第二十八話『同時に出すって、難しいですね』
「いっせーのーで!」
「って、同時に出せるかよォォォ!!」
誠司、午前2時。
自宅でキーボードに向かって絶叫中。
三ツ谷と始めた“共著プロジェクト”。
アイデアは、こうだった:
同じテーマ
同じキャラ
二人の視点で交互に執筆
最後に“同時アップ”で仕上げる
だが――
三ツ谷のプロットは、
知的で切なくて、泣ける
一方、誠司のは……
「……なんか、パンツ星の亡霊がまた暴れてる……」
「同時に出すって、こんなに難しかったっけ……!?」
昼。カフェで合流したふたり。
「先生、締切は“同時”って言いましたよね?」
「そっちが“早く出そうとする”から、こっちが焦るんですよ!」
「じゃあ先に出してくださいよ!俺あとからイきますから!!」
「そういう問題じゃないです!!読者が冷めるんです!!」
周囲の客が静かに距離を取りはじめた。
三ツ谷は、タブレットを差し出した。
「……読んでください。
これが私の、“まだ挿れられていない側”の視点です」
誠司は、それを真剣に読み始めた。
『私はずっと、出してもらえるのを待っていた。
でも彼は、自分の話ばかりしていた。
私の物語は、どこにも届いていなかった――』
誠司、撃沈。
「ごめん……ほんと、ごめん……
俺、ずっと一人で出した気になってただけだったんだな……」
三ツ谷が、苦笑した。
「じゃあ、次はちゃんと……
“同時にイけるように”合わせてくださいね?」
つづく




