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新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第六章〜日本の夜明け〜

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作戦

 その夜、選ばれた隊士たちが屯所の一室に集められた。土方が京絵図(地図)を広げ、説明を始める。


「標的は、京の商人を狙う野盗の一味だ」


「調べによると、最近は深夜に西村屋の荷を運ぶ行商が襲われることが多いです。おそらく、奴らは京のはずれに潜んでいて、商人の荷が町を出たところを狙っているはずです」


 山崎は事前に集めた情報で補足する。


「つまり、こちらから動かなくても、奴らの方から現れるということか」


「こっちも、待ち伏せする形でやるのがよさそうだなー」


「久しぶりに賊退治ですね!」


 斎藤、藤堂に続き沖田は久々に体を動かせるので、嬉しそうだ。


「それに奴らは、どうやら屋根から飛んでやって来るようです」


「屋根から?忍びか?」


 山崎の言葉に藤堂は目を丸くする。


「もしかしたら、元御庭番衆(おにわばんしゅう)かもしれません。一人、それらしい人物を見つけたので」


 永倉は腕を組んで眉をひそめた。


「幕府側だった人間が、いまや商人を襲う盗賊か.....」


 すると沖田がかなたに身を寄せ、こっそりと耳打ちをする。


「ふふふ。飛ぶって....まるで、あの時のかなたさんのようですね」


「あはははは.......」


 沖田の言っている『あの時』とは、かなたが最初にタイムスリップしてきた時の事だろう。あれは、どちらかというと、"落ちてきた"という方が正しい。


 土方は絵図を指し示しながら説明を続ける。


「西村屋の荷が狙われているはこのあたりだ。平助の言う通り、商人の荷が動く時間帯にこちらも先回りして伏せておく」


「でも、盗賊ってどれくらいの規模なんでしょう.....?」


 土方の説明にかなたは疑問をもつ。


「それがまだはっきりません。日によって違うので大人数の可能性も有り得ます」


 あの、山崎がそういうのであれば日によってマチマチなのだろう。もしかしたら、あちらも当番制なのかもしれない。


「だからこそ、慎重に動く。いいか、これは単なる腕試しじゃねえ。相手は生きるために盗みをしてる連中だ。下手に油断すりゃあ、こっちがやられる」


 土方の言葉に隊士たちは真剣な表情で頷いた。


「.......よし、準備が整い次第、動くぞ。各自、気を引き締めておけ」


「おう!!」





 ーーーー





 京の賑わいも静かになる深夜。かなたは山崎と西村屋の荷車が通る予定の街道に潜んでいた。ほかの隊士たちも、それぞれの持ち場で息を殺して待っていた。


「今日は来ますかねぇ」


 かなたが囁くと山崎は眉一つ動かさずに答える。


「来てもらわないと困ります。土方副長はお忙しい人です。こんなことを毎晩している暇はありません」


 山崎の世界は土方中心に回っている。付きまとい(ストーカー)とかしていないだろうか。少し、心配になる。


 しばらくすると、誰かの足音と荷馬の車輪のきしむ音が聞こえてくる。西村屋の荷を運ぶ行商人たちだ。


 その時


「おい、待て!」


 突如として暗闇から数人の男たちが上から飛び出してきた。荒くれた風貌、腰に刃物をぶら下げた連中。間違いない、野盗だ。


「くそっ、またか.....!」


 用心棒の付いていない行商人は狼狽える。かなたが見たところだけでも盗賊達はざっと五、六人はいるようだ。


「さあ、荷を置いていけ。じゃねぇと命は無ぇぞ」


 野盗たちが荷車に近づいた瞬間


「行くぞ!」


 土方の合図と共に、新選組の隊士たちが一斉に飛び出す。


「な、なんだ!? 誰だ!」


 野盗たちが驚いて振り向く。


「貴様らが、京の町を荒らす盗賊か」


 静かに構える斎藤の鋭い視線が、暗闇の中でも獲物を見据えていた。


「その羽織、新選組.....!?はっ、こんなところまで来るとはなァ!」


 野盗の一人が刀を抜き、戦闘態勢に入る。その時、沖田が軽く笑った。


「ふふっ、手荒な真似はしたくないですけど.....暴れるなら仕方ないですね」


「盗賊退治、始めるぜ!」


 永倉の豪快な叫びと共に、新選組の剣が夜の闇を切り裂いた。

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