここでの家も一緒なんだ」
「仲いいんだね」
「仲がいいなんて失礼なことは言えるものか!紅様は賛族の長の娘。幹部の娘である私たちとは格が違うのだからな」
「でも紅様…私たちを…妹みたいに…」
「白?!お前、今日は非番じゃないだろう?どうして帰ってきたんだ?」
名前を聞く前に想像が付くくらい真っ白な肌をした女性が白さんか。
「紅様に…レイジさんと…結婚しろと…」
白さんは口数少ない人なんだな。
とか思いながら白さんをじっと見つめていたら、目が合って白さんの顔が真っ赤になった。
「はきゅう?!…すきい…」
「え?何?」
「いやあ…見ないで…」
白さんはフラフラと部屋の隅に行って壁を向いて座り込んでしまった。
「おい、おまえ。白に何をしたんだ?!」
「いや、見ただけだけど」
「うそつけ!あんなに真っ赤になるわけないだろ!おい、白、こいつに何をされた?!」
「…」
「なんだと?聞こえないぞ」
白さんの口元に耳を持っていく蒼さん。
「ふんふん、レイジさんが格好良すぎて、一目惚れした?!えっ?声に出して言うなって?!」
全部聞こえてますが…俺なんかに一目惚れしてくれるなんてちょっと嬉しいな。
「もう直視できない…ってどうするんだよ、そんなんで?!とりあえず、私は不本意だがこいつと…いや、御屋形様と結婚するからな!」
「御屋形様?」
「私たちの主である紅様の旦那様だから御屋形様だ」
「わかったけど、不本意なら本意になるようにがんばるよ」
「普通は不本意なら結婚しなくてもいいと言うものではないのか?」
「他人に勧められた結婚だとしても、お互い好きになれるようにする努力は怠らないよ」
「私より若いのに、考え方はずっと大人なんだな」
そう感心したように蒼さんは言うと、ずいっと俺に近づいてきた。
「結婚を誓えばいいんだな?私、蒼は御屋形様と結婚することを誓おう」
「綿山レイジは蒼さんと結婚して、必ず幸せにするからね」
「なっ?!」
無愛想だった蒼さんの頬が赤く染まる。
それと同時に二人がつながった感覚がした。
「これで結婚できたよ」
「わ、わ、私のようなものに幸せになる資格など…」
「大丈夫。資格があっても無くても俺が幸せにするから」
嫁さんは全員大切にして幸せにするのが夫の務めだよね!
「私も…誓う」
俺を直視しないようにそろそろと白さんがやってきた。
「遠くない?」
「これ以上近いと心臓止まるから」
まだ3mくらい離れているんだけどなあ。
「白さん、俺と結婚してください」
「はいうっ…」
返事かと思ったら気絶した。
俺は慌てて駆け寄って白さんを抱き止める。
あっ、ちゃんとつながった気がする。
一応返事はしてくれたんだな。
「白さんはここに寝かせておきますね」
そっと白さんを床に横たえる。
「で、あなたが闇さんですか?」
「「え?」」
蒼さんと闇さんの声がハモった。
「闇だと?あっ、本当だ!いつの間に来たんだ?!」
「えっ?レイはアンのことが見えるの?!」
「見えるのって…もしかして闇さんは透明な人だったりする?」
「闇は気配が無いんだ。それどころか目の前に居ても気づかないくらい影が薄いんだ」
「うん、アンは誰からも気づかれない。だから陛下も賛族は4人しか居ないと思っている」
どれだけ気配が薄いの?!
「闇の仕事は陛下が食べ残したり読みっぱなしにしたり置きっぱなしにしたものを片付けることで、常時陛下の傍に居るにもかかわらずすっかり忘れられているからな」
「それなのに、レイはアンにすぐ気づいた。すごい!」
「ところでレイって?」
「レイジは長いからレイ。嫌?」
「いや、いいよ」
レイ君とか呼ばれたことはあるけど、レイって呼ばれるのは初めてだな。
ちょっと新鮮な気持ちだ。
「じゃあ、闇さんも俺と結婚してくれる?」
「はいっ!私の胸はぺったんこだけど、お尻には自信があるから!」
そう言うとくるりと回ってお尻をフリフリする。
「レイならいつでも触っていいからね!」
「いや、いくら室内でもこんな日中からそれはちょっと…」
「外でいちゃついても誰も気づかないと思うぞ」
「え?」
「闇と話したり一緒に行動していると、そいつまで気配が消えるんだ」
「何それ?魔法?」
「魔法ってなんだ?」
「えっと、中国的には仙術?」
「賛族は白虎神様を崇めていて、ただでさえ強い肉体の力をより高めてもらっているが、仙術のような得体のしれない力は誰も持っていないはずだぞ」
そうすると個人の性質か体質みたいなものか。
「でも俺は普通に気づいたけど?」
「それは確かにすごいと思う。闇は私たちでも探そうとしないとわからないからな」
「レイとアンは最初から結ばれる運命だったんだよ!レイ、大好き!」
ぎゅっと抱きついてきたけど、なぜか下半身を器用に反転させて俺の太ももにお尻をぎゅむっと押し付けてくる。
「ちょっと、何してるの?」
「うふふ、あててんの」
こんな時代からそんなセリフあったのか?!
胸じゃなくてお尻だけど。
「いちゃつくのはその辺にして、斎姫を助ける相談をするんだろ?」
「そうだったな。白さん、そろそろ起きて」
「ん…はっ?!あっ、レイジさんっ?!はうっ…」
目を覚ましたと思ったら俺の顔を見てまた気絶した。
「エンドレスじゃないか」
「じゃあ私が起こそう」
「あれ?蒼さんってエンドレスって意味わかるの?」
「何言ってるんだ?『きりがない』の意味くらいわかるさ」
『エンドレス』って『きりがない』って訳されていたのか。
翻訳機能ってすごいんだな!
現代でも使いたいくらいだよ。
「…あ、すみません…」
ようやく起きてくれたけど、恥ずかしいらしくて部屋のすみっこで体育座りしてる。
あの座り方もこんな昔からあるんだな。
なんだかこの時代のことを色々観察しているだけでも楽しいかも。
でも今はそんな事している場合じゃないよな。
斎姫をきちんと助けないと!
〇瑠璃視点
今日は午後から人形の姿になって、操縦席付きドローンに乗って王宮の屋根の上に着陸。
小さいし音も静かだから誰にも気づかれないで楽々侵入成功っと。
ちなみに昨日もこれで脱出してきたのよ。
屋根裏はほこりっぽくて嫌だけど、よく考えたら人形状態の私って息してないからあんまり関係なかったわ。
で、ここが始皇帝の執務室ね。
それにしても始皇帝って意外とちゃんと仕事してるのね。
偉そうにふんぞり返ってるだけかと思った。
でも、斎姫ちゃんを殺そうなんてするからろくな奴じゃないわ。
あっ、休憩みたいね。
食事かな?おやつね!
うわあ、おいしそうな桃!
えっ?まず毒見役が食べて、それを食べるの?!
食べ差しなのに?!
それだから毒見役はみんな綺麗な女の子にしてるのかな?
間接キスがおっさんとかいやだもんね。
「ふむ、今日の桃は美味だな」
「ええ、陛下。これほど甘い桃は初めてでございます」
桃かあ。私も好きなのよね。
あんなに美味しそうに食べられると食べたくなってきちゃうけど我慢我慢。
「ぬう。これ以上はいらん」
ぽいっと桃を放り投げたわ!もったいないっ!
お腹が膨れた…わけじゃなくて新しいのを食べ始めた?!
甘い部分だけ食べて、種に近い部分は捨てるなんてもったいない!
…え?捨てられた桃が消えた?!
それにいつの間にか執務で散らかっていた机が整頓されてる?!
どどどどどうなってるの?!
この部屋って幽霊でも居るの?!
私は怖くなって一目散に逃げ帰った。
「みんな大変!始皇帝が桃を捨てたらかくかくしかじかっ!」
「瑠璃くん、少し落ち着きたまえ。『かくかくしかじか』って実際に言ってもわからないからな」
「そ、そうですよね明日香先輩。えっと、つまり…」
かくかくしかじかと事情を話す。
「それはきっとさっきレイジくんが言ってた闇さんのことだな」
「あんさん?」
「実は…」
レイジくんがいきなり5人のお嫁さんをもらったって?!
それでステルス能力のある闇っていうお嫁さんが始皇帝の身の回りの片づけしているの?!
「知らなかったから慌てて逃げ帰ってきちゃったわ」
「どんまいでござる。ともあれ、敵の内に内通者もできたでごさるから、今夜のうちに準備をするそうでござる」
「いよいよ斎姫ちゃんを助け出すのね!」
齋姫ちゃん、もうすぐそこから助けてあげるからね!
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