番外編4‐4
腹の立つ乱入者のせいでお腹がすいた私は、冷凍うどん5食分を使って、どんっとお昼ご飯を出した。
「………おうっ、奈央。……多い、な」
「そう?のびる前に全部食べてね」
具は鶏肉と長葱とタマネギにタマゴだけだが、麺が多いので足りない事はないだろう。
ラーメンどんぶりとご飯どんぶりに山の様に盛り、二人の前にトンッと置く。私の分は、ドーナツ屋の小さめのどんぶりに盛る。自分のだけ、麺は一人前位に野菜多めだ。
「あれ?足りないなら、何か作り足すよ」
「ううん、足りるよ。姉ちゃんアリガトウ」
「奈央。兄ちゃん、カッコイイままでいたいんだけど…ダメか?」
お兄ちゃんが申し訳なさそうに私を見る。千里は諦めているが、お兄ちゃんはそうはいかないらしい。吐くかもとかもう若くないとか言ってるけど、きこえなーい!
駄目だよ。ちゃんと食べて欲しいな♪そんな気持ちを込めて、ニッコリと微笑むと、お兄ちゃんは目を逸らし、「いただきます」と手を合わせて食べ始めた。
万が一お兄ちゃんがブフォとか言って噴き出して鼻からうどんが出たとしても、お兄ちゃんは格好良いし大好きなままだから安心して欲しい。
半ば嫌がらせ…八つ当たりだった昼食(ごめんねお兄ちゃん、千里。反省しています)を終えて片付けを済ませると、お兄ちゃん立会いの元、タンスの中身を改める必要があるかチェックした。
少なめの枚数で着回しているせいで、下着に使っているTシャツとトランクスは広げてみると、なんだか生地が薄くなって透けている。節約の仕方間違ってない?
「…お兄ちゃん?」
「まだ、穴開いてないだろ」
靴下も爪先や踵がシースルーになっているものがある。ちょっと伸びた爪で刺したら穴が開きそうだ。
「出掛ける時はちゃんとしたのを履いているぞ。それは作業用の3軍ソックスだ。靴を脱ぐ時は絶対履かない」
という有様だったので、三人でお兄ちゃんの衣類を買い足しに出た。もう、お兄ちゃんの意見は聞かずにサクサクと買い求めた。
本当は帰りにこっそり渡そうと思っていた荷物がある。お父さんから預かった物だが、中身は知っている。宅配の荷物を受け取ったのが私だったからだ。
その日、宅配のお兄さんが、急な冷込みのせいで凍った道路で荷物を持ったまま転んでしまい、受け取りの時に商品が無事か開封しての確認をお兄さんの前でしたのである。物がモノだったので、お父さんが代わりに頼んだ様だったが、お蔭で新しい「秘蔵の品」のタイトルを見ることができた。お兄さんとの時間が非常に気まずかったと言っておきましょう。
夕飯を食べたあと、思い出した様にテーブルの上に置く。
「あ、そうそう。これ、お父さんから渡す様に頼まれたよ」
お兄ちゃんは素知らぬ顔で受け取ると、その流れのまましまおうとする。
「『美人妻』と『ツルペタ』と『巨乳秘書』は無事届いたけど、『調教』と『ネコ耳メイド』は割れちゃってたから持ってこれなかったよ」
私はキラキラの素敵笑顔で話しかけた。
お兄ちゃんはギギギと音をたてながら振り向いた。
「……と、父さんの趣味だ」
「そう?私は何も気にしないよ。でも、ムチや低温ろうそく使う様になったら見方変わるかも?」
「兄ちゃん、そういうのもイケるクチか。何でもアリだな。スゲー」
あれ?やりすぎちゃったかなぁ。
夜の団欒も終わり、雅さんに今日の出来事をかなりはしょって電話で話した。全部ばか正直に話したらこっちに来そうである。嘘はついてないけど全て話したわけじゃない事はお見通しのようで、「ふぅ~ん」という声が少々不満そうであった。わざわざバイトのある日を選んでこっちに来て良かったと思う。
こんな風に言いつつも、こうやって雅さんと話すのは心が安らぐし、話している時の私の顔は乙女っぽくて可愛かったそうだ。お兄ちゃん談である。
2日目。
お兄ちゃんは午前中からバイトに行ってしまった。千里と二人で一通りの家事を済ませ、只今寛いでいる。
「姉ちゃん、今日、何するの?」
一人で来ていれば勉強しているつもりでいたのだが。
「うーん。桜…はまだ咲いてないし、どうしようか?」
二人で顔を見合わせる。お兄ちゃんとお出かけしたかったが居ないものはどうしようもない。バイトを休ませてまで付き合わせるのは違うし。
でも、ちょっと寂しい。
「えっと、じゃあ、これから今日の分の勉強して、午後から二人でぶらぶらしよっか」
「しょうがないから、姉ちゃんとデートしてやるよ」
「ふふ、ありがとう」
さてさて、どこへ行こうか?
私と千里の前に『萩野光一』さんがいる。ここは、ファストフード店だ。
「でさ、そろそろ本当の事話してよ。奈央ちゃんが井上の彼女なんでしょ?」
「だから違いますって。妹だって言っているでしょう!」
「姉ちゃん、こんな頭イカれた人放置して帰ろうよ」
この萩野さん、昨日の『根本ナントカ』さんだ。本当に知人以下だった様で、うろ覚えの名字すら違っていた。萩野さんも表には出さなかったが、名字すら知られていなかった事がショックだったらしい。
本当にまた今日私(達)に会うつもりだったそうで、うちに向かって歩いている所でばったり出くわし、こうなっている。私一人だったら110番していただろう。
そして、さっきからこの人は私の事をお兄ちゃんの彼女だと思い込んでいる。何でそう思うのかサッパリ分からない。
「あの。お兄ちゃん、ちゃんと私の事、妹だって言いましたよね?私達似てると思うんですけど」
今現在、保険証も学生証も何も証明できる物がない。
「どうしたら信じてもらえるんですか?っていうか、そもそもどういったご用でしょうか?これ以上訳の分からない事言い続ける様なら、今度こそ警察に電話しますよ」
「は?どうしたらって。妹って事は、井上と年子だとしても高校生だろ?高校生になんて見えないじゃん。弟くんは高校生に見えるけど」
私そんなに老け顔?確かに大人びて見えるとは言われる事あるけど。
「姉ちゃん、雅さんの写真、携帯に入ってないの?」
私は携帯からクリスマスの時の雅さんとの2ショットの写真を選ぶと萩野さんに見せた。
「私の彼氏はこの人です。他の写真も見て頂いて構いません。……私、この春から高校2年生です」
「………………え?」
その結果……。
ちょっと強引すぎたでしょうか。
無理矢理縮め過ぎたかな?
来週も更新する予定でいます。
ここまでお読み下さりましてありがとうございます。
次話もよろしくお願いいたします。




