番外編8 海斗と総司と香織と奈央
俺は頭を抱えていた。
奈央の中での「お兄ちゃん」はどうなっているのだろう。
あの妹はなぜ平然とし、妙な理解があるのだろう。
それがあるからこそ、俺は悩む羽目にあっているのだろうが。
俺から言わせれば、父さんのせいであるから父さんを責めたい。
漫画は俺のものである。これは年頃なのだから責められることではない。そういう盛りのときに入手し易かったのがそういう漫画だったのだから。
声を大にして言いたい。
「あのDVDは全て父さんの物だ~!」
「父さんの趣味だ~」
「親子なんだから多少趣味がかぶるのがなんだっていうんだ~」
「先輩も和維も健人も奈央も玲奈ちゃんも!!皆、誤解なんだ~」
ここで本当に叫ぶわけにもいかない。
俺はがっくりと肩を落とした。
父さんはそれらの保存を俺に頼んできた。そのかわり、自由に見てかまわないと言われた。父さんにポータブルのプレイヤーまでプレゼントされた。
「…これ、口止め料?なら、ヘッドホンもつけて。音漏れは俺も恥ずかしい」
「うむ」
俺は本棚の本の位置を動かすと空いている箱…ドーナツ屋の景品である、につめて本棚に押し込んだ。
「父さん、ここに置いておくから」
「うむ」
二人で握手をかわした。
◇◆◇
妻・香織から言われてしまった。悲しくもありがたい、いや、やっぱり悲しい通告である。
「私もね、なるべくお断りはしたくないのよ。でも、いつまでもこうお盛んだと、私、死んでしまいます。
体力も落ちていくし、仕事もあるし。家事は奈央が手伝ってくれるおかげで楽させてもらってるけど、それをムダにしてしまうほど消耗させられるのよ。
たまにならいいのよ?嫌いとか、そのものが苦痛とかいうんじゃないのよ?
溜まるのも仕方ないし、総司さんのことも愛しているわ。
…でもね………本っ当にやりすぎだと思うの。性欲もう少し落ちてもいいと思うの」
「それは、いつまでたっても香織が魅力的だからであって…」
「そういうことを言っているのではないの」
「はい」
浮気しようとか、他の女でいいなんて思わない。香織がいいんだ。嗚呼…。
「たまにはお付き合いします。なので、これからはお断りする回数増えると思います。
妊娠中は我慢してくれていたんだもの。できるわね?」
いいえという返事をさせる気なんてまったくなさそうである。
「うむ。わかった」
「レンタルでも購入でもそのへんについて私は何も突っ込みませんのでお任せします。家庭円満のための経費です。家計を逼迫させない程度であるならいろいろご利用してみるのもいいんじゃないですか?
意外と新鮮かもしれないわ!あ、二人で見ればいつもより、よりいいかもしれないわね。ふふっ」
奥さんからの十分すぎる理解により、少しずつ増えていった。
子供達も大きくなった。年を追うごとにさすがに欲は落ちていった。それでも少しずつ増えるのは変わらない。ここで困ったのが置き場所である。
夜中というにはまだ早い時間だが目が覚めた。水分を摂りに台所へ行った。
何か物音がしたような気がする。二階か?まだ起きているのか。
起きているなら寝るように言わなければならない。明日も学校だ。育ち盛りなんだ。しっかり眠らせなくては。
静かに階段を上がっていく。
海斗の部屋の明かりがドアの隙間から漏れていた。注意をしようとドアの前に立ったがそっとその場を離れた。
長男はもうそんな歳になっていたのだと気付かされた。
今は自分達の頃よりもそのための物を手に入れるのは難しいかもしれない。
そうだ!置き場所にも困ってきたし海斗に譲ろう。それがいい。
千里だけはあれ買ってこれ買ってといってくるが、海斗と奈央はそういう我が儘は言ってこない。
置かせてもらって二人の共通財産にすればいい。よし、それでいこう。
◇◆◇
「奈央~。もし小包届いたら受け取っておいて。配達指定してないから不在票入ってるかもしれないけど、入っていたら電話して受け取りよろしく」
「うん、わかった」
テレビを見ながらお母さんに話してみる。とある女性芸能人が「彼女や奥さんがいるのにビデオ隠し持っているなんて不潔よっ」と息巻いている。
「そうなの?」
「そうでもないと思うんだけどね~。奈央はどう思う?」
お母さん、娘にそんなこと話していいの?保健体育だと思えばいいのか。
友達の中にももう初潮を迎えたこもいる。そのせいで、最近は女子の間でそういう話もする。
お兄ちゃんに「友達のお兄ちゃんが中学生にもなってお漏らしして朝こっそりパンツ洗ってたんだって」という話をしたら、それはそうじゃなくて…と教えてくれた。私とお兄ちゃんにとっては見ず知らずの人だが、「彼の名誉の回復のために誤解をといてやってくれ」といわれたので、翌日話していた子にお兄ちゃんから聞いたことを伝えた。たまたま近くに居た体格のいい男の子は自身の成長スピードを考えると他人事とは思えなかったらしく、「井上ありがと。勉強になった」と自分の席へ戻っていった。
っていうこともあった。
「う~ん、よくわかんないけど、よその女の人とされるよりは自分でやってもらうほうがいいなぁ。
不潔とは思わないけど、彼女や奥さんだけじゃ満足しないものなの?」
答えてみてやっぱり小学生に聞くことじゃないよねと思うが、これも勉強とあきらめる。
「男の子の若いときのそれってすごいわよ。私を殺す気かって思うくらい終わりが来ないわよ~。
そういうのもあるから、しっかり身体が出来上がってから愛する旦那さまとしなさいね。
お父さんなんて今でも私にメロメロで困ってるくらいよ」
「メロメロ…」
「全部つきあったら本当に死ぬかもってくらい体にくるのよ」
やだ。こわい。そんなだったら、一生しなくていいわ。
「もう、や~だ。奈央、そんな顔しないの」
させたのお母さんです。
「だから、男の人にそういうの使ってもらって自分で抜いてもらえばいいのよ」
「うん、わかりました」
届いた小包はお父さんのそういう時に使うものだそうだ。
「奈央、そんなに怖がったり嫌悪するんじゃないよ。そうしなきゃ奈央たちも誰も生まれてないんだから。
もう少し大きくなったらもっと情報も入るだろうし、1度くらい試しにほんのちょっと観てみるのもいいかもね」
こうして私は、ある日お兄ちゃんの本棚で見つけた…本とDVD…お母さんの言葉と好奇心で手に取るのであった。
ありがとうございました。
次話からは高校二年になっていると思います。
新連載にはせずにこのまま足していくことにしました。
引き続き、奈央と雅をよろしくお願いします。




