イリスの魔法査定
「ふんっ!」
私はそう言うと勢いよくイリスの掲げる手の平に思いっきり拳を打ち込んだ。
「どう!?」
「威力は悪くないけど全然だめだね」
「ガーン」
私は擬音を口に出すとそのまま力を失い、地面に仰向けに倒れ込む。
「どうせ私は魔法の才能なしですよ、ふーんだ」
「いや、そんなわざとらしく落ち込まなくても」
イリスは手を頭の方にやりため息をつく。
「でもね、レイラ。さっきのほんの僅かではあるけれど魔力が感知できた」
イリスは膝を折り曲げ、仰向けに倒れ込んだ私の顔を覗き込んでくる。
その一言を機に私はカッと目を見開く。
「まじ!?」
「まじもまじ。大まじだよ」
私はそう聞くと喜びのあまり勢いよく立つ。
「ぬおおおおお!ついに来たのかぁ!で、それで私はどんな魔法を扱えるようになったの!?」
「いや、レイラにまだ魔法は扱えないよ」
「ガクゥ!?」
私はまたしても擬音を声で発し、地面に倒れ込む。
「そ、そんなぁ……ちょっと期待したのに」
「また倒れた。レイラ、今は魔法を扱えないけれど日々の積み重ねで必ず魔法を扱えるようになる。今まで0だったものを1にすることが出来たんだ。1を2や3にすることは0を1にするより簡単だと思うけどな」
「ふあ!た、確かに!」
そう言うと私は嬉しさのあまり再び飛び起きる。
「また元気になった」
「じゃあ!私はどんな魔法練習をすればいいの!?」
「魔法練習ならもうしてるじゃない」
「……え?」
魔法練習はもうしてる?
いやいや心当たりなんてこれっぽっちもないぞ。
だって、魔力のない私が扱ってるものといえば魔法の埋め込まれたカードから詠唱して魔法を扱うってだけで……。
「あ」
「そう。レイラは今の所、魔法の埋め込まれたカードを扱っているよね。それを使うことで魔力のないレイラでも魔法を扱うことが出来てる。要は魔法の発動の仕方は既に分かってる訳だよ」
「なるほど?」
「今は魔法のカードを使ってるけど、それをレイラ自身の魔力に置き換えていけばいいだけの話。あとはレイラの魔力が魔法を扱えきれる程の魔力量になるまで待てばいいんじゃないかな」
「つまり後は時間が解決してくれるってことか!よーし!ってことは私も斬撃を放ったり、手から炎を出したり、水棲生物を形作ったり出来ると!」
「いや、レイラがどの魔法を扱えるかなんて分からないよ」
「……え?」
「魔法ってのは適正があるからね。どの属性の魔法が扱えるかはその時にならないと分からない」
「……つまり、私はどの魔法を扱えるか選べないってこと?」
「残念ながら」
「……」
私は全身から力が抜け再び×2地面に倒れふした。
「いや、この下り何回するの」
「てっきり扱える魔法を選べるとばかり……」
「選べはしないけど、適正の魔法ある魔法を扱えるようになるんだ。ちゃんと使いこなすことが出来ればそれはとても強大な武器になる」
「……」
「今回は起きないのか、はい手を貸してあげるから。起きて」
私は伸ばされたイリスの手を掴み体を起こす。
「ちなみにイリスの風魔法もそうなの?」
「うん。私も扱える魔法を選べた訳じゃない。気がついたら風魔法が宿ってたんだ」
「そっか。じゃあイリスがここまで強くなれたのは適正のあった風魔法のおかげな訳だ。じゃあ、私も頑張らないとね」
「はは。やる気があって何より」
イリスがここまで強くなれたのは魔女の力によるものなのかもしれない。けれどもそれだけでここまで強くなれる訳が無い。本人の努力があったからこそここまで強くなれたのだ。だったら私も頑張ればイリスほどにはなれずとも、上手く魔法を扱えるようになるかもしれない。
「それに私に魔力が宿ったのはイリスのお陰なんでしょ?じゃあ尚更頑張らないとね」
「私は別に何もしてないけどね」
「いやいや、魔法ってのは魔女の影響によって扱えるようになるんでしょ。じゃあイリスのお陰じゃない?」
「レイラに魔力が宿ったのは、私が拒絶してもめげずに着いてきたレイラの功労のおかげだよ。レイラがあまりに頑固なもんだから魔力の方も勘弁したのかも」
「えー。そんなこと言わずともー」
「まぁいずれにせよ、これはレイラ自身の努力の賜物だよ。そこは誇っていいんじゃない?」
「確かにそうかも。えっへん」
レイラは自信ありげに腰に両手を添え胸を張る。
それを見てイリスは苦笑いを作り、頭の中で少しばかりの考え事をする。
(魔法は魔女の影響によって扱うことが出来る。レイラに魔力を宿ったのは私の影響を受けたからなんだろうな。やっぱり私も魔女として少しばかりはあるけど影響をもたらしているのか。)
イリスはそう考えこんだあと、眉をひそめ顎に手を当て分かりやすく考え事をしているポーズを取る。
(多分だけど日々魔女の魔力が強くなって気がする。私にはまだ魔女の力を扱い着ることは出来ないけど、あの事件の後エーデルワイスやレイラ曰く私が魔女の魔力を暴走させてしまったことから、その力が私かに宿っていることは明白)
イリスはふと胸を張って自信ありげな表情を浮かべるレイラを見て、少しだけ頬をゆるめる。
(私もレイラと同じく魔力を扱い切れるよう努力しないとだめかもな)
「あ、そういえばイリス。この後、時間空いてる?」
レイラはそうイリスに尋ねる。
イリスは不思議そうに首を傾げ言う。
「空いてるけど、なんで?」
「ふっふ~ん、それはね……」
私は鼻歌を歌い続きの言葉を紡ぐ。
「クッキー作りしようと思って。イリスも一緒にどう?自分が作ってみたクッキーは食べる時より一層美味しいと思うよ」




