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『サクシャーのサイコロ』を振る久遠

よりによって一番嫁候補の多いコースを選ばれるとは…。

「というわけで明日はイチャイチャタイムなのじゃ!」

「何が『というわけで』なんだよ久遠」

「これを見るのじゃ!」


久遠が差し出したのはゴルフボールのようなでこぼこの付いた丸い玉で、そのへこみの一つ一つには異なった数字が書かれている。


「これってサイコロか?」

「そうじゃ!これは100面サイコロなのじゃ!」

「これで何をするの?」

「これで出た番号の嫁と明日の日曜日に1日デートをするのじゃ!」

「番号って、例の巻物の番号のことだよね?」

「そうじゃ」

「でも100面もあるよ。10面サイコロで良かったんじゃないの?」

「これは必要な数までしか出ないようになっておるのじゃ」

「おお、すごいな」

「そしてこれは『サクシャーのサイコロ』と言って、あらゆる『因果』や『運命』を無視して、完全公平な値が得られるサイコロなのじゃよ!」

「何それすごい」

「というわけで順番はこうじゃったな」


広げられた巻物には

1.久遠

2.フィーネ・ド・エルキュリア

3.駒井坂かなみ

4.朝霧夕菜

5.本田瑠璃

6.永見明日香

7.神野晶

8.女神ロリーナ

9.ジャンヌ・ド・アーク

10.赤羽アヤメ


と、嫁になってくれた順に名前が記されている。


もう10人も嫁さんが居るんだ。

俺も嫁さんたちに愛想をつかされないように頑張らないとな。


「では早速振るのじゃ」

「誰が振るの?」

「レイジに決まっておろう」


そう言って一掴みくらいある大きな『サクシャーのサイコロ』が渡される。


「では、えいっ!」


ごろごろごろ


転がる音も大きいけどそもそもこれって何でできているんだろ?

そして久遠を始めとした全員が固唾を飲んでサイコロの行方を凝視している。


ごろん


『3』


「やったぜっ!あたしだっ!…あっ」


飛び上がって喜んだかなみさんがすぐに暗い表情になる。


「どうしたの?」

「明日、1日仕事だったよおっ!」

「それなら振りなおしじゃな!」

「待ってよ、久遠!BWAのメンバーにかなみさんとのことを報告したいから、デートじゃなくてかなみさんの仕事を傍で見てきてもいいかな?」

「ダーリン、あたしのことはそうじゃなくて…」


え?

あっ、そうか。


おまえ・・・の仕事を1日傍で見ていたいんだ。いいだろ?」


『おまえ』と言い直した途端に表情が明るくなるかなみさん。


「くーっ、『おまえ』って言われると胸がキュンキュンするぜっ!もちろんいいぜ、ダーリン!仲間もみんな会いたがっていたからな!」


俺に会いたがっていたって?


「もしかして結婚したことってもう言ったの?」

「それは言ってないけど、ダーリンの事は話してあるぜ!とにかく明日会えばわかるからなっ!」


何かよく分からないけど、とりあえず明日を楽しみにしておこう。


何しろあのトップアイドルであるBWA全員に会えるんだから。





翌朝。


俺はかなみさんと一緒に新曲をレコーディングするスタジオに来ていた。


「ダーリンに見てもらいながらのレコーディングならきっと最高の出来になるぜ!」


ご機嫌のかなみさんと一緒に通路を歩いていき、突き当りの部屋のドアを開けるとそこにはテレビで見たBWAのメンバーが勢ぞろいしていた。


「じゃあ順番にメンバーを紹介するからなっ!」

「それより自己紹介させてほしいじゃん!」

「ね、ねっ、私の事覚えてる?!」

「天使だった子がすごく男前になってるわあ」


『天使だった子』?

一応BWAのメンバーは有名だから全員名前は分かるけど、もしかしてこの3人って?!


「あの時のかなみさんのお友達?」

「覚えてくれてたじゃん!」

「嬉しい!」

「いや、思い出したのはたった今だから。みんなあの時と雰囲気が違うから」

「5年も経つから当然じゃん!」

「雰囲気違うってどういう風に?私って綺麗になった?ね?ね?」

「早苗、そんなに喰いつかないの」


あの時はまだ俺も小学生だったから彼女たちのことを『年上の女性』とは思っていたけど綺麗とか可愛いとかそういう目で見てなかったんだよな。


でも、今はアイドルだけあってみんな綺麗なんだよな。


ただ、BWAのメンバーってみんな口調とかの個性が強くて『青いブルー翼のウィング天使エンジェルス』だけど『堕天使』なんて言われたりもしてるんだよな。


外見と歌声の綺麗さとダンスの舞うような可憐さは正に天使だけどね。


「じゃあ『あの時遊んだ事』も覚えているのよね?」

「う」


俺は思わず口ごもる。


『あの時の遊んだ事』ってちょっと・・・・過剰なスキンシップの事だよな?

小5だからわからなかったけど、後になってとんでもないことしていたなって思ったんだ。


具体的には泥遊びで塗ったり塗られたり。

でも安全地帯だけだからねっ!セーフな部分だけだから!

下半身も太ももまでならセーフだよね?!


「あたいは氷室アンナ、19歳じゃん!」

「アンナ、私たちは全員19歳なんだけど」

「そうそう!全員同じ年同じ月の生まれで、身長も体重も胸の大きさもほとんど同じなんじゃん!」


6人のダンスにすごい一体感があるのはそのせいかもな。


「あたいはBWAのリーダーってことになってるけど、特に何もしてないじゃんね!」


そう言うアンナさんは短髪茶髪で前髪の一部を真っ赤に染めている。

同じような男らしい口調だけどロングヘアのかなみさんとは対照的だな。


「何リーダーの仕事してないことを自慢してるのよ。あっ、私は中島早苗よ。あの時はお互い名乗らなかったけど、まさか5年経ってから自己紹介することになるなんて思わなかったわ」


早苗さんは肩より少し長いとてもきれいな黒髪をしている。

口調も落ち着いていて正統派アイドルって感じだ。


「BWAの楽曲のほとんどは私が作ってるのよ。作詞はみんなでしてるけどね」

「すごいですね!」

「んふふ、もっと褒めていいのよ、天使君。いえ、今は天使と言うより野性味のある男性になったのね」

「学校では野獣とか孤狼とか言われてますから」

「でも軽薄なイケメンよりその方が男らしくていいと思うわよ!」

「あ、ありがとうございます」


何だかそんな誉め方されたの初めてでくすぐったいな。


「私は有朋ありとも星奈せいなよ。テレビでは馬鹿なこと言ってるように思われてるけど、BWAの中では一番賢いんだから」

「だって実際馬鹿じゃん。」

「東大合格してるからねっ」

「BWAと大学を両立させればいいって社長に言われたのに入学しなかったじゃんよ」

「だって、東大受けたのって『東大合格したらアイドルでもなんでもやっていい』って親に言われたからよ」

「だからって、まさか入学しないなんて親も思ってないじゃん!」

「だって、みんな高卒なのに私だけ大卒とか嫌だし…」

「それで東大蹴るとか本当に馬鹿じゃん。でもあたいはそういう所好きじゃんよ」

「なら素直に褒めてよね」


星奈さんは良くバラエティ番組に出ていて空気が読めずにお馬鹿なことを言うくせに、記憶力だけはやたらいいので、クイズ番組の1人目の挑戦者として出演していきなり全問正解してスタッフが頭を抱えたって有名な逸話があるんだよな。


「次はうちらやな」

「そやな」


残りの二人は関西弁…というか『自称エセ関西弁』で話す双子だ。


「うちは桃山真綾や。かなみたちとは高校からの同級生やで」

「わては桃山沙彩や。さっき身長とか体重とか胸の大きさが6人とも一緒とか言うとったけど、わてらは同じ『E』でも『限りなくFに近いE』やでな」


そ、そうなんだ…と思わず見てしまいそうになった視線を逸らす。


「おお、少年は真面目やな。普通は凝視するやろ」

「ふふん。あたしのダーリンはそのくらいの誘惑には耐えられるのよ」


周りが魅力的な女性ばかりだから鍛えられた気がする。

いくら自分の嫁でも胸とかじっと見たりはしないからな。


「うちらは関西出身やあらへんけど、大阪の漫才が好きやから普段からこうやって関西弁の練習をしとるんや」

「わてらの将来の目的はD1グランプリ優勝やで」


トップアイドルが『どつき漫才・・・・・グランプリ』に出るとか前代未聞だと思う。


「じゃあ、ダーリンも自己紹介頼むぜ!」


俺は5人のアイドルが注目する中で深呼吸をしてから自己紹介をする。


「俺は綿山レイジ。高校1年生だけど、かなみさんの夫です!」

「「「「「え?!」」」」」


完全にフリーズする5人。


「綿山レイジって、確か『100人嫁を貰っていい男』だったじゃん」

「かなみってそんなすごい男のお嫁さんになったの?!」

「というか、私たち、そんな人と『あんな事』してたの?!」

「それなら責任取ってあたいとも結婚してほしいじゃん!」

「ちょっと、アンナ!何の責任よ?!」

「早苗も星奈もあの時この子と色々やったじゃんよ」

「それならどちらかと言うと私たちが責任を取るべきじゃないの?」

「そうよね。あの時あんなことした責任を取って、嫁にならせていただくわ」

「あたいはどっちでも結果が一緒ならいいじゃんね!」


あ、え、えっと…。

俺は3人の勢いに思わずたじろいでしまう。


「あたし的にはダーリンにはBWA全員を嫁にして貰いたいんだけど?」

「かなみさん…じゃなかった。おい、お前、勝手に決めるなよ」

「はうう~。わかりましたダーリン♡」

「あのかなみが男に服従しとるで」

「完全にメスの顔やな。ところでかなみはこの子と面識の無いわてらも嫁にする気やったんか?」

「ほれ、うちらが『どうせ双子として生まれてきたんやったら同じ相手と結婚したいわな』なんてちょいちょい言うとったからやろ」

「かなみが惚れるくらいの男やし、この子ならええかもしれんな」

「ほな、うちらも嫁にしてな。色々ええ事したるで」


まさか初対面のエセ関西弁双子にまで求婚されてしまった。


俺がこの魅力的な女性たちに返事をしようとしたその時。


「そんなことは許さないわ!」


そこに縁が釣り上がった眼鏡を掛けた目つきの鋭いスーツ姿の女性が現れた。


「「「「「社長?!」」」」」


そう。彼女はBWAの所属事務所の社長、茜沢あかねざわ悠里ゆうりだった。

お読みいただきありがとうございました!

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