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新選組トリップ奇譚  作者: 柊 唯
第十二章〜それぞれの道〜

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猫とゆく旅人

 邏卒への稽古や引き継ぎも終わり、それぞれが新しい門出に進む頃、静かになった屯所の前で、かなたはひとりぽつんと突っ立っていた。


 その後ろから足音が聞こえ、振り返ると、これから長旅だと言わんばかりの格好をした鈴木が姿を現した。

 もちろん肩には、お馴染みのミケ子が乗っている。


「よお」


「もう行くんですね」


「ああ」


 返事をしながら草履の紐を結ぶ鈴木を横目に、かなたは小さく息をついた。


「最初はどこに行くんですか?」


「まだ決めてねえけど、とりあえず大坂に寄って、西か東か……だな」


「なるほど……」


 鈴木は草履の紐を結び終わると立ち上がり、かなたの頭に手を置いた。


「お前のお陰で人生が変わった。次は俺も誰かの人生を変えてみっかな」


「鈴木さん……」


 思いがけない言葉に、かなたはぐっと涙を堪える。


「だからお前も泣いてないで、そろそろ大人になれよ」


「うわっ」


 そう言って鈴木は、髪をぐしゃぐしゃと無造作に撫で回した。


「じゃあな」


「にゃっ」


 あまりにも簡素な別れに、かなたは目を丸くする。

 しかし、すぐにその後ろ姿へ向かって声を掛けた。


「お元気でー!」


 三毛猫を連れた旅人。

 きっとそんなふうに呼ばれながら、あちこちを練り歩くのだろうな。


 そんな空想を抱きながら、かなたは鈴木とミケ子の姿が見えなくなるまで、その背中を見送っていた。

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