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神の骰子は万能ではない。  作者: 嶺上 三元
4/7

お前らのせいだ

 僕が女子からの陰湿なイジメを受けたのは、この高校に入学してから少ししてのことだった。


 その頃、クラスの女子の間では、いわゆる『罰ゲームでの告白』が流行っていたらしい。

 春先から録でもないゲームが流行ったもんだと思うが、まあ流行りなんてものはそう言うものだ。それはともかく、重要なのは僕はその罰ゲームの告白のターゲットに選ばれたということだ。


 とは言え、当時の僕はそんなものが流行っていたなどとは知らず、学校の靴箱に入っていた風早からのラブレターを額面通りに受け取り有頂天になった。

 シンプルに学校一の美人であった風早からのラブレターに、胸を躍らせながら手紙に書かれている呼び出し場所に向かったが、その際にちょっとしたアクシデントが起こった。

 呼び出された際に、手紙には特に時間が指定されていなかったので、僕はその日の授業を一時間サボって指定された呼び出し場所に出向いた。

 そうして授業をサボった僕は、サボりを誤魔化す為に教師たちの目から隠れるために物陰に潜んでいた。

 そうして風早を待っていたのだが、その際に物陰に僕が潜んでいることも知らない風早が、友達を連れて男子を相手に趣味の悪いゲームを行っていることを知った。


 風早たちが男子を相手に罰ゲームでの告白を行なっている事。

 今回は僕がそのターゲットに選ばれた事。

 僕に対しては恋愛感情どころか見下した感情論しか持っていない事。

 何よりも、ラブレターをもらって舞い上がっている僕を心からバカにしていた事。

 そんな様々な裏事情を知り、僕は風早たちに知られないようにそっとその場を離れると、そのまま逃げ帰った。

 正直、帰り際には、泣きたくなるくらい情けない気持ちが胸にせりあがり、夕陽を背にとぼとぼとぼとぼと帰り道についた。


 だが翌日、思いもよらないことで僕は風早たちに責められることになった。

 それが、ラブレターを出した風早を相手に約束をすっぽかした最低野郎だという事だ。

 そこで僕は、昨日の風早たちの会話と、あいつらの間で流行っている罰ゲームについて洗いざらいぶちまけたが、それが逆にあいつらの逆鱗に触れたらしい。

 風早たちは、僕が姿を隠して女子の盗み聞きをしていたことをキモいとのたまいやがった。

 別に盗み聞きするつもりは無かったし、そもそも悪いことしたのはあっちの方であって、僕には何の落ち度もないはずだ。


 だが、そんな僕の言い分を、あいつらをはじめとする女子たちはキモいの一言で全否定した。

 理屈にもならない無茶苦茶一辺倒の言い分だが、美少女二人が口を揃えれば、それは僕の訴えよりも説得力があったらしい。

 言い争っているうちに、僕はいつのまにか女子の話を盗み聞きするキモい陰キャで、風早を相手にストーカーしていたことになっていた。


 僕からすれば、ふざけんな。の一言だ。

 相手の方から因縁付けてきたくせに、無実の罪を被せられて、挙句の果てに訳の分からないキャラ付けまでさせられて、踏んだり蹴ったりなんていうもんじゃねえ。


 だが、悲しいかな。僕の言い分は誰にも届くことはなくとそのままなんとなくの空気で、僕が悪いということになってしまった。

 風早と春崎は、その美少女ぶりだけでなく、成績優秀な生徒ということもあって、男女問わずに生徒からの人気が高かった。

 だが、それ以上に教師からの人気と信頼が厚かった。


 だから、風早と春崎が俺を責め立てていれば、当然のことながら僕の方が悪いことをしているように見えるし、僕の言い分よりも風早と春崎の言い分の方が正しく見えたんだろう。

 

 そうして僕は、風早の悪ふざけの結果、キモくて最低な陰キャだからイジメても良いと言うことになった。

 無茶苦茶な理屈だが、その無茶苦茶な理屈が通ってしまった。


 学校に来る度に、牛乳をぶちまけられるわ。上履きがびしょ濡れになるわ。机の上に落書きがされるわ。と、碌でも無いことばかりが起こることになった。

今のところ、一線引いていると言うか、ギリギリ嫌がらせで済むと言うか、まぁムカつくなあ。程度の話で済んでいるが、最近はその一線も段々越えてきているような気がする。


 賢いやつなら、イジメの証拠を集めて世間に訴え出る。みたいなことをするんだろうが、そう言うチマチマしたことは苦手で、やっていない。

 どっちかと言うと、さっさと殴るなり蹴るなり手を出してくれないかな、というのが正直な感想だ。そうしたらこっちも殴り返せるからな。


 こう言う、ジメジメした相手とは相性悪い。穏便に暴力で決着つけてほしい。

 しかし、そんな僕の囁かな願いなど、僕をいじめている奴らが叶えてくれるわけもない。

 その日の午後も画鋲を靴箱の上履きに仕込まれる地味な嫌がらせをはじめとして、様々な嫌がらせが起こり、僕は溜め息をつきつつ学校の授業を終えて帰路に着いた。


 









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