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十三話

「しかしこうも順調だと怖いわね、いくら5階層までが大したことがないとはいっても10階層のボスまで何ともないなんてね」


「そりゃあこれから強敵と戦おうって時にその程度のことで躓いてたらどうしようもないだろ」


「いいではないですか、順調ならそれに越したことはないですから♪」


 練習用に使われるダンジョンとは違う実践形式のダンジョンーーーとはいえ踏破済みで研究尽くされているがダンジョンのコアを意図的に破壊せず残している為ダンジョンは再生しモンスターは復活するし宝箱も再形成される、というありがちかつご都合主義な背景の元に成り立っているがそれが今はありがたい。正直に言えば細かいボスレベルとなると記憶に怪しいところが多いというのが現状だ、さてブラッドリッチーだがこいつは序盤にしては強い。そして弱点を的確につくということがいかに大事であるかを教えてくれる師匠のような存在でもある、無論身をもってだが。しかしところがどっこいこんなところにも死亡フラグが転がっているのである、身をもってという部分がそうだ。ヒロインが死ぬことはないが俺などのネームドのクラスメイト等を誘っていると稀に起きるイベントだ。シナリオに大きな変化こそないものの主人公の心に闇が溜まっていきバットエンドへの道が開かれることになるのだ。それを避けるのは勿論だが当然俺自身が死にたくないのが一番の理由だ。それを避けるために策を弄しているわけでそれが無意味になってしまっては元も子もない。というわけで、だ。今回のボスブラッドリッチーについてである。アンデット系の中級モンスターで物理攻撃に大して耐性をもちかつ精神にダメージを与える闇魔法を得意としている。序盤は使える魔法も少ないため物理に頼りがちな為回復魔法以外にもいかに大事かということを教えてくれる存在なのだ。


「真也君のところは割と強気なんだね、僕達なんて緊張しちゃってビクビクだよ」


「今更何言ってるの、断ることも出来たのに快諾したのはあんたでしょ?しかもわたしまで巻き込んで」


「それはごめんって何度も言ったじゃないか、茜だって了承してくれたでしょ?」


「まぁまぁ二人ともここまで来たんだからしっかり頼むぜ。全員が万全の状態で挑まないと勝てるものの勝てないからな」


「真也君は本当に勝てると思っているんだね」


「それは当然だろう、こんなところで負けてるようじゃ強くなんてなれないからな」


「そこまでして強くなりたい理由って?」


「それは……ま、いつかそのうち教えてやるさ」


 強くならなければルナを救えないし世界も……世界は眼の前にいる未来と茜に救ってほしいなんて都合のいい考えを未だ持っているがそれとてどこまで通用するかわかったものではない。少なくとも俺という存在がイレギュラーでもしかしたらとんでもないことが起きるかもしれないとも思う。俺が得た力ももしかしたら発掘されることなく眠り続けていたのかもしれないし。それはさておきとしてようやくボスが居る部屋の前まで近づいてきた、ゲームであればセーブポイントがあるがここにはそんなものは当然ない、引き返しますか?などと選択肢がでてくれるわけでもない。そんな扉の前でやることと言えば作戦会議である


「基本的には魔法で速攻で動きを止めつつ俺と未来でバッサリいく、これでいいな?」


「そんな危険な、本当によろしいのですか真也様。及ばずながら私も……」


「いいのよルナ、この馬鹿と明日野の二人にに任せなさい。あんたと私は後衛よ、サポートは火野さんに任せてよろしくて?」


「え、ええそれは構わないわ。けど本当にいいのね?初期の回復魔法は覚えてるしスクロールも購入してきたけど腕の一本なんていったら治せないのよ?」


「ま、そこは当たらなければ何とやらさ。な、未来?」


「うん、ちょっと不安だけどここまで来たら何とかするよ」


 ぞれぞれが不安をや意見を口にしながらもここで引き返すという選択肢は消滅したということだけは確かとなった。ここで反対意見多数だったら引き換えしていたかもしれない、この短期間で強引に進むと言う程の信頼関係は築けていないししかも即興の合同パーティーだ、何が起きるかわかったものではない。まあ何にせよ結果オーライというやつだろう。


「よし、開くぞ」


 どこか僧侶のような造形を思わせるそれは序盤の敵ながら物理耐性があり魔法もしくは魔法を付与した攻撃でなければまともにダメージを与えることが出来ず魔法の重要性をここで知ることから先生とも呼ばれている、実際に遭遇する身としてはたまったものではないが。


「レイラと俺で魔法をばら撒きつつ未来と突っこむ、ルナと茜は援護を!」


 とはいえ序盤のボスということで弱点などもシンプルで魔法さえ使えば比較的簡単に倒せる、あくまでユーザーとしての視点で現地民となった今そう簡単に倒せるというわけではない。何しろコンテニューは勿論リセットボタンがないのだから、転生した俺がいうのも変な話ではあるが。


「忍法火炎の術!」


「雷よ、降り注げ”ライトニング”!」


 ブラッドリッチーの弱点はシンプルな物で序盤では周回でもない限り回復オンリーの水属性を除けば火・風・雷といった基本的な属性技はストレートに通ってくれる非常に有り難い存在だ。魔法をある程度覚えるなり対応したスクロールを買ってから挑むのがセオリーだが今回はその両方を満たしている為負けないだろうとは思っている、慢心は禁物ではあるのだが。


『グオオオ?!"ナックルプレス"!』


「でかいのが来るぞ、みんな避けろ!」


 ダンジョンの床が崩れ瓦礫となって浮かび上がるほどの衝撃から逃れるべく前衛はもちろん後衛組も距離をとらざるを得ない状況だった。しかしそれでもスクロール投げや魔法をじわじわとぶつけることで確実にHPこそ見えないが確実に相手を追い詰めて行っているのが理解できた。


「よーし、一気に留めだ!未来、合わせられるか?!」


「いきなり?!わ、わかった、合わせるよ!」


 初期装備であるロングソードを構えて動搖しつつも隣に立ち詠唱を始める未来、土壇場で対応してくれるのは元々の性格もあるだろうがやはり頼りになる。


「忍法!疾風の術!からの疾風斬!」


「炎よ、始まりの光よ、剣に宿りて力を貸して……ファイアスラッシュ!」


 自然と左右に飛んだ俺たちはブラッドリッチーを挟んで交差するようにいわば合体技モドキを放った、それに続いてレイラやルナ、茜の魔法が飛んできてようやく消滅したのであった。


『グオ、ォォォォ……オオオオオ!』


 粒子となって完全に消えていき、それが所謂経験値として俺達の体に還元されていくのを感じた、あくまでそれはゲーム的な表現でこの世界での言葉を当てはめるなら呼吸をするように取り入れた、ということになるが。何はともあれ一段落というわけだ、大きめな中ボスを倒してしまったのは後々面倒な事になりそうだが……いい加減覚悟を決めろということかもしれない、この世界の住人としていわば手鏡で先を見通しているような状態だがそれが崩れつつあるということなのだから……

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