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人殺しの助手  作者: レア
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「あははは! アリアつったっけ? あいつには感謝しないとな。隙なんてどこにも無かった殺戮人形様に亀裂を入れてくれたんだからさ! あたしは出来上がった弱点を突くだけ、そうすりゃ簡単にぶっ壊せる」


「っ!?」


助手の口から苦痛に耐える声が漏れる。

コートの内側、脇腹のあたりがゆっくりと赤く染まっていく。そこにはナイフが突き刺さっていた。


「病院ではお静かに」


にたにたといやらしい笑みを浮かべ殺さない程度の痛みを与えて苦痛に歪む助手の表情を見て楽しんでいる。


「このままだと死んじまうぞ、命乞いでもしたらどうだ?」


「‥‥‥‥」


「つまんねぇな、かけがえのない命なんだからさ大事にしろよ。命ってのは天から授かった祝福、神様の寵愛の具現化なんだぜ、それを簡単に捨てちまうのは不敬が過ぎるってもんだろう?」


「お前のような殺人狂から命の大切さを説かれるとはな」


「大切に決まってんだろ。お前の命も向こうで転がってる奴の命もそれ以外も全部あたしの玩具なんだから。あたしの手で丁寧に壊れるまで遊んでやりたいのにお前みたいに初めから壊れてたら遊びがいないだろ」


自分より下の人間全てが自分の所有物、女の狂気はこの大きな勘違いから生まれている。

自然界の獣と狡猾な人間を混ぜ合わせた様な生き物。

獣の様に周りの人間の年齢も性別も人生だって気にせずに容赦無く牙を剥き人間の様に知恵を回し誰かを痛め付けて快楽を得る、この世で最も最悪な生き物。

判断基準は力、自分より弱い者は全て捕食対象となる。


「これは修理が必要だな」


そう言って女は窓を開く。


「人間らしく必死に足掻いて見せろよ」


手に持っていた起爆装置を窓から外に放り投げた。


「地面に落ちる前にキャッチしないと爆発しちまうかもな!」


女の言葉を全て聞き切る前に助手は窓から飛び出していた。

ここは七階、普通に飛び降りればいくら助手だって無事では済まない、だからまずは木に向かって跳躍。枝でどうにか勢いは殺せたが地面に落下した時にかなりの衝撃を身体に受けたのか苦しげな声が漏れ出る。

それでも立ち止まっている時間なんて無い、起爆装置は今にも地面に到達してしまう。

助手は傷ついた身体で必死に足を動かしやがてその手は起爆装置を掴み取る。


「優秀なワンちゃんじゃねぇか! 良い子良い子してやるから咥えた玩具を尻尾振ってご主人様に返せよ」


ほら、と犬を呼ぶみたいに手を動かす。

助手は手にした起爆装置を握り潰した。


「やはりな‥‥偽物か」


「あれ!? 気付いちゃった!」


「軽過ぎる、中身の無い玩具だ」


「そうだよ。だから咥えた玩具を返せって言ったのにさ壊しちまうなんて躾のなってない駄犬だなお前は」


「‥‥お前のような臆病者が切り札を手放すわけがない」


ほとんど確信があった、この女が人質を手放すはずが無い。常に上から人を見下していないといられない性質、愉悦の為とは言え優位を失う真似などしない。


「そう思ったなら必死こいて追いかけてんじゃねぇよ間抜け!」


女の言う通り追いかける必要なんてなかったが助手は無視出来なかった。

以前なら確率が高いと判断した方を迷いなく選べたというのに万が一なんかを考えて身体が勝手に動いてしまった。

余計な無茶をしてぼろぼろの身体で飛んでくる蹴り受け止める。


「おい? 抵抗したらどうなるか━━━━」


「どうにもならない」


何処かからか聞こえて来た声に女が動きを止める。


「あなたの爆弾はこっちで回収して解除済みだから」


どう見たって普通の女の子がおよそ似つかわしくない物々しい機械を済ました顔で放り投げる。

どさっと地面に落ちたそれを恨めしげに眺める女の表情を見る限りそれが切り札の爆弾だったのだろう。


「お前、どういうつもりだよ?」


怒りを超えて殺意に満ちた声を容赦無く浴びせる、だがそれを受けても全く動じていないどころか面倒臭そうにため息を吐く余裕すらあった。


「あなたの役目は終わり、速やかに帰還しろってさ。これ命令」


「ふざけんな! あとちょっとでこいつを殺せるんだぞ!」


吠えるように叫ぶ女の声に対して心底不快そうに耳を塞いで対処している。猛犬を前にしてその態度、恐怖感が欠如でもして無ければ出来ない。

その人物がこうも冷静に対応出来る理由は一つ、目の前の猛犬に首輪がつけられていると知っているから。


「私は命令を伝えに来ただけ、無視したいなら勝手にすれば良い。自分の命と引き換えにしてでも彼女を殺したいならね」


「ちっ‥‥」


女は不服そうに舌を鳴らし最後に助手をひと睨みして消えた。


「‥‥‥助かった、リディア」


助手が感謝を告げるとリディアと呼ばれた人物は大袈裟に驚いて見せた。


「あんたがそんな言葉を使えるようになったんだ」


助手の昔を知っているような口振り。

さっきの女も含めて知り合いだった。


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