面接
ギャグ回です。
こうして、入隊希望者の目見の日がやってきたのだが...
「なんっっだ、こりゃ!一体、何人いやがるんだ?!」
永倉が希望者の数を見て、境内の隅で腰を抜かす。彼は完全に見物者なのだが、まるで今から自分が「やりますよ」と、言わんかばかりに大口を開けている。
「今日は百人くらいでしょうか...?まだ多かったので、別日に振り分けましたが、それでも多いですね」
「かなり時間がかかりそうだな...」
土方は額を押さえ、既に疲れた顔をしている。確実に言えることは、朝から晩までかかるだろう。
「では早速行きましょう!」
かなたが元気よく進行を始め、面接がどんどん進んでいく。中盤に差し掛かった頃、聞き覚えのある名前が飛んできた。
「ええと...相馬主計です。二十三歳です」
かなたの心がざわつく。相馬主計とは、土方とともに最後まで戦い、最終的に新選組の名を継いだ人物だ。だがこの時代にしては、少し早すぎる登場だった。歴史を改変したせいだろうか。
土方は相馬をちらりと見やり口を開く。
「特技はあるか?」
相馬は少し考えて声を出した。
「特技は、馬術と作戦立案と、あ、あと女性のご機嫌取り.....は、特技って言えますか?」
この人は何を言っているんだろうか。その場の空気が一瞬で凍りつく。相馬が来るにはまだ早かったのかもしれない。山南は笑顔を崩さず、近藤は困った顔をして、土方は顔を引きつらせている。
このままではまずいので、かなたは気を利かせつつ、明るく声を出した。
「不合格でーす!次の方どうぞ!」
すると、後ろで見守っていた近藤がすかさず手を上げる。
「ちょ、ちょっと早くないか!? 少し癖はあるが、他の特技は使えそうだったし...」
近藤のその言葉に、土方は嘆息を吐く。
「近藤さん...女たらしは百害あって一利なしだ。隊の風紀が乱れる。次!」
女たらしの逸話がある土方が言えることでは無い。
次に呼ばれて出てきたのは、程よく筋肉のついた青年だった。
「野村利三郎です!歳は二十二、特技は...えーっと......えー............」
(野村利三郎!!)
かなたの心の中は一転、ワクワクでいっぱいになる。彼もまた、後に土方や相馬と共に、幕末を駆け抜ける隊士の一人だ。まさかそんな二人に出会えるなんて、今日はツイてる。
「......力仕事?あと、父が医者なので、軟膏とかなら塗れます!」
だが、特技がとても地味だ。本当にあの野村利三郎なのだろうか。
「戦に軟膏を塗る暇なんかねぇ。腕っぷしはどうだ?」
「よく薪割りしてます!あと、甥っ子を抱っこしながら米俵も運べます!」
土方の問いに、野村は力いっぱい答えるが、話す内容の癖が強い。新選組には癖の強い人間しかいないのか。
「それは、なかなかだな。体力は文句なしってことか。...どうだ、トシ?」
「......よし、仮採用だ」
近藤と土方はそれでいいようだ。いや、逆にそれでもいいのか。
かなたの心の中の突っ込みをよそに、野村は大喜びで頭を下げる。
「えっ、ありがとうございます!!仮ってなんですか!?えっ!? 仮ってことは.....試験期間!? 給金は出ますか!?」
まるで、現代人のようなことを言う男だ。
「給金は少しだけですが、出ますので安心してください」
山南がにこりと答えると、野村は安心して手続きを済ませに行く。そこへまた、相馬が現れた。
「......あの、僕もやっぱり再挑戦とか無理ですかね。お酒の席ではそこそこ話を盛り上げる自信が......!」
「お前は三番隊長の斎藤のところで試してみろ。話が合えば、残っていい」
土方は斎藤のほうを顎で示し、さらりと面倒事を押しつける。
「え、斎藤さんってあの怖そうな?!」
剣に関しては厳しいが、斎藤はそこまで怖い人間では無い。あの無口さが人々を怖がらせているのだろう。だが、相馬は諦めきれないようで、渋々斎藤の元へ歩いていった。
「はい、気を取り直して次いきましょうか!体力ある人歓迎、微妙な人は斎藤さんの所へ!」
「新しい体系が出来ましたね」
かなたの冗談に山南はにこにこと笑っている。まだまだ先は長そうだ。




