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神の骰子は万能ではない。  作者: 嶺上 三元
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くるくる様に祈れば、怖くない


 くるくる様に祈れば、怖くない。

 それが僕の生まれ育った三ツ門(みつかど)町に伝わる伝説の一つだと言う。

 その伝説が囁かれるのうになったのは、正確にはいつ頃なのかは分からない。

 ただ、どうやらそこまで古い伝説ではないらしく、大正末期にはその伝説が生まれていると聞く。


 そんなあやふやで曖昧模糊とした伝説だから、くるくる様について分かっていることは少ない。

 人によっては、蛇の神様だとか、蜘蛛の神様だとか、魚の神様だとか、コウモリの神様だとか、色々と言われていて、確かなことは何も分からない。

 

 それでも、かろうじて三ツ門町の住人がくるくる様のことを忘れずにいられるのは、年に一度の夏祭りに行われる「くるくる音頭」のお陰だろう。

「くるくる音頭」とはいうが、踊る訳でもなければ、祭り囃しに合わせて歌を歌うわけでもない。

 ただ、祭りのクライマックスに町の大通りを神輿が練り歩く際に、神輿を見物する人間たちが神輿に向かってくるくるくるくると声をあげるのだ。

 この神輿の時の掛け声以外は至ってなんの変哲もない春祭りなのだが、祭りでそう声を上げる人間に何故にこんな掛け声を神輿に向かって投げ掛けるかと聞くと、全員が全員こう答える。


「くるくる様に祈ると怖くない。だから、くるくると言うの」と。


 だが、この言葉を口にする全員が、この言葉がどういう意味なのかを知らない。

 ただ、くるくる音頭について聞かれたら、必ず全員がそう答えるように、と、そう言い伝えられている。

 そんな、因習というには緩く、伝統というにはやや新しい風習が、三日ツ門町に伝わる「夏祭りのくるくる音頭」であった。

 こんな風習に真面目に取りかかる人間はいなかったが、それでも、夏祭りのくるくる音頭は三ツ門町の春の風物詩として定着していた。


 そんな他愛もない町の風物詩が、よもや思いも寄らぬ形で僕の人生を大きく変えることになるとは思わなかった。










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