第43話 クラスメイトを宥める主様
翌朝。 熱は、嘘のように下がっていた。
あの悪魔じみた赤いスープの効能のお陰なのか。
ーーともかく、俺は完全復活を遂げ、悠々と登校した。
教室へ向かう廊下を歩いていると、前方から見覚えのある三つ編みが駆けてきた。
「くくく、鵠沼さん」
「中川か……」
中川だ。 風邪はもう治ったらしい。 安心だ。
しかし、なにやら涙目で、真っ青と真っ赤を行き来しているようだが?
「おはよう、中川。 まだ具合が……」
「本っっっ当に! 申し訳ありませんでしたぁぁぁ!」
「な、なにを……」
言うが早いか、中川はその場に膝から崩れ落ち、廊下のタイルに両手をついた。
ーー土下座である。
朝の廊下で。 登校中の生徒たちの目の前で。 完璧なフォームの、五体投地であった。
「お、おい!? 中川、何をしている!?」
「聞きました! 鵠沼さんが風邪でお休みって! う、うつしたの、私です! 私のせいです! せいですよね? すみません。 よく、覚えてなくて……」
「……」
記憶はないのかーー
「……その。 鵠沼さん。 何か、失礼なことがあったかなぁ?」
廊下の生徒たちが、ひそひそとこちらを見ている。 奴らの声が聞こえてきそうだ。
『土下座? ……あいつ何様のつもりなの』
『あのメガネが女子を土下座させてる』
『まじ? あの根暗隠キャメガネが?』
ホラ、そう言っているみたいに聞こえるぞーー
「顔を上げろ。 いいから立て。 頼むから……」
「立てません! この償いは、いかようにも! 一生をかけて、体で払います! なんでもします!」
「重い。 償いが重い。 あと、なんでもとか、言うな!」
俺は中川の腕を掴んで、強引に立たせた。 涙と鼻水で顔が大変なことになっている。 ポケットからハンカチを出して押し付けた。
「いいか。 俺はもう治った。 この通り、ぴんぴんしている。 だからお前が謝ることは何もない」
「ぐげずばざん……!」
中川の目が、うるうると輝きを取り戻していく。 ーーよし、これでこの騒ぎも終わりだ。
「では、私、改めてお見舞いのお礼の、お礼をしなければ! 私なんでもします!」
「終わらせろ。 礼の無限ループを発生させるな」
「そんな!」
ーーと、まあ。 朝から一悶着あったものの、学校生活は平穏に戻った。
学校の人気者の小川望美を除いてだがーー




