第22話 好奇心に繊細さを求めます
洗濯物も干し終わり、二人で涼しい部屋にて私は勉強、雅さんは読書をして時間を潰し、洗濯物がもうほとんど乾いた頃になって、漸く皆が帰ってきた。
皆、存分に楽しんだようだ。
海に入った人達は後始末とシャワー、他の人達は夕飯の準備に別れることにした。健人くんが
「バーベキューだ!焼き肉だ!焼きそばだ!イエーイ!」
と浮かれている。私はお母さんに
「バーベキューなの?」
ときいた。お母さんは恭子さんに
「そうなの?」
と振った。恭子さんは雅さんに
「いつ、決まったの?」
ときき、雅さんは翔惟先輩に
「オレ知らないよ。翔惟は知ってる?」
と質問し、翔惟先輩は和維くんに
「俺は食えりゃ何でもいいけど。アレどうなってんだ?」
と健人くんを指差した。和維くんが健人くんに、
「健人、今夜バーベキューなのか?誰もその話きいてないって言ってるぞ」
と話す。健人くんは
「夏の海といえばバーベキューでしょ。焼き肉でしょ!焼きそばでしょ!!浜焼きも有りでしょ!!!」
と力強く言った。恭子さんが、
「炭使うと脂や煙、すすなんかで汚れるのよ。準備も後始末も大変なのよー。においも残っちゃうし。外だと蚊にも刺されて困っちゃうわ」
とバーベキューを拒否する。
「でも、食べたい物があるなら、買い物行く前に早く決めて教えてちょうだいね」
そう言って健人くんに希望を持たせてくれた。
恭子さんが、焼き肉はダメだけど、ホットプレートは2つあるから使っていいというので、お好み焼きと焼きそば、それにフライドポテトにサラダ、キムチ、市販の餃子でも焼こうという事になった。
買い出しの時に翌日の朝食と昼食の分も忘れずにとしっかりメモして、恭子さんと雅さんと私で買い物に出掛けた。
また、私が助手席だ。後ろに乗ろうとしたら、
「オレ、ミラーの向き変えて後ろの奈央ちゃんばっかり見ちゃうかも。そしたら、きっと事故っちゃうね」
と脅してきた。冗談でも笑えないからやめて欲しい。
後ろに乗っている恭子さんがワクワクとした声できいてきた。
「ねぇ、雅と奈央ちゃんてキスくらいしたの?」
「えっ」と驚くのは私だけだ。
「まだ付き合ってもいないのに、口にするわけないでしょう」
と返事をしてしまう雅さんに「え~っ!」と抗議の声をあげた。その気持ちが届いたかどうかは不明だ。
「あら?その言い方だと口じゃない所にはしたのねぇ」
「あ」とか「う」とか口をパクパクさせているうちにスーパーに着いた。
雅さんに頬や額にキスされた事を思い出してしまい、何を買ったかどんな受け答えをしていたか、きれいサッパリ記憶にない。
帰りにも恭子さんからの攻撃がとんできた。
「奈央ちゃんは、男の子とお付き合いした事あるのかしら?」
ちょうど赤信号で止まってしまった。雅さんを見るとこっちを見ていて目が合ってしまった。何か気まずくて目をそらす。
「付き合った事はあります。これ以上は何も言いません。もう聞きません。答えません。質問は終わりです」
私は窓の外に目を向けた。恭子さんが、
「えー、そうなの?つまんなーい。雅は聞きたくない?ねぇ」
なんて言っていたけど、私も雅さんも無言だった。恭子さんはぶーぶー言っていたけど、私は少しイラッとした。
車から降りると恭子さんがササッとやって来て、
「調子に乗り過ぎちゃったわ。ごめんなさいね」
と頭を下げてきた。単純なもので、私の気持ちはそれで落ち着いた。そのあとの夕飯の支度はわだかまりもなく、楽しくできた。




