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第34話 キレてもいいですか

雅さんには昼間会えたので、本当は電話しなくてもよかったのかもしれないけど電話をした。結果だけいうと、してよかった。

この電話で謎の1つは簡単に解決したからだ。ただお母さんには、携帯電話を借りにに行ったのが午後10時近かったので叱られてしまったが。

気をつけないと雅さんの好感度を私が下げてしまう。でも今日は非常事態なのです。


『奈央の所に質問が続いた理由の1つはわかったよ。

彼女達のいう先輩はオレじゃなくて翔惟のことだったよ。

翔惟の方では自分じゃなくてオレと付き合っているんだって言ってあるそうだから、とりあえず落ち着くと思うよ』


ホッと胸を撫で下ろす。


「それなら『本当だったんだ』っていうのも、勘違いしてる人達が『翔惟先輩と付き合っているのが本当だったんだ』って思ったってことでしょうか。それなら誤解が解けていきますね。よかったです」


もうこれで安心だ。


『ただね、翔惟も首を捻っていたのが、自分の彼女は年上で同じ学校にいないっていうのを今まで断る時にいちいち言ってたそうなんだよ。だから少なくても今いる2・3年生はそれを知ってるはずなのに、何で今頃そんな事をきかれるのか不思議がってたんだよね』


うーん、突き飛ばされたのも勘違いによる嫉妬かと思ったのに違うのだろうか。


『奈央、もうしばらく身の回り気をつけてね』


まだ足の小指が痛いなぁと擦りながら、明日も気をつけようと思った。




教室に入る。えっ何?何だかいつもと違う。近くにいる子に挨拶する。


「おはよう、田中さん、めぐみちゃん」

「奈央ちゃんおはよう。…大丈夫?大事にしてね」


そそくさと居なくなってしまった。何だろう。わからない。

お手洗いから戻ってきた玲奈が私の腕を引っ張って廊下に出る。


「もうっ、だから走りたくないんだってば」


引っ張られた時に足を机にぶつけてしまいジンジンする。


「ねぇ、何か変じゃない?あたし達っていうか、奈央何かした?」

「わかんないよー。さっき田中さんとめぐみちゃんもなんか私を避けるようにいなくなっちゃったし。…もしかしてイジメ?」


解決しそうだと思っていただけに、ショックが大きい。すっかりしょげている私の側に、いつの間にか健人くんと和維くんが立っていた。


「奈央ちゃん平気か?」

「だめかも~」


いつもは明るく元気な健人くんの声にも心配する気持ちを感じる。


「翔兄の方でもさ、多分ないと思うけど万が一自分の彼女に変な噂が届いたら嫌だから奈央ちゃんのことは違うって無駄にアピールするって言ってたよ」

「ありがとう」


時間になったので教室に戻った。

この日はその後四人で過ごすようにした。





翌朝。

思ったより早く足の小指の痛みが無くなったので多少気分は上向きだ。昨日より少し元気になった私を見て、玲奈が不思議そうな顔をした。


「おはよっ。もう、足痛くないんだっ」


何だか沈んでいるのもバカらしい。

玲奈の腕を掴むと「走るよっ」と引っ張った。


「や~だ~、朝から疲れる~~」


ごねる玲奈と校門まで走った。疲れたけどスッキリだ。

校門をくぐり息を整えながら歩いていると、中学が一緒だった唯子ちゃんと知佳ちゃんが慌てた様子で駆け寄ってきた。


「ちょっと奈央ちゃん大丈夫なの?無理しちゃ駄目だよ」

「そうだよ。走ると危ないよ?」


いや、もう足痛くないし。私の小指痛かったのって有名なの?

知佳ちゃんが耳元に顔を近付けてきた。


「奈央ちゃん、お腹に赤ちゃんいるんでしょ?」


ナンデスカ、ソレ。

本当に私の話ですか?絶句である。

皆、変だったのこのせいでしょうか。


「知佳ちゃん、あたしそれ初めて聞く話なんだけど、何気に有名?」

「うん、あたし達聞いたの夏休み中だもんね」


夏休み?何でーーー?


「その出所ってわかる?」


唯子ちゃんが教えてくれた。


「あたしは、バレー部のマネージャーの高杉さんからきいたよ」

「高杉さんって、あの高杉さん?」

「うん、あの高杉さん」


私も正気に戻った。


「唯子ちゃーん、知佳ちゃーん、何でそんな話信じるのよぉ。そんなの嘘に決まってるじゃない。

それ嘘だから!他の人にも嘘だって言って下さい。お願いします」

「そうだよね。奈央ちゃんがそんなワケないって思ってたんだけどさ」

「高杉さんが、内田くんがそう言ってたっていうから。

奈央ちゃん、内田くんと仲良しでしょ?」

「そうそう。しかも相手の人が和維くんのお兄さんだっていうし、奈央ちゃん走らないようにしてたから」


私達の顔がコワくなってきているからだろう。

二人は責任は果たしたとばかりに後ずさって離れると逃げるように居なくなった。


「どうしたらいいと思う?」

「まずはバカに話を聞きましょう」


私達は健人くんを問い詰めることにした。


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