疲れた1日
なんとも言えない顔で目の前のステータスらしい文字の羅列を睨んでいるとずいっとクロードが顔を近づけてきて言った。
「ねぇ、ねぇ。ちょっと試しにオープンって言ってみて。」
「はぁ?"オープン"?」
いきなりの事に仰け反りながらも言われた通り言ってみるとクロードは向かい合わせから私の横にピタリと移動してくる。
「うわぁー、いっぱいスキルあるじゃん。あんまり内容は聖女っぽくないけど」
「え?見えるの?」
「うん、オープンっていうと周りの人にも見えるようになるんだよ。だからステータス見てる時に無用心に言っちゃだめだよ。」
いやいやいや、あんたが言わせたんじゃん。
んー、どうもクロードは信用していいのか怪しいところがある。
私はなにも言ってないのに挙動からステータスが開けた事を読み取るあたり、なかなか油断ならない相手だと言えるだろう。
私がジト目で見つめていても何にも気が付いてないような顔をして彼は話し続ける。
「凄いね、鑑定士持ってたんだ。あとは…聖なる祈りは回復系のスキルだ。無限回廊はいつでも異次元空間呼び出せて使えるやつだね。人間を放り込んだら一生出られないやつ。」
嘘!めちゃくちゃ怖いじゃん、それ!
恐怖で青ざめる私にクロードは使用者は入ってもいつでも出れるし取り出したいものもすぐ出せるし、なんなら時間経過を止めることも出来るからめちゃくちゃ便利なスキルだよと教えてくれた。
先に言ってよ、悪意を感じるよ。
悪戯が成功して嬉しそうな顔をしていたクロードは急にハッとした顔をするとじっとステータスを凝視する。
「どうかした?」
「いや……24歳にしては老け顔だなーって思って。」
表情を一転させてケラケラ笑いならが見えねぇとか言い出すクロードにわたしは素早くチョップを繰り出した。
私のチョップは綺麗にクロードの頭にヒット。
頭を抑えて冗談じゃんかよと悶絶する彼に背を向けると体育座りをして膝に頭を埋め、ため息をついた。
流石に色々ありすぎて体力の限界である。
「俺が見張ってるからもう寝な。お疲れさん。」
クロードはそういうとぐいっと私の肩を引っ張り、こてんと私は仰向きで横になる形になった。頭の下にはさっき来ていた服を入れた麻袋がいつの間にかある。
そして私の上に黒いマントをかけると頭を撫でて私の眠気を促した。
(頭を撫でてもらうなんて何年ぶりかしら…)
この歳で頭を撫でられるというのはなかなか恥ずかしいものがあったが不思議と心地よく、ウトウトしてしまう。
頭を撫でるクロードは先程とは一転してとても優しい顔をしていた。
(あぁ…そんな顔もできるのね……でも……)
私はありがとうと言って目を閉じる。目を閉じても頭を撫でる手は止まらず、久しぶりに感じた人の温もりがとても心地よく、私はすぐに眠りにへと落ちていく。
(でも、なんでそんな目で見るのかしら?)
とてもとても暗い光を瞳の奥に感じた。
ても、そんな疑問はすぐに散って消えていった。