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20/20

第20話 村中が揺れた日~明日香温泉の新しい日常~

九月も半ばを過ぎた、水曜日の午前中。

公民館の和室は、今日もむせかえるような熱気で満ちていた。


俺もすっかり慣れたもので、腰痛体操の指導は、もう一人で回せるようになっていた。

今日は、恵子さんはいない。

セキュ女として、ヤマトに付いて小学校に行っている。

凛さんも、県の仕事が立て込んでいるらしく、ここしばらく顔を見せていない。

いつもなら部屋の隅で目を光らせている誰かが、今日はどこにもいなかった。


――その空気を、村の女性たちは、敏感に嗅ぎ取っていた。

若い娘たちは、まだいくらか遠慮がちだった。


「タケルさん……あの、ここの筋肉、お願いします……」

頬を赤らめながら、俺の二の腕や肩に、指先でちょんと触れてくる程度だ。


「はい、そこですね。ゆっくり伸ばしましょう」

俺は淡々と、いつもどおりに指導する。

ところが、三馬鹿…ちがった、熟女組は、まるで違った。


「タケルさぁん!今日もこの雄っぱい、最高ねぇ〜!」

馬場さんが、ストレッチの補助というていで、俺の大胸筋に両手をべったりと押しつけてきた。

柔らかい手のひらが、胸板の上で、むにむにと遠慮なく動く。


「ちょっと馬場さん!抜け駆けしないでよ!今日は私の番でしょ!」

すかさず別の熟女が割り込んできて、俺の太ももに手を這わせる。

さらにその後ろから、三島さんが夢見るような目で俺の腹を見つめていた。


「このバキバキの御中……ずっと、触ってみたかったのよぉ……」

うっとりとため息をつきながら、指先がそろそろと伸びてくる。

部屋の隅で、誰かがにやりと笑って言った。


「今日は止める人がいないんだから――ぎりぎり、狙うわよ」

その一言で、和室の空気が、がらりと変わった。

女性たちの目が、一斉にぎらりと光った。


「ちょっと、触りすぎ!」

「順番守りなさいよ!」

「私、太もも担当なのに!」


女性同士で小競り合いを始めながら、それでも全員が、俺の体に次々と手を伸ばしてくる。

「皆さん、順番です!一人三十秒まで!」

鹿田さんがクリップボードを振り上げて叫んだ。

さすがの仕切り屋だ、と感心しかけた次の瞬間、鹿田さんは自分の名前の横に「延長」と書き込んで、真っ先に俺の背中に回り込んでいた。


「……皆さん。ストレッチ、真面目にしてくれないかな」

俺は苦笑いしながら注意した。

けれど、内心では、正直、テンションが上がっていた。


(すごいな、この人たち……)

熟女たちは、とにかく積極的だった。

胸を開くストレッチのふりをして、俺の胸板を何度も撫でる。

脚を伸ばすふりをして、太ももの内側に、するりと指を這わせる。


若い娘たちは、それを羨ましそうに眺めながら、少しずつ、少しずつ大胆になっていった。

音駒さんなど、俺の腹筋を、ちらちらどころか、もはや正面からじっと見つめている。


――完全に、男子高校生の部活のノリだった。

俺は額の汗を拭いながら思った。

(この世界の女性、積極的すぎる……。でも、もう慣れてきたな)

今日の腰痛体操は、いつもより、明らかに熱を帯びていた。


◇


クールダウンの深呼吸が終わる頃。

一人の熟女が、首に掛けたタオルで汗を拭いながら、ぽろりと言った。

「あー、今日も汗かいたわぁ。温泉入って帰ろうかしら〜」


「温泉?」

俺は思わず聞き返した。

「この辺に、温泉なんてあるんですか?」


その瞬間、和室の空気が、ぴたりと止まった。

三十人分の視線が、一斉に、言い出した熟女と俺の間を行き来する。


「……ありますよぉ」

馬場さんは、何かを察したように、にこにこと笑いながら答えた。

「村の奥に、古い温泉の銭湯がね。施設としてはもうだいぶ古くなっちゃってるから、男の人は、あんまり来ないんですけど」

「へえ……」

古い銭湯。湯船の縁に頭を預けて、手足を思いきり伸ばす。

そんなことは、この世界に来てから一度もしていない。


「子どもたちと、大きなお風呂に入れるのは、魅力的ですね」

何の気なしに、そう言った。

――その瞬間、女性たちの目が、一斉にきらきらと輝いた。


「小さいけど、露天風呂もあるんですよ!」

「見晴らしがいいの!山が見えて!」

「夕方なんか、最高よぉ〜。空が赤く染まって!」

「お湯もね、いいのよ!お肌がつるっつるになるの!」

次から次へと、露天風呂の売り込みが始まった。


「ちなみに、今日の夕方なんて、すっごく空いてると思いますよ!」

「そうそう!平日の夕方は、がらがらだから!」

「なるほど……。じゃあ、子どもたちに聞いて、行ってみようかな」

俺がそう言った途端、和室のあちこちで、誰かがぐっと拳を握りしめた気がした。


――気のせいだろう、たぶん。

「それじゃあ皆さん、また金曜日に」

頭を下げて、公民館を出る。

(今日も、普通に終わったな)

帰り道、秋晴れの空を見上げながら、俺はのんびりとそう思っていた。


◇


――タケルの背中が、里道の向こうに見えなくなった、その瞬間。

公民館の和室で、三十人の女たちが、一斉に息を吐いた。


「温泉の話出したの、誰!?」

「私よぉ」

「神!!!」

「あんた、神だわ!!!」

言い出した熟女が、拍手と歓声に包まれた。

本人は「ほんとに入って帰ろうと思っただけなのよぉ」と照れているが、誰も聞いていない。


「ねえ、本当に来るの?タケルさんが?男湯に?」

「『子どもたちに聞いて、行ってみようかな』って言ったわよね!?」

「言った!確かに言った!」

「夢みたい……。あの古い銭湯の男湯に、男が入るなんて、何年ぶり……?」


ひとしきり騒いだあと、鹿田さんがクリップボードを、ぱん、と叩いた。

「皆さん、落ち着いて!時間がありません。――役割分担です!」

この人は、こういうときに一番輝く。

「まず、番台のおばあちゃんに連絡!あそこ、男湯なんて何年も使ってないでしょう。

 掃除してないかもしれないわ!」

「私、電話しとく!男が来るって言ったら、おばあちゃん、絶対倒れるわよ!」

「連絡網、回して!でも、知らせるのは淑女協定の加盟者だけよ!」


「淑女協定って何よ」

「今決めたの!」

鹿田さんが、ホワイトボードに、きゅっきゅっと書きつけていく。


『一、抜け駆け禁止』

『二、女湯の壁際の一等席は、ジャンケンで決める』

『三、男湯に手出し・口出しは、絶対に禁止(重罪です)』


「三は守ってよ!?本当に守ってよ!?捕まったら、二度と腰痛体操に来られなくなるんだからね!」

「わ、わかってるわよ……」

「ねえ、待って。男湯と女湯って……お湯、同じ源泉よね?」

「……ってことは」

「タケルさんと、同じお湯に……浸かれる……ってこと……?」

きゃあっ、と、何人もが顔を覆った。

「私、今日、早退する!」

「私も!パート、代わってもらう!」

「新しい手ぬぐい、下ろさなきゃ!」

和室の中は、まるで文化祭の前日の、女子高の教室のような有様だった。


その輪の端で、音駒さんが、おずおずと手を挙げた。

「あの……私、ジャンケン、弱いんですけど……」

「知らないわよ!」

熟女全員の声が、きれいに揃った。


◇


午後、学校の終わる時間。

ヤマトとムサシは、いつものように元気いっぱいに校門から飛び出してきた。

恵子さんと遥さんと合流して、五人で家に帰る。

家に着くなり、俺は双子に切り出した。


「なあ。今日は腰痛体操で汗をいっぱいかいたし、たまには、みんなで温泉に行ってみないか?

村の奥に、古い銭湯があるらしいんだ。露天風呂もあるってさ」

ヤマトの目が、ぱっと輝いた。

「温泉!?行きたい!お父さんと一緒に、大きいお風呂入るの、すごく楽しそう!」

「露天風呂!?やったー!行こうぜ、パパ!」

ムサシは、もう玄関の方へ走り出しかけている。


「子どもたちが、そんなにおっしゃるなら……」

恵子さんが、少しだけ考えてから、穏やかに頷いた。

「少しだけなら、よろしいかもしれませんね」

「私たちも、ついていきます」

遥さんも、笑顔で頷いてくれた。


◇


夕方。村のいちばん奥、山の裾にへばりつくように、その銭湯はあった。

昭和の時代から、そのまま時が止まったような建物だった。

黒ずんだ木造の壁に、白抜きで「ゆ」と染めた暖簾。

入口の上には、色褪せた木の看板が二枚、「男湯」「女湯」と並んでいる。

裏手の煙突から、白い湯気がゆっくりと夕空に昇っていた。


番台には、小柄なおばあちゃんが座っていた。

ずいぶんと高齢らしく、いつもなら扇子でものんびり扇いでいそうな風情だ。

ところが今日は、俺の顔を見るなり、扇子を取り落としそうになった。


「ひ、ひぇっ……ほ、本当に、来なすった……」

「え?」

「い、いえいえ!な、何でもございませんよ!

 男湯、今朝から、念入りに、念入りに、お掃除しときましたからねぇ!」

おばあちゃんの手が、小刻みに震えていた。


男湯なんて、普段はほとんど使われないのだろう。

突然の客に驚かせてしまったのかもしれない。悪いことをしたな、と思った。

そういえば、女湯の下駄箱が、靴でぎっしりと埋まっている。

平日の夕方は、がらがらだと聞いていたのだが。

(女湯は、結構混んでるんだな)

まあ、そういう日もあるのだろう。


「それでは、私たちは、こちらで。一時間ほど、入ってきますね」

恵子さんと遥さんは、女湯の暖簾の前で、なぜか顔を見合わせてから、そう言った。

二人とも、いつもより少しだけ表情が硬い気がした。


◇


男湯の脱衣所は、古い板の間だった。

籐の脱衣かごが並び、柱の時計がこちこちと時を刻んでいる。

湯気と、木と、石鹸の匂い。

どこか懐かしい、昭和の匂いがした。


客は、俺たち三人だけだった。

「一番乗りー!」

ムサシが、誰もいない脱衣所に歓声を響かせた。

服を脱いで、手ぬぐいを手に取る。

ムサシが、腰に手ぬぐいを巻きながら、俺の胸を見上げた。


「パパの胸、雄っぱいって言うんだよな?めっちゃ固そう!触っていい?」

返事も待たずに、ぺたぺたと叩いてくる。

「おう、固いぞ。――ほら、ムサシ。ちゃんと手ぬぐいで前を隠して歩きなさい」

「はーい!」

内風呂で体を流してから、奥の露天風呂へ向かった。


露天風呂は、小さな岩風呂だった。竹で編んだ高い囲いに三方を囲まれ、正面だけが開けていて、遠くの山並みが、夕焼けに赤く染まって見える。

囲いの上の方は、湯気を逃がすためか、少しだけ隙間が空いていた。

湯に体を沈めると、思わず、深い息が漏れた。


「はぁぁ……」

熱い湯が、体の芯まで染み込んでくる。腰痛体操の疲れが、湯の中にほどけて溶けていく。

「パパ、温泉、気持ちいいね!」


ヤマトが、湯船の縁に顎を乗せて、とろんとした顔で言った。

「僕も、パパみたいに、お腹バキバキになりたいな……。

 そしたら、女の人にモテるのかな?」


「モテるに決まってるだろ!」ムサシが、湯をばしゃっと跳ね上げた。

「パパ、いっつも女の人に囲まれてるもん!俺も、パパみたいになる!

 雄っぱいも御中も、バキバキにする!」

俺は湯に浸かったまま、二人を見て笑った。


「そういえば、お前ら、大きくなったよな。

この前の健康診断で、二人とも五センチも背が伸びてたんだぞ」

「ほんと!?」

「やったー!」

「毎朝のトレーニングを続けてたら、いつか、俺みたいになれるかもな」

「なる!絶対なる!パパの胸みたいに、固くなる!」

「僕は……パパみたいに、優しい人になりたいな」

ヤマトが、ぽつりと付け足した。

俺は、湯の中で、少しだけ言葉に詰まった。


夕焼けが、湯気の向こうで、ゆっくりと色を変えていく。

それにしても、静かだ。

(……女湯の方は、ずいぶん静かだな)

あれだけ下駄箱が埋まっていたのに、囲いの向こうからは、物音ひとつ聞こえてこない。

まあ、温泉というのは、みんな静かに浸かるものなのかもしれない。


◇


――その、静かな女湯では。

露天風呂の岩風呂に、肩まで湯に浸かった女たちが、ぎっしりと詰まっていた。

二十人はいるだろうか。

小さな岩風呂は、もはや芋の子を洗うような有様で、湯が縁から溢れ続けている。

そして、その全員が、息を殺していた。


男湯との境の、竹で編んだ高い囲い。

その壁際に、ジャンケンを勝ち抜いた精鋭たちが、湯の中で膝立ちになり、竹の壁にぴたりと片耳を押し当てている。

囲いの上の隙間から、湯気と一緒に、男湯の声が、筒抜けに降ってきていた。


『――パパの胸、雄っぱいって言うんだよな?めっちゃ固そう!』

壁際の熟女が、湯の中で、音もなく天を仰いだ。


「……今、雄っぱいって……」

「しっ!」

『おう、固いぞ』

「…………っ!!」

三人ほどが、声を出さずに湯の中で身悶えた。湯面に、さざ波が立つ。

『はぁぁ……』

タケルの、湯に浸かったときの深い吐息が、降ってきた。

女湯の空気が、一瞬で沸騰した。


「い、今の……今の吐息……!」

「録音……録音しとけばよかった……」

「スマホは脱衣所でしょ!」

「わかってるわよ……!」

ひそひそ声の怒号が、湯気の中を飛び交う。


『モテるに決まってるだろ!パパ、いっつも女の人に囲まれてるもん!』

『僕も、パパみたいに、お腹バキバキになりたいな……』

双子の無邪気な声に、女湯のあちこちで、とろけたため息が漏れた。


「……可愛い……」

「お父さんみたいになりたい、ですって……」

「健気……。いい子に育ってるわねえ……」

今だけは、熟女組も若い子組も、みんな揃って母親の顔になっていた。


――そのとき。

岩風呂の隅で、一人の女が、そろりと湯から上がった。

視線の先には、掃除用の木の踏み台が、囲いのそばに立てかけてある。

女が、踏み台に手を伸ばした、その瞬間。


「――そこまでです」

踏み台の前に、遥さんが、仁王立ちになっていた。

いつの間に湯から上がったのか、バスタオルを体にきりりと巻きつけ、腕を組んで立っている。

濡れた短い髪から、ぽたぽたと滴が落ちていた。


「皆さん。男性保護局の監視下ですよ。男湯への覗き行為は、保護法違反です」

低い、よく通る声だった。

「の、覗こうなんて……!ちょっと、踏み台の位置を直そうと……」

「踏み台は、私がお預かりします」


遥さんは、踏み台をひょいと小脇に抱えると、そのまま壁際に陣取った。

それきり、一歩も動かない。

湯の中では、恵子さんが、首まで湯に浸かったまま、穏やかに微笑んでいた。


「皆さん。聞くだけにしておきましょうね。……ルール違反は、いけませんよ」

声は柔らかい。

けれど、その笑顔には、なぜか誰も逆らえない迫力があった。

セキュ女の柔術師範だと知っている村の女たちは、そっと首をすくめた。


恵子さんは、ちらりと竹の囲いの方を見上げて、小さく、苦笑いを浮かべた。

(……あの方は、何も気づいていないんでしょうねえ)

声に出さずに、そう思った。


「……でもさ」

誰かが、湯の中で、うっとりと呟いた。

「今、私たち……タケルさんと、同じ源泉のお湯に、浸かってるのよね……」

沈黙。


そして、女湯じゅうが、湯の中で、声を出さずに悶絶した。

「温泉の話出したやつ、神……」

「一生、ついていく……」

「次は、男湯の時間、事前に調べてから来るわよ……」

「淑女協定、第四条。『タケルさんの入浴時刻の情報は、全員で共有すること』……」

「異議なし……」

湯気の向こうで、ひそひそ声の会議は、いつまでも終わらなかった。

小さな岩風呂の縁から、溢れた湯が、絶え間なく流れ続けていた。


◇


一時間後。

俺たち三人は、すっかり茹で上がって、ほかほかの体で銭湯を出た。

体の芯まで温まって、夕暮れの風が、火照った頬に心地いい。


番台のおばあちゃんが、なぜかぐったりとした顔で、扇子を力なく振って見送ってくれた。

「ま、またのお越しを……お待ちしております……」

声がかすれている。

よほど掃除が大変だったのだろう。

今度来るときは、何か手土産でも持ってこよう。


女湯の暖簾の前では、恵子さんと遥さんが、もう待っていてくれた。

二人とも湯上がりの髪をまとめ直していて、頬がほんのりと上気している。


――ただ、遥さんは、なぜか木の踏み台を小脇に抱えていた。

「……遥さん、それは?」

「あ……。お、お返ししてきます」

遥さんは慌てて番台の方へ駆けていった。


「たまには、温泉もいいものだね!」

夕焼けの里道を歩きながら、ヤマトが、すっかり大人びた口調で言った。

「すっげー楽しかった!また行こうぜ、パパ!」

ムサシは、まだ体から湯気を立てながら、ぴょんぴょん跳ねている。


俺は、隣を歩く恵子さんと、戻ってきた遥さんに、のんきに聞いた。

「恵子さんたちは、どうでしたか?女湯、混んでたみたいですけど」


恵子さんと遥さんが、顔を見合わせた。

それから、恵子さんが、少しだけ苦笑いを浮かべて、優しく答えた。

「……ええ。とても、賑やかでしたよ」

「本当に……賑やかでしたね」

遥さんも、小さく笑いながら、遠い目をした。


二人の、なんとも言えない微妙な笑顔に、俺はまったく気づかなかった。

「そうですか。よかった。――よし、また行こうな!」

「うん!」

「行く!」

双子の元気な声が、暮れていく里山に響いた。

俺は二人の頭をくしゃくしゃと撫でながら、のんびりと家路についた。


――その夜。

村の女性たちの連絡網は、日付が変わっても、まだ鳴りやまなかったらしい。

『今日のタケルさんの「はぁぁ……」、一生忘れない……』

『おう、固いぞ、が耳から離れない』

『次は絶対、男湯の時間に合わせて行くわよ……!』

『淑女協定、第四条、忘れないでね』

『ところで、踏み台持ってったセキュ女、強すぎない?』


――古い銭湯の番台のおばあちゃんが、その翌週から、男湯の掃除を毎朝欠かさなくなったことは、また別の話である。

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