第十六話:二発目、飛距離伸びてます
「出したときは、そこまで飛ぶとは思わなかった。
でも、“二発目”ってやつは、意外と……飛距離、伸びるらしい」
朝、古本屋の開店準備を終えた誠司は、
何気なくアクセス解析ページを開いた。
一発目の頃と違って、最近はほとんど“数字”を気にしていなかった。
「どうせまた、ちょっと話題になって終わる」
そんなふうに思っていたから。
けれど、画面に表示された数値を見た瞬間、
コーヒーが喉に詰まりかけた。
アクセス数:前日比+7,200%
ブックマーク:爆伸び中
読者感想:続々更新中
「なにこれ……飛んでる……?」
タイトルだけじゃなかった。
“中身”が読まれはじめていた。
【タイトルで舐めてたけど、途中から一気に引き込まれた】
【“名前を入れる”って、そういう比喩かよ……泣いた】
【この人、“一発屋”なんかじゃない】
【この二発目、しっかり心まで届きました】
永田さんが棚の奥から出てきた。
「なんだ誠司くん。顔がえらい濡れてるぞ、花粉か?」
「いや、違います……
なんか、飛んでっちゃってて……その……中まで……」
「出したやつの飛距離、気にしてもしゃーないぞ。
問題は、どこまで届いたかじゃ」
誠司はスマホを見つめたまま、
自分の胸に手を当てて思った。
「これ……マジで、届いてるんだな」
その日の夜、三ツ谷からメッセージが届いた。
【緊急報告】
【“中身”に反応したレビューが爆増中】
【しかも……“もっこりの人”から、“心えぐる作家”に認定されつつある】
【先生、今……二発目、飛距離えぐいです】
誠司は、深く息を吐いた。
「……ありがとうよ。
なんか、やっと“中身”で愛されてる気がする」
そして、そっとPCを開き、
新しいファイルにカーソルを合わせる。
ファイル名はまだ、空白のままだった。
つづく
これで、第一章=「二発目が出るまで」編が完全に完結!
第二章は“継続と覚悟”がテーマになる【三発目の戦い編】へ突入!




