奮闘!科学少女!
※調薬の話があります。素人調べですので、ご容赦ください。
元治元年 八月
「沖田さん、体調はいかがですか?」
「お陰様で、だいぶ良くなってきています!」
沖田は年が明けてからというものの、ずっと倦怠感のある体調不良が続いていた。そのため、かなたは時々彼の問診を行っている。
周囲はただの風邪だと思っているが、かなただけはその原因を知っていた。
「良かったです。では、今日もお薬を飲みましょう!」
「はい!....ところでかなたさん。僕の病は一体何なんですか?」
かなたがこうして沖田専用の特別な薬を煎じているので、彼も自分がただの風邪ではない、ということに薄々気づいているのだろう。
かなたは一瞬躊ためらったが、やがて小さく息をつき、口を開いた。
「沖田さんの病は結核....この時代で言うと"労咳"です」
「労..咳....ですか......」
沖田は顔を青くし、戸惑いの表情を見せる。驚くのも無理はない。労咳、すなわち結核はこの時代では不治の病だ。
かなたはもちろんこの事を知っていた。だから対策が必要だった。
新選組好きなら誰もが一度は、沖田の結核を治したいと思ったことがあるだろう。かなたも現代に居る頃に、江戸時代で出来る結核の治療法を血眼になって調べたことがある。
そのおかげで、今こうして彼専用の薬が作れているのだ。薬といっても、かなたは専門家ではないので、現代のような確実な治療薬は作れない。
この時代に来たばかりの頃、出来ることが少なく暇を持て余していたかなたは、山崎に頼み込んで密かに土壌から放線菌を培養していた。そこから得られる抗生物質を茶や食事に混ぜて沖田に与える。一日に数度、地道に続けてきた。
結核の治療には複数の抗生物質が必要とされる。それを踏まえて土壌も数個用意し、培養を繰り返した。
生肉を使った実験で腐敗を防げた時の感動は、今も忘れられない。薬として出すのには半年ほどかかったが、それでも早い方だろう。
沖田に与えたとしても上手く効果が出るか分からなかったが、いま沖田の体調が良くなって来ていることが何よりの証明だ。
「それでも、まだまだ療養は必要ですよ!労咳はとてもしつこい病ですから」
「はい。かなたさんの言う通りにします」
沖田はふわっと笑い、どす黒い茶を一気に飲み干した。
「くぅ.......やっぱり不味いですね...!」
その渋い顔に、かなたは思わず笑ってしまう。
まだしばらく、この表情を見ることになりそうだ。
そんな上手く行くわけないだろ話の代表です。
ちなみにかなたは、実験で自分にもこの薬を投薬しています。顔歪ませるかなたをみて、多分山崎が引いてたと思う。




